103 / 118
光学都市と魔石の書
脱走者
しおりを挟む
何らかの理由によって、煉獄から地上へ出向いてはならぬ筈の者達が地上へと赴き、居着いてしまうケースは過去にもあった。
大抵の場合、見ても見ぬ振りをして放っておけばそのうち戻って来るのだが、今回はどうも勝手が違うらしい。
それを探し出し、そして連れ戻す事が我々に課せられた使命だった。
「いいか?くれぐれも地上のニンゲンに干渉するなよ?厄介ごとは御免だからな」
そう言ったのは今回現場で指揮を取る事になった引率の代行者だった。俺が彼と集合ポイントで合流した時の印象は、お世辞にも良いものとは言えなかったが、彼には何処か妙な威厳のようなものが備わっていた。
「いや、そうは言ってもどうやって探すんスか?」
そう言ってそんな彼に即座に反論したのは、集合ポイントにもう一人待っていた彼の相方と思しき人物だった。
彼の素性は全くわからない。そして興味も湧かない。だが、どうにも引っかかる物言いをするので、ここに来るまでの道中では、最後は結局全員が彼の質問攻めの相手をする羽目になっていた。
「そりゃ、地道にコツコツとだな…」
「この探索にアンタの御立派な権能が役にたつなら話は早いんですが、そうもいかんでしょう?地上でアンタの権能はごく一部を除いて封印指定されてる。足を使うにしても、結局聞き込みは欠かせないんじゃ無いですかね?」
彼の言う事は筋が通っているように思えた。しかし、我々はその存在の性質上ニンゲンに、いや正確にはこの世界に物理的な干渉を行う事を厳に戒められているのである。今回、引率者はそれを律儀に守るタイプの男だった。
「とにかくアイツが居そうな場所を地道にかつ迅速に探すんだ。わかったな?」
「いや、わからないっス。どう考えても手詰まりじゃないっスか」
「だがな、ここで我々がこの世界を狂わせれば、それこそ本末転倒だぞ。禁を破ってはならん」
引率者はどこまでも頑なだったが、飄々とした相方の男をこのまま放っておくと取り返しのつかない事になりそうだった。
俺以外にここまで付いて来た待機組の他の面々も顔を見合わせている。そして一斉に俺を見た。何故こちらを見る?
「ここは一つ、封印指定された権能の内でも一番無害そうなものを一つ二つ解禁って事でどうっスか?大丈夫、煉獄の御偉方にバレなきゃどうって事無いっスよ」
「バレるかどうかではない。これは信義の問題だ。そもそもお前は禁を冒して他の代行者達の目を欺けると本当に思っているのか?」
人は見かけによらないとはこの事か。俺は何処か冴えない風体の彼を少し見直した。やはり引率者に選ばれるだけの人物なのだろうか。
だがしかし…事の軽重を考えた場合、どちらを優先させるべきか?
俺達が世界に干渉した場合、それは不可逆的なリスクをこの世界に負わせる事となる。
しかし、だからといって同胞を見捨てる事も出来ない。ましてや行方不明となった彼女の権能はこの世界をも揺るがしかねない。
いかに避難されようとも決して探索を停滞させる訳にも、打ち切るわけにもいかなかった。
…と、突然、二人の会話が途切れいつのまにか静寂が場を支配していた。
周囲を見やると全員が俺を見つめ何かを指差している。
そして、俺の背後から何か気配がした。
大抵の場合、見ても見ぬ振りをして放っておけばそのうち戻って来るのだが、今回はどうも勝手が違うらしい。
それを探し出し、そして連れ戻す事が我々に課せられた使命だった。
「いいか?くれぐれも地上のニンゲンに干渉するなよ?厄介ごとは御免だからな」
そう言ったのは今回現場で指揮を取る事になった引率の代行者だった。俺が彼と集合ポイントで合流した時の印象は、お世辞にも良いものとは言えなかったが、彼には何処か妙な威厳のようなものが備わっていた。
「いや、そうは言ってもどうやって探すんスか?」
そう言ってそんな彼に即座に反論したのは、集合ポイントにもう一人待っていた彼の相方と思しき人物だった。
彼の素性は全くわからない。そして興味も湧かない。だが、どうにも引っかかる物言いをするので、ここに来るまでの道中では、最後は結局全員が彼の質問攻めの相手をする羽目になっていた。
「そりゃ、地道にコツコツとだな…」
「この探索にアンタの御立派な権能が役にたつなら話は早いんですが、そうもいかんでしょう?地上でアンタの権能はごく一部を除いて封印指定されてる。足を使うにしても、結局聞き込みは欠かせないんじゃ無いですかね?」
彼の言う事は筋が通っているように思えた。しかし、我々はその存在の性質上ニンゲンに、いや正確にはこの世界に物理的な干渉を行う事を厳に戒められているのである。今回、引率者はそれを律儀に守るタイプの男だった。
「とにかくアイツが居そうな場所を地道にかつ迅速に探すんだ。わかったな?」
「いや、わからないっス。どう考えても手詰まりじゃないっスか」
「だがな、ここで我々がこの世界を狂わせれば、それこそ本末転倒だぞ。禁を破ってはならん」
引率者はどこまでも頑なだったが、飄々とした相方の男をこのまま放っておくと取り返しのつかない事になりそうだった。
俺以外にここまで付いて来た待機組の他の面々も顔を見合わせている。そして一斉に俺を見た。何故こちらを見る?
「ここは一つ、封印指定された権能の内でも一番無害そうなものを一つ二つ解禁って事でどうっスか?大丈夫、煉獄の御偉方にバレなきゃどうって事無いっスよ」
「バレるかどうかではない。これは信義の問題だ。そもそもお前は禁を冒して他の代行者達の目を欺けると本当に思っているのか?」
人は見かけによらないとはこの事か。俺は何処か冴えない風体の彼を少し見直した。やはり引率者に選ばれるだけの人物なのだろうか。
だがしかし…事の軽重を考えた場合、どちらを優先させるべきか?
俺達が世界に干渉した場合、それは不可逆的なリスクをこの世界に負わせる事となる。
しかし、だからといって同胞を見捨てる事も出来ない。ましてや行方不明となった彼女の権能はこの世界をも揺るがしかねない。
いかに避難されようとも決して探索を停滞させる訳にも、打ち切るわけにもいかなかった。
…と、突然、二人の会話が途切れいつのまにか静寂が場を支配していた。
周囲を見やると全員が俺を見つめ何かを指差している。
そして、俺の背後から何か気配がした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる