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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
次から次へと
しおりを挟む「殿下。マリエール様。お食事中申し訳ありません」
クラスメイトと和気藹々とランチをとっていると、後ろから声を掛けられた。
振り返ると、後ろに立っていたのは笑みを浮かべたディア様だった。
殿下は無表情。私の顔からも笑みが消えた。クラスメイトは会話を止め、ディア様を見ている。その顔には不快感がありありと出ていた。
当然よね。水をさされたようなものだもの。明らかに邪魔。せめて、申し訳なさそうに登場するならまだしも、笑みを浮かべたままって……全然、申し訳なく思ってないでしょ。ほんと、自己中な人よね。
妙な緊張感が伝わったのか、それともディア様と私たちの取り合わせからなのか、まぁ両方だと思うけど。そのせいで、さっきまでガヤガヤとしていた食堂が、シーンと静まり返った。
他生徒の視線が私たちに集中する。視線が痛いわ。
「何の用だ? ポーター嬢」
殿下が切り出してくれた。その目はとても厳しい。
その容赦ない視線と名前を呼ばれなかったことにディア様は涙ぐみそうになってるが、殿下は全く気にしない。
「……なかなかマリエール様にお会い出来ないので、御礼を伝えて欲しいと思いまして」
明日会う筈ですけどね。
「御礼ですか?」
言っている意味が分からない。ディア様に御礼を言われる事などしていないし、そもそも、皆との食事を邪魔される程親しくもない。尋ねる声に警戒心が混じっててもおかしくないよね。
「はい。実はオルガ様に誕生日プレゼントを頂きまして、その御礼を伝えて頂きたいのです」
予期せぬ人物の名前が上がって、さすがに驚いたわ。でも、馬鹿みたいに口を開けたままの醜態を晒しはしないわよ。
「……義兄からですか。ならば、私に直接言うよりも、手紙を出された方が義兄も喜ぶと思いますよ」
更に警戒心マシマシの声で答える。
「会われないのですか?」
更に突っ込んできた。沈んだ声で。その様子じゃあ知ってそうね。あまりにもわざとらしいわ。何が言いたいのよ。ここは平常心。平常心。
「今義兄は高等部に在席してますもの。全寮制ですし、私も王妃教育があって、なかなか会えませんの。ごめんなさいね」
なかなかどころか、一度も会ってはいない。どうやら嫌われてるみたい。というか、完全に嫌われてるわね。顔合わせの時も直前でキャンセルされたし。
嫌われてるのは悲しいけど、こちらから会いに行くのもどうかと思って、何も出来ないまま日にちだけが過ぎてる状態かな。お父様とお母様も話をしようとしてるんだけど、逃げてるって聞いたわ。
その義兄がディア様のお兄さんと同級生で親友だということも知ってる。
さすがに、グリード公爵家が誕生日会に参加していないので欠席はしたようだけど、誕生日プレゼントを渡してたとはね……まぁ、親友の妹だもの、おかしくはないわ。でもね、それをわざわざ言いに来るって。暇なの?
「もしかして、それをわざわざ言いに来たのか? テスト前なのに暇なんだな」
「話も終わったのだから、そろそろ失礼してくれないかしら。昼休みは限られていますのよ」
クラスメイトが援護射撃をしてくれた。言っていることは間違ってないし、かなり我慢してくれた方だと思う。
「……マリエール様。酷いですわ」
はぁ!? 何で私が酷いのよ。酷いのは貴女でしょ。
「……私は誠意をもって対応したと思いますが」
そう答えると、ディア様はまた「酷い」と言い目を潤ませて走り去った。
貴族令嬢、ましてや見本となるべき公爵家の令嬢が校内を走るのって、アウトよね。そんな感想を抱きながら、内心かなり面倒くさいことになったなと考える。
だって、あのディア様だよ。自分本位の意見をまくしたてることになるんでしょうね。それも直接義兄に。
ユズの件が片付いて、ポーター公爵の件も今は傍観状態。休む暇もなく、今度は義兄か……ほんと、次から次へと厄介なことばかり起きるわね。でも、義兄の件は避けて通るべきことではないよね。
義兄のことを考えると気分が沈む。知らず知らずのうちに溜め息が出ていたみたい。そんな私を、殿下は黙って見ていた。
☆☆☆
第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。
タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。
気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧
応援ありがとうございます!
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