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お題『僕の人生の輝きは、あの時の列車事故によって失われてしまった。』
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僕の人生の輝きは、あの時の列車事故によって失われてしまった。何度あの瞬間を後悔したか分からないが、それでも考えてしまう。もしあの時、駅のホームに居なかったなら。恐らくはこんな事にはならなかったのではなかろうか。そんな考えに頭を支配されて、それでも僕は前を向いて生きていかねばならないと心を入れ替えて、それでもまたふとした時に思い出して……立ち止まる。そうやってもう何年過ぎたことか。だが、同時に無理も無い事だとは思う。それほどまでに、あの列車事故は大きな傷跡を俺の心に残していったのだ。ああ、忘れられるものならそうしたい。この傷を癒して立ち直りたい……そう思っていたまさにその時、僕は熱さを感じて顔を上げた。そこには……
「えっえっ……うぉおおんなっんっでだっよぉー……」
燃え盛りながら泣きじゃくる高校生が居た。
「成程、勇気を振り絞って告白したのにこっぴどく振られたと」
「グスッ、そうなんです。僕はこんなにも彼女の事を思ってたのに……」
我ながら不思議だと思った。さっきまでの僕は、未だに引きずる過去に苦しめられていたと言うのに、燃えながら涙する高校生なんていう有り得ないものを見たからだろうか。僕の心はここ最近の中では一番落ち着いていて、その高校生を慰めていた。なんでも、彼は実は異世界からやって来た魔法使いであり、好きな人に告白して振られた所らしい。普通なら信じられない話だが、正に燃えて居る所を目にしたので信じない訳にはいかなかった。
「その、ありがとうございます。燃えてる人なんて怪しすぎるのに騒いだりせず、その上慰めてくれて」
「いや、構わないよ。それに、騒がなかったのは驚き過ぎただけだからね」
「それでも、助かりました……みっともないですよね。高校生にもなってこんなに泣いちゃって」
「……泣ける時に泣いておいたほうがいいよ。僕なんか一番泣きたかった時に強がっちゃったせいで、もう泣けなくなっちゃったからね」
「泣けなく、ですか?」
「うん。だから思うんだ。辛い思いも、悲しい思いも、泣ける時にスッキリするまで泣き切って、涙と共に流してしまうのが一番だってね」
まるで自分に言い聞かせるような気持ちで、僕は彼にそう言った。いや、本当にそう自分に言っていたのだろう。例えもう手遅れだとしても、その事に気づけただけでも前に進む事ができた気がするのだ。そんな事を考えていると、僕にとある考えが浮かんだ。
「なあ、君は魔法使いなんだよな。どんな魔法が使えるんだ?」
「はい、僕は天才ですからね。粗方、どんな魔法でも使えますよ」
「なら、記憶を消す魔法も使えるのかな?」
「辞めといた方がいいですよ」
「え?」
「元の世界に帰る目処が立たない日々を過ごす内に、僕も辛い記憶として家族の事を忘れようとしたんです。でも、辞めました」
「どうしてだい?もう取り戻せない、辛くなるだけの記憶なら消してしまった方が」
「それでも、それを忘れてしまうのは違うじゃないですか。家族と過した日々は確かに僕の一部で、その思い出が僕を作る一要素になってるんですよ。それを消してしまうなんて……今度は自分に空いた穴を、失った物は何だったのかを求めて辛い日々を送る事になるだけですよ」
「……そうか」
「ええ」
確かに、そうかもしれない。僕は彼女を失った絶望から逃れる為に、彼女の存在自体を僕の中から消そうとしてしまっていた。それは……駄目だ。
「ありがとう、少し気が楽になったよ」
「いえ、少しでも力になれたのなら良かったです」
「力に……ああ、そうだな。前を向く良いきっかけになったかもな。下ばっか見て歩いてたら、燃え盛る高校生にぶつかって火傷してたかもしれないし」
「忘れていただけると幸いです!……まあ、真面目な話をするならば涙を流す魔法なら使えますよ」
「涙を?」
「ええ、あなたが教えてくれたんじゃないですか。辛い思いも、悲しい思いも、涙で流してしまうのが一番だと」
「そうだな。ならそうして貰おうかな」
「あ、でも人に魔法使うのはこの世界に来てから初めてなのでまずは練習からですかね……あ、丁度いい所に人が来た。おーい、そこの人!いいバイトがあるんだけどしていかない?この新薬を試すだけ!」
