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お題『「未曾有の大津波が街に到達するまでおよそ十分」 と、寝起きにつけたニュースの速報が伝えた。
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「未曾有の大津波が街に到達するまでおよそ十分」
と、寝起きにつけたニュースの速報が伝えた。休日なのに早起きしちゃったな、なんてぼんやり考えてた僕の頭にそれが染み込んできた時に、僕は慌てて家族を起こしに行った。
「起きろ!」
「うるさいよ~兄ちゃん」
「そうだよ~」
この二人は僕の妹だ。双子だからか、おっとりした空気感も含めてよく似てる。しかも、いつも一緒に居るから家族以外じゃ区別も付かないのだ。
「説明してる暇は無い、テレビを見てこい。僕は父さんと母さんを起こしてくる」
眠いよぉ~、と未だにうだうだしてる二人を置いて僕は部屋を飛び出した。本当は二人をすぐさまリビングに連れてゆき、テレビを見せてやりたかったが時間が無い。
「起きろ!」
「うおっ、どうした急に」
「もう朝なのかしら……?」
まだ眠そうな母はさておき、僕が声をかけてすぐにシャキッと目覚めた父に事態を説明する。
「大津波があと少しで来る、街が危ないんだよ!」
「何!?……仕方ない、今こそ父さんの秘密を明そう」
「何言ってんだよ、そんな場合じゃないだろ!」
「いいから、大事な事なんだ……聞いてくれ」
いつに無く真剣な顔をした父の言葉に、僕はやや落ち着きを取り戻して頷いた。それを見た父さんは、その秘密を俺に告げようと……
「兄ちゃん!父さん!母さん!大変だよぉ~」
「津波だよ!あと数分だよ!水の底だよぉ~」
「ちょっと待て、今父さんが大事な話を」
「話とかしてる暇無し!早く逃げようよぉ~」
「あらあら大変ね、逃げる為の準備をしましょうね。お弁当作らなきゃ」
「母さん!弁当は作らなくていいから……って違う!もう間に合わないから逃げなくていいよ!それより父さんの大事な話を聞かな……」
その瞬間、轟音と共に家がひしゃげて流れ込んできた濁流に俺達は押し潰された。なんだかんだで家族が最期の時を同じ場所で迎える事ができたが、父さんの秘密を聞けなかった事だけが心残りだった。せめて、もう少しだけ時間があれば……
気が付くと家のリビングで、父さんと向き合っていた。
「……えっ?」
「ああ、間に合った。成功だよ」
「父さん、これって一体……?」
「さっき話そうとした父さんの秘密だよ。父さん実はな、『家族が心の底から望んだ事を叶える能力』を持ってるんだ」
「すごいよ父さん、僕らは助かったんだ!……あれ?そういや母さん達は?」
「母さん達はなんというか、結構おっとりしてるからな。案外、『もう少しでいいから寝ていたかった』とか思ってたのかもな」
すっかり危機が去り、オマケにずっと隠してた事をうち開けた事ですっかり安心したのか、父さんはなんともほのぼのとした雰囲気でそう言った。しかし、僕には嫌な予感があった。僕が望んだ事は、恐らくは『父さんの秘密を聞けるだけの時間が欲しい』。母さん達が望んだ事は『もう少しでいいから寝ていたかった』とすると……その時、父さんが付けたテレビからニュース速報が聞こえてきた。
「未曾有の大津波が街に到達するまでおよそ十分」
僕と父さんは顔を見合わせて、そして。
「「起きろ!」」
僕らは慌てて家族を起こしに行ったのだった。
と、寝起きにつけたニュースの速報が伝えた。休日なのに早起きしちゃったな、なんてぼんやり考えてた僕の頭にそれが染み込んできた時に、僕は慌てて家族を起こしに行った。
「起きろ!」
「うるさいよ~兄ちゃん」
「そうだよ~」
この二人は僕の妹だ。双子だからか、おっとりした空気感も含めてよく似てる。しかも、いつも一緒に居るから家族以外じゃ区別も付かないのだ。
「説明してる暇は無い、テレビを見てこい。僕は父さんと母さんを起こしてくる」
眠いよぉ~、と未だにうだうだしてる二人を置いて僕は部屋を飛び出した。本当は二人をすぐさまリビングに連れてゆき、テレビを見せてやりたかったが時間が無い。
「起きろ!」
「うおっ、どうした急に」
「もう朝なのかしら……?」
まだ眠そうな母はさておき、僕が声をかけてすぐにシャキッと目覚めた父に事態を説明する。
「大津波があと少しで来る、街が危ないんだよ!」
「何!?……仕方ない、今こそ父さんの秘密を明そう」
「何言ってんだよ、そんな場合じゃないだろ!」
「いいから、大事な事なんだ……聞いてくれ」
いつに無く真剣な顔をした父の言葉に、僕はやや落ち着きを取り戻して頷いた。それを見た父さんは、その秘密を俺に告げようと……
「兄ちゃん!父さん!母さん!大変だよぉ~」
「津波だよ!あと数分だよ!水の底だよぉ~」
「ちょっと待て、今父さんが大事な話を」
「話とかしてる暇無し!早く逃げようよぉ~」
「あらあら大変ね、逃げる為の準備をしましょうね。お弁当作らなきゃ」
「母さん!弁当は作らなくていいから……って違う!もう間に合わないから逃げなくていいよ!それより父さんの大事な話を聞かな……」
その瞬間、轟音と共に家がひしゃげて流れ込んできた濁流に俺達は押し潰された。なんだかんだで家族が最期の時を同じ場所で迎える事ができたが、父さんの秘密を聞けなかった事だけが心残りだった。せめて、もう少しだけ時間があれば……
気が付くと家のリビングで、父さんと向き合っていた。
「……えっ?」
「ああ、間に合った。成功だよ」
「父さん、これって一体……?」
「さっき話そうとした父さんの秘密だよ。父さん実はな、『家族が心の底から望んだ事を叶える能力』を持ってるんだ」
「すごいよ父さん、僕らは助かったんだ!……あれ?そういや母さん達は?」
「母さん達はなんというか、結構おっとりしてるからな。案外、『もう少しでいいから寝ていたかった』とか思ってたのかもな」
すっかり危機が去り、オマケにずっと隠してた事をうち開けた事ですっかり安心したのか、父さんはなんともほのぼのとした雰囲気でそう言った。しかし、僕には嫌な予感があった。僕が望んだ事は、恐らくは『父さんの秘密を聞けるだけの時間が欲しい』。母さん達が望んだ事は『もう少しでいいから寝ていたかった』とすると……その時、父さんが付けたテレビからニュース速報が聞こえてきた。
「未曾有の大津波が街に到達するまでおよそ十分」
僕と父さんは顔を見合わせて、そして。
「「起きろ!」」
僕らは慌てて家族を起こしに行ったのだった。
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