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今夜は任務がない。
だから本当に、部屋にいるつもりだった。むしろ、堂々と部屋にいて、怪しいことなんて一切していないと証明し、さっさと会長には帰ってもらわなければならない。
……というか。
役職持ちの寮部屋は一般生徒より広く作られているとはいえ、ベッドは一つしかない。
どう考えてもおかしい。監視なら魔法でもいいだろうに、なぜ「同室」になる。
どう切り抜けるか考えているうちに、無情にも消灯の時間がやってきた。
ほぼ同時刻、律儀にも扉がノックされる。
「……入るぞ」
有無を言わせない声。
レイン会長だ。
忠犬として接している以上、ここで嫌そうな顔はできない。
俺は無理やり笑顔を作る。
「かいちょ~、心配してくれてありがと~! でも本当に何もしてないよ?」
軽い調子で言ったが、返ってきたのは冷たい視線だけだった。
返事すらない。
(……無理。絶対無理だ、この人と同じ部屋で一夜とか)
心の中で絶望する。
なんで王子様と一緒に寝る流れになってるんだ。なりゆきで「はい」なんて言った今日の自分を本気で殴りたい。
それでも身の潔白を証明しなければならない。
俺は精一杯の善意を装って言った。
「俺、ソファーで寝るからさ、かいちょ~はベッド使っていいよ?」
これなら問題ない。完璧だ。
……と思ったのに。
「早くこっちへ来い」
次の瞬間、手首を掴まれ、問答無用で引っ張られる。
「一緒に寝るぞ」
「え~、かいちょ~積極的~!」
わざとらしく声を上げてみせるが、レインは形のいい眉を不機嫌そうに寄せる。
「寝る時くらい静かにしろ」
完全な命令口調。
俺は反射的に口を閉じた。
役職持ちの貴族用に広く作られているとはいえ、男二人で一つのベッドはさすがに狭い。
俺はできるだけ端に寄ろうとしたが、それを許されなかった。
ぐい、と腕を引かれ、抱き寄せられる。
「っ……」
俺は鍛えていない細身の体だが、会長は騎士になれるほど訓練している。
がっしりしすぎてはいないが、ほどよく筋肉がついた体格で、背も俺より高い。
結果、完全に包み込まれる形になった。
その状態で、俺の首元に、会長の吐息がふっとかかる。
ぞわり、と背筋が粟立った。
「おい、お前……離れろ」
思わず、素の口調が飛び出した。
低い声色で言った瞬間、はっとする。
(やば……)
さっきまで、嬉しそうにしていた忠犬のセリフじゃない。
慌てて取り繕う。
「い、今のは冗談で……ははっ」
乾いた笑いでごまかすが、背中に向けられる視線が、やけに重い。
逃げ場がない。
「……」
沈黙のあと、レインが低く言った。
「お前、俺の前ではその気色悪い喋り方じゃなく、素でしゃべれ」
命令だった。
その瞬間、さっきの吐息が、わざとだったことに気づく。
(……こいつ、試したな)
素を引き出すために、わざと距離を詰めた。
してやられた、と思う。
それでも、素直に頷く気にはなれなかった。
「……覚えてろよ、お前」
小さく悪態をつくと、会長は何も言わず、腕の力だけを緩めなかった。
こうして、会長と同じベッドで眠る夜が始まる。
明日から、どんな面倒な日々が待っているのか。
それを想像しただけで憂鬱で、今夜はとても眠れそうになかった。
だから本当に、部屋にいるつもりだった。むしろ、堂々と部屋にいて、怪しいことなんて一切していないと証明し、さっさと会長には帰ってもらわなければならない。
……というか。
役職持ちの寮部屋は一般生徒より広く作られているとはいえ、ベッドは一つしかない。
どう考えてもおかしい。監視なら魔法でもいいだろうに、なぜ「同室」になる。
どう切り抜けるか考えているうちに、無情にも消灯の時間がやってきた。
ほぼ同時刻、律儀にも扉がノックされる。
「……入るぞ」
有無を言わせない声。
レイン会長だ。
忠犬として接している以上、ここで嫌そうな顔はできない。
俺は無理やり笑顔を作る。
「かいちょ~、心配してくれてありがと~! でも本当に何もしてないよ?」
軽い調子で言ったが、返ってきたのは冷たい視線だけだった。
返事すらない。
(……無理。絶対無理だ、この人と同じ部屋で一夜とか)
心の中で絶望する。
なんで王子様と一緒に寝る流れになってるんだ。なりゆきで「はい」なんて言った今日の自分を本気で殴りたい。
それでも身の潔白を証明しなければならない。
俺は精一杯の善意を装って言った。
「俺、ソファーで寝るからさ、かいちょ~はベッド使っていいよ?」
これなら問題ない。完璧だ。
……と思ったのに。
「早くこっちへ来い」
次の瞬間、手首を掴まれ、問答無用で引っ張られる。
「一緒に寝るぞ」
「え~、かいちょ~積極的~!」
わざとらしく声を上げてみせるが、レインは形のいい眉を不機嫌そうに寄せる。
「寝る時くらい静かにしろ」
完全な命令口調。
俺は反射的に口を閉じた。
役職持ちの貴族用に広く作られているとはいえ、男二人で一つのベッドはさすがに狭い。
俺はできるだけ端に寄ろうとしたが、それを許されなかった。
ぐい、と腕を引かれ、抱き寄せられる。
「っ……」
俺は鍛えていない細身の体だが、会長は騎士になれるほど訓練している。
がっしりしすぎてはいないが、ほどよく筋肉がついた体格で、背も俺より高い。
結果、完全に包み込まれる形になった。
その状態で、俺の首元に、会長の吐息がふっとかかる。
ぞわり、と背筋が粟立った。
「おい、お前……離れろ」
思わず、素の口調が飛び出した。
低い声色で言った瞬間、はっとする。
(やば……)
さっきまで、嬉しそうにしていた忠犬のセリフじゃない。
慌てて取り繕う。
「い、今のは冗談で……ははっ」
乾いた笑いでごまかすが、背中に向けられる視線が、やけに重い。
逃げ場がない。
「……」
沈黙のあと、レインが低く言った。
「お前、俺の前ではその気色悪い喋り方じゃなく、素でしゃべれ」
命令だった。
その瞬間、さっきの吐息が、わざとだったことに気づく。
(……こいつ、試したな)
素を引き出すために、わざと距離を詰めた。
してやられた、と思う。
それでも、素直に頷く気にはなれなかった。
「……覚えてろよ、お前」
小さく悪態をつくと、会長は何も言わず、腕の力だけを緩めなかった。
こうして、会長と同じベッドで眠る夜が始まる。
明日から、どんな面倒な日々が待っているのか。
それを想像しただけで憂鬱で、今夜はとても眠れそうになかった。
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