僕が泣く彼を宥める為にあげたお菓子のラムネを通りすがりの人に渡す様子を見ながら、僕は考えた。思えばおかしな話だ。泣く人を慰めてたらこっちが力を貰ったのだから。だが、思うんだ……
「アレ?右目から涙が止まらないんですけど!?」
「おかしいなぁ、何か間違えたかな?」
あんな隠す気無さげな異世界人が居るのに今まで気づかなかった僕は余程下ばかり向いていたのだろうなと。そしてその日僕は、久しぶりに心から笑えたんだ。笑ってこう言った。
「ゴメン、やっぱり泣く魔法要らないや」
「えっえっ……うぉおおんなっんっでだっよぉー……」
燃え盛りながら泣きじゃくる高校生が居た。
「成程、勇気を振り絞って告白したのにこっぴどく振られたと」
「グスッ、そうなんです。僕はこんなにも彼女の事を思ってたのに……」
我ながら不思議だと思った。さっきまでの僕は、未だに引きずる過去に苦しめられていたと言うのに、燃えながら涙する高校生なんていう有り得ないものを見たからだろうか。僕の心はここ最近の中では一番落ち着いていて、その高校生を慰めていた。なんでも、彼は実は異世界からやって来た魔法使いであり、好きな人に告白して振られた所らしい。普通なら信じられない話だが、正に燃えて居る所を目にしたので信じない訳にはいかなかった。
「その、ありがとうございます。燃えてる人なんて怪しすぎるのに騒いだりせず、その上慰めてくれて」
「いや、構わないよ。それに、騒がなかったのは驚き過ぎただけだからね」
「それでも、助かりました……みっともないですよね。高校生にもなってこんなに泣いちゃって」
「……泣ける時に泣いておいたほうがいいよ。僕なんか一番泣きたかった時に強がっちゃったせいで、もう泣けなくなっちゃったからね」
「泣けなく、ですか?」
「うん。だから思うんだ。辛い思いも、悲しい思いも、泣ける時にスッキリするまで泣き切って、涙と共に流してしまうのが一番だってね」
まるで自分に言い聞かせるような気持ちで、僕は彼にそう言った。いや、本当にそう自分に言っていたのだろう。例えもう手遅れだとしても、その事に気づけただけでも前に進む事ができた気がするのだ。そんな事を考えていると、僕にとある考えが浮かんだ。
「なあ、君は魔法使いなんだよな。どんな魔法が使えるんだ?」
「はい、僕は天才ですからね。粗方、どんな魔法でも使えますよ」
「なら、記憶を消す魔法も使えるのかな?」
「辞めといた方がいいですよ」
「え?」
「元の世界に帰る目処が立たない日々を過ごす内に、僕も辛い記憶として家族の事を忘れようとしたんです。でも、辞めました」
「どうしてだい?もう取り戻せない、辛くなるだけの記憶なら消してしまった方が」
「それでも、それを忘れてしまうのは違うじゃないですか。家族と過した日々は確かに僕の一部で、その思い出が僕を作る一要素になってるんですよ。それを消してしまうなんて……今度は自分に空いた穴を、失った物は何だったのかを求めて辛い日々を送る事になるだけですよ」
「……そうか」
「ええ」
確かに、そうかもしれない。僕は彼女を失った絶望から逃れる為に、彼女の存在自体を僕の中から消そうとしてしまっていた。それは……駄目だ。
「ありがとう、少し気が楽になったよ」
「いえ、少しでも力になれたのなら良かったです」
「力に……ああ、そうだな。前を向く良いきっかけになったかもな。下ばっか見て歩いてたら、燃え盛る高校生にぶつかって火傷してたかもしれないし」
「忘れていただけると幸いです!……まあ、真面目な話をするならば涙を流す魔法なら使えますよ」
「涙を?」
「ええ、あなたが教えてくれたんじゃないですか。辛い思いも、悲しい思いも、涙で流してしまうのが一番だと」
「そうだな。ならそうして貰おうかな」
「あ、でも人に魔法使うのはこの世界に来てから初めてなのでまずは練習からですかね……あ、丁度いい所に人が来た。おーい、そこの人!いいバイトがあるんだけどしていかない?この新薬を試すだけ!」
僕が泣く彼を宥める為にあげたお菓子のラムネを通りすがりの人に渡す様子を見ながら、僕は考えた。思えばおかしな話だ。泣く人を慰めてたらこっちが力を貰ったのだから。だが、思うんだ……
「アレ?右目から涙が止まらないんですけど!?」
「おかしいなぁ、何か間違えたかな?」
あんな隠す気無さげな異世界人が居るのに今まで気づかなかった僕は余程下ばかり向いていたのだろうなと。そしてその日僕は、久しぶりに心から笑えたんだ。笑ってこう言った。
「ゴメン、やっぱり泣く魔法要らないや」
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