運命には抗えない〜第一幕〜

みこと

文字の大きさ
36 / 37

27:最終話

ーー終わったーー


ロジェ様は天に召されたのだろうか…。きっとそうだ。
あの日記を見ていたらロジェ様はどうだったのだろうか。今はなかったのだろうか。運命の二人を受け入れてのだろうか。僕には分からない。ただ、ロジェ様は許す心をまだ持っていたことは分かった。



「ルーファス、肝が冷えたよ。」

ビンセント先生が笑顔で僕の肩に手を乗せる。

「ルーファスらしいね。」

カナン様も笑顔だ。

「良くやったな。」

「ルーファス君。凄かったよ。本当に良かった。」

目隠しを外したラザウェル様と泣き腫らした顔のリト様が近づいて来る。

「本当に剣の稽古は役に立たなかったな。」

呆れ顔のオズベルト様に頭を小突かれた。

「これでロジェも解放されたんだ。」

ロジェの剣を拾いながらサフィーア様が呟いた。

「さすが私のルーファスだ。ロジェを『怨念』を解放したんだ。でも、怖かった…。ルーファスが死んだら…。その時は私の命も終わる。」

レオナルド様の声は震えていた。僕をぎゅっと抱きしめる。
暖かいレオナルド様の身体が僕たちが生きているという事を実感させてくれた。


終わった…。僕たちの戦いは終わったんだ。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「カナン様はこれを見るために鏡を探してたんですね。」

応接室でアルティス様の日記を眺める。転写された反転文字はかなり分かりづらい。

「そうだよ。僕が鏡なんて見るとでも?」

そりゃそうだ。鏡を見る人の格好はこうはならない。

「アルティス様は『魅了』がとけたとき、全てを察してこの日記に残したんですね。そしてロジェ様を恨まなかった。自分のした事を反省したんですね。」

「そうだね。運命の番のオメガとは離れられないけど、ロジェと過ごした時間はアルティスにとってもすごく大切な時間だったんだ。だから変わってしまった、自分が変えてしまったロジェを恨む事なく許した。そしてロジェにも許されたかったんだ。」

「『ロジェ・カステール』はアルティス様のロジェ様への感謝と謝罪の気持ちだったんですね。」

カナン様が日記の転写文字を指でなぞる。
ロジェ様はアルティス様を本当に愛していた。叶わない思いになってしまったけど、ずっと好きで居続けたかったんだ。幸せだった時間を忘れたくなかったんだ。
僕は流れる涙を拭った。




サザーランドはロジェ様が不慮の事故で亡くなったと発表した。その後、クーデターが起きて国王、王太子は失墜した。
『魅了』にかかっていた人たちも正気に戻ったようだ。
僕たちも日常を取り戻した。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


よく晴れた空に教会の鐘の音が鳴り響く。今日はリト様とラザウェル様の結婚式だ。

ロジェ様はアルティス様を許し、神様もロジェ様を許して魂は天に召された。ロジェ様のして来た事は酷い事だと思う。でもアルティス様は許したんだ。レオナルド様だってきっと…。アルティス様と運命の番は天国で幸せに暮らしているはずだ。魂は輪廻せず永遠に二人で一緒にいる。

「ルーファス、次は私たちだよ。」

ネイビーブルーの礼服に身を包んだレオナルド様が囁いた。笑顔で頷く。同じくネイビーブルーのお揃いの礼服はレオナルド様の見立てた物だ。

「ルーファス君!」

リト様が笑顔で近づいて来た。
真っ白なシルクの婚礼服がとても似合っている。所々生地に縫い留めてあるダイヤモンドが陽の光を受けてキラキラ輝いていた。リト様の頸にはしっかりと噛み跡がついているのが見える。
ひと月前にラザウェル様と番ったのだ。その噛み跡を撫でながらうっとりと見つめるラザウェル様もいる。

「おめでとうございます。素敵な式でした。」

「ありがとう。はいコレ。」

「えっ?何ですか?」

リト様に水色のブーケを手渡された。ブルースター、忘れな草、デルフィニウム、バラ。そして白のカラーとかすみ草で出来たリト様らしい爽やかなブーケだ。
僕は手渡されたブーケを見てぽかんとする。

「遠い異国では花嫁のブーケを貰った人が次に結婚すると言われているんだよ。」

隣でカナン様が教えてくれた。そうか、次の花嫁は僕だ。

「はい。ありがとうございます。」

僕はレオナルド様の手を握って元気よく答えた。


~fin.~



最後までお読みいただきありがとうございました。

たくさんのお気に入り、しおりに恐れ慄きながらも大変励まされました。マラソンを完走した気分です(о´∀`о)
『ロジェ編』はこれで完結となりますが、意外と好評だった『二人の変態4』を公開して終了と致します。
尚、『運命には抗えない』の第二弾を執筆中です。(←宣伝)
ルーファスたちがまたもや新しい事件と謎に挑みます。近々公開しますので、興味のある方はご覧ください♪
感想 10

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

あまく、とろけて、開くオメガ

藍沢真啓/庚あき
BL
オメガの市居憂璃は同じオメガの実母に売られた。 北関東圏を支配するアルファの男、玉之浦椿に。 ガリガリに痩せた子は売れないと、男の眼で商品として価値があがるように教育される。 出会ってから三年。その流れゆく時間の中で、男の態度が商品と管理する関係とは違うと感じるようになる憂璃。 優しく、大切に扱ってくれるのは、自分が商品だから。 勘違いしてはいけないと律する憂璃の前に、自分を売った母が現れ── はぴまり~薄幸オメガは溺愛アルファ~等のオメガバースシリーズと同じ世界線。 秘密のあるスパダリ若頭アルファ×不憫アルビノオメガの両片想いラブ。