8 / 73
早速、絡まれました
しおりを挟むやっと入学式が終わった。あとは、教室に移動してホームルームを受けたら終わりよね。正直、疲れたな。ちょっと、想像を越えてたよ。
ゴルディー公爵家の家紋が施されている馬車を降りた瞬間、一斉にその場にいる全員が私を見たからね。
門を潜っても、入学式が執り行われる講堂に行く間もずっと見られていた。私を見て囁き合ってる人もいる。
カイナル様の影響力って……嘆いていても仕方ないわね。私は姿勢を正し、顔を上げ胸を張って歩く。これだけで、人の印象が変わるって執事さんが教えてくれた。言いたいやつには言わせておけばいい。
式の間も、ちらりちらりと、私とカイナル様を盗み見ている人が多かった。針のむしろの上にいるようで居心地はずっと最悪だったけど。まぁ中には睨んでくる強者もいたよ。カイナル様が入学式の保護者席に座っているから、よけいに欲発されたのかな。大概が人族ね。亜人族は遠巻きで様子を伺ってる感じがした。そもそも、カイナル様に喧嘩を売れる者は、そうそういないよね。
そんな中でも、私に明らかな敵意を向けてくる命知らずの亜人族がいたの。ゼシール王国の第一王女のスノア様だった。とことん、私が気に食わないらしい。入学式終了直後、早速絡まれたわ。事前に絡まれるかもと注意を受けていたけど、早すぎない!?
「ちょっと、待ちなさい!! そこの平民!!」
確かに今は平民だけど、私にもちゃんとした名前があるんだけど。ムカついたけど、無視するわけもいかずに振り返る。
絡まれることは知っていたけど……場所選んでよ。新入生が大勢いるこの場でって、マジ勘弁してほしいわ。
「私のことですか?」
こういう輩には、感情を表に出さない方がいい。両方とも感情的になったら収集がつかなくなる。
「そうよ!! 貴女のことですわ!!」
目の前で腕組をして憤慨するスノア王女殿下に、私は一度頭を下げてから答える。
「平民である私に、声をかけてくださるなんて、スノア王女殿下は慈悲深い方ですね」
感情的にはならないとはいっても、苛ついてるので攻撃はするわよ。
「わ、私のことを知っていますの!?」
吃驚するスノア王女殿下に私は答えてあげた。
「我が番カイナル様から詳しく聞いております。スノア王女殿下とアジル殿下のことは」
特に、スノア王女殿下の名前をわざと少し大きめに言った。とてもいい笑顔で。
絡まれた時の対処法を教えてもらってはいたけど、こうも効果があるとは思わなかったわ。一国の王女殿下が冷や汗タラタラ流して言葉に詰まってるの。なんか可哀想になってきた。
「そ、そう、カイナル様から聞いているの、私のことを……」
「はい、詳しく。クラスも一緒なので、よろしくお願いします」
私は再度スノア王女殿下に頭を下げた。
カイナル様の番だからといっても、私の身分は平民。頭を下げるのは当然で、学園内とはいえ対等に会話するのさえ本当は不敬罪に当たる。相手が王族ならなおさら。それが許されているのは、カイナル様の番だからだ。
だからこそ、私の行動すべてがカイナル様の信用へと直接繋がる。カイナル様は、『俺のことなんて気にするな。学生を楽しめばいい』って言ってくれたけど、気にしないなんてできない。
数分後、固まるスノア王女殿下を慌てて回収しにきたのはアジル殿下。
「悪いね、ユリシア嬢。スノアの暴走を許してもらえないかな」
双子でも、お兄さんって大変だね。
「スノア王女殿下は暴走などしておりません。楽しく会話をしていただけです」
そう答えると、アジル殿下はホッと胸を撫で下ろす。王族二人にそこまで怖がらせるカイナル様って……ちょっと引く。
そもそも、スノア王女殿下は憧れのカイナル様の番が、私のようなちんちくりんだったことに腹を立てていたらしい。そんな私に入学試験で負けたのが、よぼど悔しかったのね。ちなみに、入学試験のトップはゼシール王国の第二王子のアジル様だった。私的には、陰口を言われるよりは直接言われるのが断然マシかな。
「ならよかった。これから教室に行くのなら、一緒に行かないか?」
えっ!? 王族の方々と!? 平民の私が!? 断れないよね~悪目立ちしたくなかったけど、仕方ないか……
「わかりました、御一緒させていただきます」
笑ってそう答えるしかなかった。
周囲のざわめきが一層大きくなったのは言うまでもないわね。
117
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる