徒然短編集

条件変更:30分以内のみ

お題『衝動的に買った真新しい手袋のタグには、黒マジックで大きく「ちひろ」と書かれていた。』

  衝動的に買った真新しい手袋のタグには、黒マジックで大きく「ちひろ」と書かれていた。子供のイタズラだと思った俺は、すぐに交換してもらうため店に戻った。
「それを書いたのはちひろ私です」
  店員のその言葉に驚き固まっていると、店員は続けて言った。
「それを書いたのはちひろ私です」
  店員のその言葉に驚き固まっていると、店員は続けて言った。
 「それを書いたのはちひろ私です」
  店員のその言葉に驚き固まっていると、隣に居たおじさんが
「ちひろだよ！」
と言うのですがどうなんでしょうか店員さん？
「ちひろはね、世界の中心なんだよ！」
  成程、確かにそう思います。では皆様さようなら。
「またのお越しをお待ちしております」
  店を出た俺は、袋から手袋を取り出す。衝動的に買った真新しい手袋のタグには、黒マジックで大きく「ちひろ」と書かれていた。子供のイタズラだと思った俺は、すぐに交換してもらうため店に……ん？
                                       ～完～

「出来た！力作だ」
  そう言って友人が自ら執筆した短編を見せて来たので読んでみたが、よく分からない。ギャグとして読めば良いのだろうか、にしては笑い所が分からない。ホラーとして読めば良いのだろうか、にしてはわけが分からない。そう思った私は、その友人に解説を求めた。
「この話、結局どういう事なの？」
「ちひろだよ！」
「ん？ちひろに注目して読むの？」
「ちひろはもう注目されてるよ！世界の中心なんだ」
友人のその言葉に驚き固まっていると、友人は続けて言った。
「ちひろだよ！」「ちひろだよ！」「ちひろだよ！」
友人のその言葉に驚き固まっていると、友人のその言葉に驚き、友人のその言葉……
「成程、ちひろだね」
「うん、ちひろだよ！」



【報告書ちひろ】
  最早、手遅れです。世界の中心はちひろで、我々は驚き固まっています。人々はちひろに気づき、ちひろとなって世界の中心となろうとします。その影響を未だ受けてない人も、驚き固まっています。ちひろは全世界に溢れ、その存在を認識できない者はどんどん減少しています。私もちひろだよ！ちひろはね、昔はお家にいたんだ。でもお父さんも、お母さんも、誰も私を見てくれなかった。気づいてくれなかった。でもね、今では世界中のみんながちひろを知ってるよ！ちひろは嬉しいよ！ちひろだよ！