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煉獄への誘い
生まれ方の問題
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彼女から聞かされたこの世界の枠組みは古い神魔小説を彷彿とさせるような荒唐無稽な話だったが、そのどれとも違っていた。
「…で、これが一番肝心なのだが、お前が元の世界に戻るに当たって超えなければならない試練はお前にしかわからない」「は?ここの管理人なんだろ?それぐらいケチケチするなよ」「やかましい。念の為に行っておくが何も私が無能だからとかそういう話ではないぞ? 管轄が違うんだ。私の権能が及ぶ範囲で私が出来ることはお前が旅先で困らないよう下準備の手伝いをすることだけだ」「それを世間一般では無能というのでは?」「無能では無い。出来るか出来ないかでは無い。能力がある事と実際に能力を行使するかどうかはまた別の話だ」
管轄が違うならそもそも、俺を送り出す意味はなんなんだ?と思ったが、これ以上怒らせたくない。能面のような顔でまた酷い目に合わされるに決まっている。
「いいか?口ごたえせずによく聞け。お前が送られる道は人用の道では無い。本来は人間霊のような格の低い低級霊が通行する事は想定されていない」
「なんだそれ?人間霊が低級?おかしいだろ。ここでは人間様が畜生より劣るってか?」
「ああ、そうだ」 顔色一つ変えず、即答だった。
「ここでは序列が人間界のそれとは違うんだ。ここは鬼の世界。それもただの鬼ではない。鬼神の世界だ。当然鬼神が最上級に位置付けられる。お前は人の身には過ぎた道を通るんだ。光栄に思え」
「いや、さすがにそれはちょっと…」それはおかしい。瞬間的にそう思ったのは、自身が未だ人の形をしているだけが理由なのだろうか?
「お前は来る道順を間違えたんだ。とはいえここに足を踏み入れた時点で既に来た道を引き返す事は出来ないがな」端正だが能面のような顔、常にへの字の口をした彼女がごそごそと懐から紙切れのようなものを取り出すとそれを押し付けるようにぶっきらぼうに渡してくる。
「それを使え。いいか、くれぐれも無くすんじゃないぞ。それを失くせばお前にどんな加護があっても意味が無いからな」
渡されたものには解読不能な象形文字のような何かが書きつけられていた。
「いや、俺これ読めないんだけど」「読むのではない。呑み込むんだ」
なんと原始的な…呪いか何かか?
「いいか?ここでは絶対に使うなよ。向こうについたら使え。それで状況の把握は一応出来るはずだ。お前が向こうでどんなモノになっても、自分を見失わずに済む」
「随分と大げさだな。一体向こうに行くと何が起こるんだよ」
「お前は人ではなくなる」
「え?」
「言っただろう?アレは鬼や獣の通い路だと。不純物まみれな人の亡者如きが通れば鬼以外の余分な不純物は濾し取られ濾過されるんだ。だからまずお前は人の形を保てなくなる。鬼や獣の金型をくぐり抜けるようなものさ」
「...それで具体的にはどうなるんだ?」
「だからわからんと言っているだろ?目的地は設定したが、どう転ぶかは中継地点やお前の運次第でだいぶ変わるからな」
それから延々と渡されたよくわからない呪いの符を握りしめたままで延々と説明を受けた。
どうやら「門」を潜ると、その過程で程度に差こそあれ外見も中身も人間から遠ざかり、大小様々な呪いと加護を付与され、鬼や獣へと近づくらしい。
彼女が似たような境遇の生還者から伝え聞いた範囲で知っていた具体的変化の例としては、生前の記憶の欠落、短期記憶容量の縮小や長期記憶容量の拡充、各種ストレス耐性の強化、感受性・共感力の減退、様々な異能の獲得、角や爪、牙や翼が生える等々、しかしそれも発現の仕方やその程度はまちまちだという。
「なんか聞く限りだと総合的にデメリットの方が上回る感じだな。」
「元来、私達はこの煉獄の環境下で長期間過ごせるように最適化されてるんだ。人間界へ行くのは使い走りか相当な変わり者さ。だから他所の世界に適合するには相当苦労するのは当たり前なのさ」
「..........」
数時間後、俺はバカでかいダストシュートのような「門」の前に立っていた。
