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井藤 美樹

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聖国の大神官長様がやって来た

02 最高のタイミング



「この時期にいらっしゃるとは……」

 聖国の大神官長様の突然の来訪に、お父様が頭を抱えボヤいている。反対に、ダラキューロ様はとても機嫌がいい。

 正反対の反応をする二人を、私は苦笑しながら見ていた。

 つまり、心情的と政治的な差よね……と思いながら。私的には断然お父様寄りね。

 エンドキサン王国と友好関係を結ばなかったすぐ後に、聖国の大神官長様の来訪ーー。

 それも、今までのようなお忍びパターンではなく、仰々しいまでの行列で。

 ど田舎を走る綺羅びやかな馬車。

 浮くわ。めっちゃ浮くわ。他国にアピールしまくりだわ。

 つまり、聖国がベルケイド王国を特別と捉え、後ろ盾であることを、周囲の国々に明確に表したってことになるのよ。

 それも最高のタイミングでね。

 まぁ、あの腹黒大神官長様だから、それを狙ってたってじゅうぶん考えられるけど。その影響力は凄まじいものよ。

 結果、エンドキサン王国はまたしても辛酸を舐めることになったみたいね。これからが大変だと思うけど、頑張ってほしい。

「この時期だから、来たのでは?」

 それしか考えられない。

「あの聖国の大神官長様が、ミネリア王女殿下と親交があってよかった」

 ダラキューロ様はにっこりと微笑みながら言う。

 いや、私の反応を見て、仲が良いって思わないよね。なのに、その台詞って……言わさない気か。

「本当によかったです」

 私が反論する前に、ダラキューロ様、重ねて言ってきたわ。プレッシャー掛けてきたわね。仲良くしろ、機嫌を損ねるなって。わかってるわよ。これでも、ベルケイド王国の王女なんだから。

「……それで、大神官長様の来訪の目的は、聖獣様とミネリアに会うためと、マントの町で祈るためだと仰るんだな」

 お父様が確認してきた。そもそも、その確認のために呼ばれたんだからね。

「はい、そうですわ、陛下。さすがに、元王都までは行けませんから」

 奴らがまだ生きていることを、大神官長様は知らない。別に知られても構わないけど、できれば知られたくはないわ。余計なことを勘繰られそうだから。

「そうだな。だとしても、祈っていただけるのは喜ばしいことだ。マントの町には、ミネリアも同行するんだな?」

 お父様な重ねて確認してくる。

「そのつもりです」

 本音は嫌だけど。

 でも、祈ってもらうのはありがたいって思ってる。腹黒でも、彼女の祈りは本物だからね。腹ばかりが出たエセ神官なんかじゃないから。

 少しでも、かつて同国の民だった者たちの苦しみが和らげばいい。クルトも喜ぶわね。

「ラリーも連れて行け」

 お父様の代わりね。

「お兄様が一緒なら、とても心強いですわ。陛下、お願いがあるのですが、聖騎士見習いのクルトの同行をお許しいただけないでしょうか」

 聖騎士見習いのクルト。マントの町の唯一の生き残り。難関の試験に受かって、今は聖騎士見習いとして汗を流し鍛錬しているわ。

「クルト……? ああ、思い出した。マントの町の。わかった許可しよう。騎士団長には俺から伝えておく」

「ありがとうございます、陛下」

 私は頭を下げ退出した。



 
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