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閑話〈クリスマス編〉
記憶
しおりを挟む鮮明に残る記憶ーー
たった数時間しかいなかったのに、脳裏に焼き付けられた光景。無理矢理に記憶の底に追いやった記憶が甦る。
開けたくないが、勇也は目を開けた。
目を開けた先に広がるのは、ノスタルジックな風景にカラフルな装飾を施されている、遊園地だった。
どこにでもある無害な遊園地に見える。
一見、平和的な遊園地に見えるが、その遊園地は別名【人喰い遊園地】と呼ばれていた。
何故そう呼ばれるのかーー
それはこの遊園地が普通の遊園地じゃないからだ。そもそもゲストが普通じゃない。
『勇也様。四か月と十六日振りだね!!』
『勇也様。お久し振りです』
相変わらず、テンション正反対の二人(?)が声を掛けてきた。
片方はピンクのウサギのきぐるみを着たテンションが高い男と、道化の格好をしているのに風紀員みたいな固い喋り方の男だ。
一瞬、勇也はどう答えていいか分からなかった。だってコイツらは人間じゃない。立ち位置は間違いなく敵だ。
とはいえ、反抗的な態度をとるわけにもいかない。ここは、敵のテリトリー内なんだ。
「…………久し振りだな。レン太、道化」
言葉が思い浮かばなくて、ありきたりな言葉になる。
『名前覚えてくれて嬉しい』
『光栄です』
それでも名前を呼ばれて嬉しいのか、レン太と道化は素直に喜んでいる。そんな二人に、警戒心が解け掛けた。
すると、急に足にゴムを弾いたような痛みが走った。ポケットを探ると、手先に木の板の感触がした。それが何なのか、勇也には直ぐに分かった。真っ黒になった護符だ。
『どうかしましたか?』
このタイミングで、道化が顔を覗き込んできた。
『勇也様。ポケットに何か入ってるんですか?』
きぐるみも顔を寄せ訊いてくる。
口調の割には圧がすごい。自分を見ている。その一頭一投足を。まるで見通し、記憶するかのように。冷や汗がツーと背中をつたう。真冬なのに汗が凄い。その全部が冷や汗だ。
(そうだ。騙されるな、俺。コイツらは人間じゃない。人を喰う化け物だ)
そう思った瞬間だった。耳元でチッと舌打ちするのが聞こえた。レン太だった。勇也は咄嗟にレン太と道化から距離をとった。そのまま、勇也はレン太と道化を睨み付ける。
「どうして、俺を呼べた? 縁は切れてる筈だろ? だから、帰って来れたんじゃないのか!?」
すると、レン太と道化が笑う。
『縁が切れてる? そんなこと、あるわけないでしょう。今もしっかりと結ばれてますよ』
あまり表情が変わらない道化が、満面な笑みを浮かべている。
それを見て、反射的に勇也は後退ろうとした。なんとか押し留まると、勇也はキッと道化を睨み付けて尋ねた。
「……どうしてだ?」と。
『そんなの簡単ですよ、勇也様』
耳元でレン太が代わりに答える。その陽気で甘い声に、心臓が鷲掴みされたかのような錯覚を感じた。
『だって勇也様、俺たちのことをちゃんと記憶しているじゃないですか。この遊園地のことも。俺たちの名前も。
……そして、俺たちの呼んでくれた。ありがとう、勇也様』
嬉しそうに楽しそうに言うレン太。
瞬間、勇也は自分が取り返しのつかない失敗をしたことに気付く。
(クソッ!!)
心の中で悪態を吐いてももう遅い。勇也にとってレン太の言葉は、死刑宣告に等しいものだった。
だってそうだろ。
それは、勇也が記憶している限り、【縁】は切れないことを示唆しているのだ。同時に、新たにレン太と道化によって、記憶の上書きをされてる途中ときてる。
(……まさに、死刑実行の途中だよな)
思わず、苦笑が漏れる。
勇也の細い首は、輪っかを作ったロープに通されている。手は拘束され、足元には台が。自分の命を支えているのはこの台だけだ。その台が、今少し不安定なものに変えられた。
ぐらつきそうになる体。勇也は自分を落ち着かせて耐える。その間にも、どんどん足場は弱くなって行く。
ゆっくりと……ゆっくりと…………
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