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零
しおりを挟む〝おにぃ、ちゃん?〟 と言われても俺は小さい頃に母さんが死んでからは1人で生きてきた。
だから、俺に家族なんて居ないはずだった。
(まさか、母さんの隠し子? いやいや、そんなはずは…)
「ん、これ。おにぃちゃん受け取って」
そう言って自称妹はごそごそと段ボールの中から何かを取り出して、手を差し出した。
その手には紙が数枚握られている。
「ちょっと待ってくれ…。俺はおにぃちゃんじゃないぞ。これって、住民票? 」
そこに書いてあるのは世帯主である俺の名前と……続柄(妹)如月きさらぎ零れいの文字。
妹? いもう、と?
「はぁああああああ!? 」
「おにぃちゃん? 」
「いや、俺はおにぃちゃんじゃないぞ!? ずっと一人で生きてきたんだっ。ドウナッテンダ!? 」
「おにぃちゃんはおにぃちゃんだよ? おにぃちゃんこれもあげる」
「何だこれ。銀行振り込み証明書?? 」
振込金額0がいち、に、さん、し、ご、ろく……なな…………におくはっせんまんえん……。
二億八千万円!? お受け取り人、如月秀一様ぁあ!?
「はぁあああああああああ!? 」
「あと、おにぃちゃんこれも」
「まだ何かあるの!? これは、手紙? 」
『この度は、お荷物のお受け取りありがとう
ざいます。
勝手ながら、ご迷惑をお掛けするお詫び
として、如月様宛に銀行振り込みを行わ
せて頂きました。
振り込まれたものはどうぞご自由にお使い
下さい。
これからの、お二人の生活に幸あることを
お祈りしております』
「いや、何これ。ますます訳が分からん」
これは現実なのだろうか?
「はは、遂に俺の頭も腐れたか…幻覚、いや幻聴? ここまで自分が病んでるなんてな。妹よ、俺は寝る。好きにしてくれ」
「…」
****
微睡みから意識が覚醒し始め、頭が現状を把握しようとする。
たしか、宅配で妹が送られてきて、2億なんてとんでもない金額が俺に振り込まれたんだっけ。
そして、寝たのか。
なるほど。なかなか面白い夢だった。自称妹はなかなかの可愛さだったように思う。
今まで兄妹が欲しいと思ったことは何度かあった。それにお金については毎日のように嘆いていた。
願望が強すぎて夢に出て来るとはな。しかも割とはっきり思い出せる。
我ながら恥ずかしいな。
うん、早く忘れよう。
何となくスマホを取りだし時間を確認する。
時刻は15:46分。
お風呂や炊事を始めるのに丁度いい時間といえる。
もそもそと体を動かし、ベッドの端から足を下ろしたら立ち上がる。
「おはよう」
誰も居ない部屋に俺の声が消えていく。当たり前だが返事はない。
目を覚ますために洗面台へと向かうことにする。
(あれ、ドア閉め忘れたかな? )
その疑問はドアをくぐる前に解決した。
「は?………………いもうとが、いるぞ? 」
しかも全裸だった。
「あれ?おかしいな、俺には鏡に向かって全裸でポージングする変な子が見える」
顔や胸が気になるのか偶に自分で揉んだり、眺めたりしている。
その光景はかなり異端でありながら、リアリティが有る。
そもそも何故服を脱いだのか。この変態はうちの洗面台の前で何をやっているのだろう。
「おい、変態。お前は何がしたいんだ? 」
「!! おにぃちゃん! 」
「うぇ!? 」
この事態は想定外だった。
女の子は俺に気付いたかと思うと満面の笑みになり、俺に両手で抱きついてきたのだ。
「は、はは。なんだこれ、温かいしリアルだなっ。これがリア充……」
なんて訳の分からないことを最後に呟いて、俺は後ろに倒れたのだった。
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