売れない作家と箱入り娘

clome

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箱入り娘

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 如月 秀一 様へ

 最終選考の結果、貴方の作品の書籍化は惜しくも叶いませんでした。
 これからの活躍を応援しています。

      GGノベルズ大賞選考委員 武田

 俺は震える手で一通の手紙を見ていた。その文面を簡潔に纏めると落選、と意味するだろう。

 またか、という気持ちと同時に怒りを感じる。
 この手紙と同じ内容を見るのはこれで4度目になる。
 1度目は初めての応募で最終選考まで通過した事に歓喜した。
 2度目は悔しさを感じ、3度目はそれなりの自信と確信をもっていただけに挫折を味わった。

 そして、今が4度目というわけだ…

 悔しい。
 中途半端な才能しか無いことが途轍もなく悔しかった。
 手が届きそうで諦めようにも諦められない。

 「辛いな…、こんな結果じゃ諦めきれない。でも、今は書ける気がしないな」

 手紙をゴミ箱へと投げ入れ、仰向けに転がる。

 次こそはプロになる、と決意して書いた小説だった。何度も何度もやり直して、最高の出来にしたつもりだった。
 それだけに、落胆が大きい。

 一度目の時は18歳だった。それから気づけば4年経ち今は22歳…
 そろそろ現実を直視して就職するべきなのだろう。

 「だけど!…創作の時間は減らしたくない。ギリギリの生活でも生きてる。書くことは俺なんだ。少しでも書いていたいんだ。好きなことで生きるっていいじゃん、そうなりたいし後悔したくない」

 いつもこの結論にたどり着く。だけど、このまま歳をとるのも嫌だった。

 「ぁあーーーーーー!……寝よ」

 こういう時は寝て、飯を食って、気持ちを切り替えるのが1番いい。
 そう思って布団にもぐり込んだときだった。

 ピーンポーン

 滅多に使われることが無いインターホンの音が響く。
 タイミングが悪く、気怠げに身をおこす。

 「すみませーん!宅配でーす!」

 キィー

 「あ、宅配でーす。どうも、如月さんでしょうか?」
 「どうも、如月です。あの、荷物は?」
 「こちらっ、にっ、あります!」

 ドスンっ

 「きゃっ」
 「うん?……あの、かなり大きいですね。ワレモノって書いてありますけど…大丈夫ですか?」
 「あーはは、そうですねー。大丈夫ですよ、クッション敷いてるので!では、こちらにサインお願いしますっ」

 急かしてくる配達員に胡乱げな視線を送りつつ、サインをつける。

 「はぁ、ここですか?」
 「はい!ありがとうございました~!」
 「行っちゃったよ。てか………おいおいおい、でか!でかすぎでしょっ。これなに、何なのこれ」

 玄関に置き去られた段ボールはかなりの大きさで、天井に届きそうな程にでかい。
 ほんとにこれは何なのだろう。

 (届け出人が黒で塗りつぶされている?)

 ますます謎に包まれた段ボールだった。軽く叩いてみると乾いた音がする。中身は空洞が多いのかもしれない。
 カッターで上から下まで中央のガムテープに沿って切り込みを入れる。
 これで後は両開きに開くだけだ。

 「よし…あけよう」

 両手で真ん中からそっと開い…て…

 え…?

 中身を説明すると、〝人〟がいた。
 正確に言うと、直立した状態で眠っている。

 「ぇえええええええっ!?やばいやばい!事件じゃん!?」

 1人パニックになっていると、〝人〟がふらっと倒れてきて…

 (あぶない!)

 床に直撃する前になんとか抱きとめることができた。
 すると、〝人〟はぱちりと目を覚まし、俺に顔を向けてこう言ったのだった。

 「おにぃ、ちゃん?」
 「……ぇえええええええええええっ!?」

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