悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧

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カイルは、強烈な息苦しさとともに目を覚ました。

胸が締めつけられ、喉の奥がひりつく。
まるで、声を出そうとしても出せなかった直後のような感覚だった。

「……っ」

反射的に上体を起こす。
荒く息を吸い込むと、肺に空気が満ちる感覚がはっきりと伝わってきた。

——生きている。

その事実に気づいた瞬間、強烈な違和感が押し寄せる。

「……今の、何だ……?」

頭の中に、はっきりとした映像が残っていた。
石造りの高い台。
無数の視線。
静まり返った空気。

誰かが、罪を読み上げていた。
その声の主が誰なのか、なぜか分かってしまう。

——白髪の少年。
——この世界の“主人公”。

自分は、その中心に立っていた。

恐怖よりも先に、奇妙な納得があった。
反論も、叫びもなく、ただ静かに笑っていた自分。

『この世界は、間違っている』

自分の声が、耳の奥に残っている。

『生まれ持った力を使って、何が悪い』

そこから先は、映像が途切れる。
ただ、「終わった」という感覚だけが残っていた。

カイルは、ゆっくりと自分の身体を見下ろす。
まだ幼さの残る手。
細い腕。
そして、視界に落ちる、染めたピンク色の髪。

「……ああ」

小さく息を吐く。

「思い出した」

これは夢ではない。
どこかで体験した、確定した未来の記憶だ。

カイルは知っている。
これは、自分がかつて遊んでいたゲームの世界。

男子校を舞台にした、BL恋愛ゲーム。
白髪の主人公が、多くの人に愛される物語。
そして——生徒会会計として登場する、悪役令息カイル。

物語の中で彼は、
学園を裏から操る存在として告発され、
二年生の中盤で、すべてを失う。

誰にも味方されず。
誰にも理解されず。
正義の名のもとに、排除される。

「……最悪の役だな」

そう呟いても、声は震えなかった。
恐怖よりも、理解のほうが先に来ていた。

——このまま進めば、同じ結末を迎える。
——あの“終わり”に、必ず辿り着く。

カイルは、ベッドの縁に座り、深く息を吸う。

「なら……やることは一つだ」

鏡に映る自分は、まだ何者でもない。
チャラい仮面も、悪役の立場も、これからだ。

「ゲーム通りには、させない」

静かな声で、そう決めた。

この世界で生き延びるために。
そして、二度とあの場所に立たないために。

カイルは、ゆっくりと立ち上がった。
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