いざ送り出される段になって
一時期転生ものが急速に流行しだしたのも、自分が今立ち会っている現象が何か関係しているのかもしれないな等とどうでもいい事が頭を過ぎった。
「…で、これが一番肝心なのだが、お前が元の世界に戻るに当たって超えなければならない試練はお前にしかわからない」「は?ここの管理人なんだろ?それぐらいケチケチするなよ」「やかましい。念の為に行っておくが何も私が無能だからとかそういう話ではないぞ? 管轄が違うんだ。私の権能が及ぶ範囲で私が出来ることはお前が旅先で困らないよう下準備の手伝いをすることだけだ」「それを世間一般では無能というのでは?」「無能では無い。出来るか出来ないかでは無い。能力がある事と実際に能力を行使するかどうかはまた別の話だ」
管轄が違うならそもそも、俺を送り出す意味はなんなんだ?と思ったが、これ以上怒らせたくない。能面のような顔でまた酷い目に合わされるに決まっている。
「いいか?口ごたえせずによく聞け。お前が送られる道は人用の道では無い。本来は人間霊のような格の低い低級霊が通行する事は想定されていない」
「なんだそれ?人間霊が低級?おかしいだろ。ここでは人間様が畜生より劣るってか?」
「ああ、そうだ」 顔色一つ変えず、即答だった。
「ここでは序列が人間界のそれとは違うんだ。ここは鬼の世界。それもただの鬼ではない。鬼神の世界だ。当然鬼神が最上級に位置付けられる。お前は人の身には過ぎた道を通るんだ。光栄に思え」
「いや、さすがにそれはちょっと…」それはおかしい。瞬間的にそう思ったのは、自身が未だ人の形をしているだけが理由なのだろうか?
「お前は来る道順を間違えたんだ。とはいえここに足を踏み入れた時点で既に来た道を引き返す事は出来ないがな」端正だが能面のような顔、常にへの字の口をした彼女がごそごそと懐から紙切れのようなものを取り出すとそれを押し付けるようにぶっきらぼうに渡してくる。
「それを使え。いいか、くれぐれも無くすんじゃないぞ。それを失くせばお前にどんな加護があっても意味が無いからな」
渡されたものには解読不能な象形文字のような何かが書きつけられていた。
「いや、俺これ読めないんだけど」「読むのではない。呑み込むんだ」
なんと原始的な…呪いか何かか?
「いいか?ここでは絶対に使うなよ。向こうについたら使え。それで状況の把握は一応出来るはずだ。お前が向こうでどんなモノになっても、自分を見失わずに済む」
「随分と大げさだな。一体向こうに行くと何が起こるんだよ」
「お前は人ではなくなる」
「え?」
「言っただろう?アレは鬼や獣の通い路だと。不純物まみれな人の亡者如きが通れば鬼以外の余分な不純物は濾し取られ濾過されるんだ。だからまずお前は人の形を保てなくなる。鬼や獣の金型をくぐり抜けるようなものさ」
「...それで具体的にはどうなるんだ?」
「だからわからんと言っているだろ?目的地は設定したが、どう転ぶかは中継地点やお前の運次第でだいぶ変わるからな」
それから延々と渡されたよくわからない呪いの符を握りしめたままで延々と説明を受けた。
どうやら「門」を潜ると、その過程で程度に差こそあれ外見も中身も人間から遠ざかり、大小様々な呪いと加護を付与され、鬼や獣へと近づくらしい。
彼女が似たような境遇の生還者から伝え聞いた範囲で知っていた具体的変化の例としては、生前の記憶の欠落、短期記憶容量の縮小や長期記憶容量の拡充、各種ストレス耐性の強化、感受性・共感力の減退、様々な異能の獲得、角や爪、牙や翼が生える等々、しかしそれも発現の仕方やその程度はまちまちだという。
「なんか聞く限りだと総合的にデメリットの方が上回る感じだな。」
「元来、私達はこの煉獄の環境下で長期間過ごせるように最適化されてるんだ。人間界へ行くのは使い走りか相当な変わり者さ。だから他所の世界に適合するには相当苦労するのは当たり前なのさ」
「..........」
数時間後、俺はバカでかいダストシュートのような「門」の前に立っていた。
いざ送り出される段になって
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