空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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私の大切な宝物

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 あの連写事件のあと、亮君にめっちゃ呆れられた。怒鳴られた方がマシなくらい、すっごい冷たい目で見られたよ。胸がえぐられたわ。言葉数が少なくなってるのも、さらに拍車を掛けている。

 つまり、亮君はとってもとっても怒っていたってこと。まぁ……あのカオスな状態の中の放置だからね……ほんと、ごめん。

「ごめん、亮君。放置しちゃって」

 何度も謝ったんだけど、スルーされてる。

 買い物から帰って来てご飯を食べ終わっても、この状態が続いてるの。声を掛ける度にツ~ンとされてて、完全に拒否られてるよ。その場にへたりこんでしまいそうなほど、ショックだよ。

「………………で、いい写真撮れたの? えっ!? 何!?」

 トボトボと歩き、ダイニングの隅で小さく体育座りする私に、見兼ねたのか、亮君がぶっきらぼうな口調で尋ねてくれた。

 号泣しそうになったよ。ブワッと涙が溢れ出てきた。それを見て、焦ったのは亮君の方だった。

「話し掛けてくれた~~よかったよ~~」

 感極まって、私は亮君に抱き付く。

「これにこりたら、もう、放置するなよ。マジであれは怖かった」

 思い出したのか、若干亮君の顔が青い。

「だよね。本当にごめんね」

「僕を生贄にしたんだから、ちゃんと撮れてるよね?」

 亮君ににらまれる。今度は私が焦る番。

「と、撮れてるよ。ベスポジからの撮影だったからね。見る?」

 感動は共有しないといけないよね。そう思って尋ねたら、また亮君に冷めた目で見られたよ。

「興味ないからいい」

 つれない返事だね。

「亮君もか~立花ちゃんも、全然興味ないんだよね。残念、よく撮れたのに」

 私のコレクション、特別に二人に見せてあげようと思ったんだけど、「いらない」って拒否られた。

「いや、残念がる意味がわからない。男の僕が男の写真見て、何が楽しいんだよ。アイドルとか俳優ならまだしも、ただの一般市民だよ」

 確かにそうだけど。

「推しなのは、三奈さんだけだよ。私は別に推しでもなければ、好きな人でもないのに、興味持てるわけないじゃない。綺麗に撮れてるな、くらいの感想しか言えないよ」

 亮君と立花ちゃんが呆れながら言う。二人とも若干、腰が引いてるよ。そんなに、私からの圧が強かったのかな。

「そんなものかな~」

 渋々納得する。ゴリ押ししてもいけないしね。

 そんなことを考えていたら、立花ちゃんがテレビの横に置いてある私のスマホを指差す。

「……スマホ、ずっと点滅してるね」

 ミュートにしているからうるさくはないけど、代わりにチカチカと点滅している。これが意外と気になるんだよね。

「してるね……でも、出たら、絶対消せって言われるから出ない」

 ラインにも〈消せ〉〈会った時確認する〉〈消したか〉ってきてるから。
 
「……残されたくない写真、残そうとするなよ」

 珍しく、亮君は心底、蓮君に同情しているみたいだった。これが男側の意見なんだね。反対に、女側は少し違っているみたい。

「私は少しわかるかな。大好きな人の初めての顔を残したい気持ち」

 立花ちゃんの言葉に、私の目はキラキラと光る。

「でしょう!!」

 嬉しくて、思わず、立花ちゃんの両手を掴んだよ。

「見る?」

 もう一回尋ねてみた。

「「見ない」」

 速攻、亮君と立花ちゃんに拒否られた。やっぱり、一緒には見てはくれない。ちょっと寂しいけど、口元が緩む。

 だって、私たちが一緒にいる時、結構写真撮ってるからね。私のコレクションより数が多いのは解せないけど。

 だけど、それも私の大切な宝物なの。

 そして、私が生きた証みたいなものかな。死んでるけどね。


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