空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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女子に狡猾という言葉を使ってはいけません

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 何気ない会話の中で、不意に私は現実を思い知る。

 今回もそう。一週間前はそのことで、一人勝手に落ち込んで、出さなくていいボロを出した。精神的に弱かったせいもあるけど、腹が座っていなかったのが一番の原因だとラキさんに指摘された。その通りだって思った。

 結果、一週間、停滞することに。完全にロスった!! 深く反省。

 正直、結構な痛手だったよ。勉強料としては高すぎた。四十九日の中の一週間だからね……お母さんのこととは別にしても。

 なので、今は深く考えずに、気持ちを切り替えることにだけ専念する。

 幸い、ここは映画館内だし、人混みも半端ない。多少なら十分誤魔化ごまかせるよね。

 それで、映画館のお供の話になるんだけど、大半がポップコーン派だよね。中には、ホットドッグやフライドポテト派もいるみたいだけど、これは少数だと思う。

 因みに、蓮君と私はボップコーン派。今日は、キャラメルとソルトを一人前ずつ頼んでから一つのボックスに入れて貰った。ミックスが流行ってるんだって。注文はサクサクと蓮君が済ませてくれた。あとはセットドリンクを選んで準備万端。トレイは蓮君が持ってくれた。

 あまりにもそつがなさすぎて、なんかモヤモヤする。まぁでも、私が代わると、間違いなく大惨事になるから代われない。複雑だね……

 そんなことを思いながら、蓮君の後ろをちょこちょこ付いて行く。チケットに書かれている番号の席までやって来たのだけど……ここで、本日二度目の硬直です。

「……蓮君、これアレだよね」

 行儀悪いけど、シートを指差す。

 恥ずかしくて口には出せないけど、カップルシートだよね。雑誌で見たことあるわ。実物は初めてだけど。もちろん、座る機会なんてなかったよ。

 固まっている私を無視して、蓮君は備え付けの小さなテーブルにポップコーンとドリンクを置く。

 座席に備え付けのミニテーブルあるんだ~

 少し現実逃避しちゃったよ。その間に、蓮君はさっさと座ってしまった。

「しょうがねーだろ。ここしか、空いてなかったんだから」

 少し照れながら蓮君は、私を下から見上げる。いつもとは真逆の立ち位置に、顔の熱が一気に熱くなる。心拍数もすごいことになってるよ。心臓弱かったら、心臓麻痺起こすレベルだよ!!

「いやいや、さすがに、私もだまされないから!! それって無理があると思うよ。この席って、普通の席より倍率高いよね」

 常識がない私でも、それくらいはわかるよ。ほぼ雑誌からの受け売りだけどね。

「ゆったり、座りたかっただけだ。で、座らないのか?」

 蓮君の照れ顔頂きました!! 

 否定はしないんだ。尊い……尊すぎるよ。

 感動に浸っている暇はないわ。まだ明かりが落ちていないからいけるよね。素早い速さでスマホを取り出し連射した。

「なっ!?」

 蓮君も素早かったよ。腕を取られて引っ張られた。スマホを奪うつもりだったようだけど、バランスを崩して蓮君の胸に倒れ込む形になった。

「……強引だね、蓮君。そんなに、私に座って欲しかったんだ~」

 スマホを死守しながら言うと、蓮君は珍しく慌て出す。

「わ、悪いか!?」

 今度は開き直り、入りました~!!

 どれも尊すぎる!!

 感動に震えながらも連射。スマホを奪われても、パスワードを知らないから、蓮君は消せない。消してほしくても、強く強要できないから必然的にデーターは守られるわけ。

「……お前、たまに、とんでもなく狡猾こうかつになるな」

 溜め息混じりに言われたよ。

「蓮君、女子に狡猾って言葉を使ってはいけません。学校で習いませんでしたか?」

「そんなの、習ってねーよ」

「じゃあ、一つ学習しましたね」

「そうだな」

 蓮君はそう言うと、私の肩を掴み引き寄せた。近くなる、私と蓮君の顔。

「なっ!?」

「ほら、動くな。撮るぞ」

 同時に鳴るシャッター音。

 顔を真っ赤にした私と、意地悪そうな顔をした蓮君が仲良く写っていた。

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