反転の書〜異界の扉が開いた現実世界を生きるという事

Fragment Weaver

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光学都市と魔石の書

発掘1

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  無人のフードコートで食事をしていると背後の席から会話が聞こえて来た。

「なあ、収穫祭って知ってるか? 今度の配属先であるみたいなんだが」
「おいおい何だ?藪から棒に…まさかお前の転属先は畑仕事を部下にさせる部署なのか?」
「俺もいきなり上から言われた時は聞き違いかなと思ってさ。何でも内々に行われるらしい」
「何だそれ」

 収穫祭とは、古くは農耕民族が農作物の収穫を感謝する祭祀であったという。
だが、農作業を始めとする一次産業に従事する市民はもう滅多にいない。
ほとんどの地域で作物は全自動化された工場の屋内プラントでハウス栽培され、牧畜は細胞培養槽に、漁業は養殖用に最適化するよう遺伝子操作された養殖魚に取って代わられた。
今や何処へ行っても同じ食材が手に入る。
都市の食材は遺伝子レベルで厳正にマニュアル管理され、商品としての品質を保持出来たものだけが流通する。そしてそれを調理技術で、消費者のイメージに近い味覚へと整えたものだけがネットや店舗に並べられ、食卓に届けられるのである。都市外では食事に対して感謝を捧げる行為を未だ風習として行っている者も僅かだが未だに居るのは知っている。
だが、収穫祭?

 今、この時代にそのような慣習を本当の意味で遺しているのは回帰主義者達のコミュニティぐらいのものだ。
感謝を捧げるべき対象があるとすれば、それは一体何に対してなのか?
収穫を祝う古き伝統を職場で共有する慣習が続いているだけなのだろうか?
だが天下に名だたる光学都市にそのような祭祀の入り込む余地など無いはずだ。
ごく一般的な男性の口からそのような単語が出て来る事に何か言い知れぬ不気味さと違和感があった。
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