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第4話
改めて年齢を記しておくと、現在ルミエラと馬鹿娘ことリラ、婚約者の第二王子・アークレイドは15歳。第一王子は18歳、ルミエラの兄は17歳である。高等部2年の第一王子はまもなく卒業で、臣籍降下して王都から離れた土地に所領を賜る予定となっていた。
なかなか会えなくなるという事情がふたりの恋に火をつけたのだろうか。
あろうことか、卒業式を二日後に控えた日、ふたりは口づけを交わした。一度限りの思い出だと、そう言って。
目の前が真っ赤になった。
口づけひとつであっても、それは立派な不貞だ。離縁の材料になるほどの、神への冒涜。それを一度限りだからなどと言って行う愚かしさが信じられなかった。
「どうして......?」
かろうじて絞り出した声は震えていた。
「どうして、そんなことができるの! わたくしの体で! 乗っ取った他人様の体で! ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルトの体で!」
ルミエラはその空間に閉じ込められて幾度目かに絶望した。
「......わたくしの体が、汚された」
次期王妃として貞淑に、完璧に――そうあれと育てられ、己を律してきたルミエラに、それは耐えられることではなかった。
――もう、どうでもいいわ。
家族も婚約者も見限り、ただひとり孤独に生き延びてきたのは、ひとえに己を取り戻すため。盗人に汚された己が名誉と誇りを築き直す為である。
誰も気づいてくれない孤独の中、矜持と気概だけで生きていたルミエラにとって、首に手を回しはしたなく音を立てて口づける己の姿は、獣のものにしか見えなかった。艶めかしい声を聞いた瞬間、鳥肌が立った。
――もう、わたくしはわたくしに戻れない。
静かな絶望が体を覆っていく。視野が狭窄し、ルミエラは意識を手放した。
***
目が覚めると、ルミエラは赤ん坊になっていた。
驚愕した。息苦しさに声をあげたら、それが産声だったのだから。
意識を取り戻したのは、ちょうど生まれた時らしい。盗人のように誰かの体を奪ったわけではないのだろうと分かり、ルミエラは僅かに安堵した。赤子らしく喚くのは性に合わなかったので、どうしても人の手を足りないとき以外は黙っていた。使用人たちは赤子らしくないと気味悪がっていたが、中身は15歳まで生きた貴族令嬢だ、仕方のないことである。
驚くべきことに、ルミエラの兄が父に、義姉が母になっていた。ただし結婚と同時に兄はリラを愛人として迎えたためふたりの仲は冷え切っており、子供が生まれたことで愛人の家に入り浸るようになったそうである。
嘆かわしい話だ。次期公爵としての執務を、責任を、なんと心得ているのだろう。
これ以上下がると思っていなかった兄への評価が下限を突破した瞬間であった。
かといって義姉も義姉で、兄を嫌うあまり兄の血を引く己の娘のことも気に入らないらしく、別に愛人を囲っていたから、基本的に面倒を見てくれるのは乳母と使用人であった。
そんな状態であっても、ルミエラは何も思わなかった。意図的ではないにしろ、家族や婚約者から捨てられた悲哀はもう経験している。初めから家族の情に期待などなく、むしろちょうどいいと思ったほどであった。
長じるにつれ、ルミエラは天才令嬢として名を馳せるようになった。元より王妃教育まで修めたルミエラにとって、同じ年頃の貴族令嬢が学ぶようなことは正しく児戯である。あまりにも退屈だったので暗い空間で得た知識を基に新たな魔法を考案したり、航海技術の向上に関わったりと、精力的に活動した。
――よって、この現状はなんら不思議なところがない。
「ザイツェフェルト公爵が嫡孫ベルローズ、王太子殿下ならびに王太子妃殿下、第一王孫殿下に拝謁いたします。クラルヴァイン王国に更なる繁栄がもたらされますように」
「顔をあげて、ベルローズちゃん。わたしたちは叔母と姪ですもの、仲良くしましょう?」
「恐悦至極に存じます」
ルミエラが因縁の8歳を迎えた年である。この世で最も嫌悪している王太子妃こと盗人と、その王太子妃に尻尾を振るしか能がない王太子こと元婚約者のアークレイド、そしてそのふたりの子供である第一王孫に拝謁した。
話題は勿論、婚約に関してである。血は近いとはいえ、これほどまでに優れた令嬢が他国に流れる前に囲い込んでおきたいというところであろう。
「――というわけで、我が息子の婚約者になってもらいたいと考えている」
「であれば公爵にお話しください。わたくしの意見は不要のはず」
「まあ、そんなことを言わないで。婚約者とは生涯を共にするのよ? 好いた方と一緒がいいじゃない」
「その通り。私もこうして最愛の妃を迎えられたのだから」
「まあ、殿下ったら......」
盗人は頬を赤らめている。どうやら第一王子への愛は薄れたらしい。呆れた売女である。義兄となる方と口づけされておられましたよね、と言ってやりたくなったが堪えた。
「勿論、ザイツェフェルト公にも打診するが、先にそなたの意見を聞いておきたくてな」
「左様でございますか」
「あっでも、いきなり言われても分からないわよね。そうだわ、ふたりで庭園を散歩してきたらどうかしら? オスカー、案内してあげて」
「はい、母上。ベルローズ嬢、行きましょう」
少し緊張した面持ちで差し出された手を何の感慨もなく見つめ、ルミエラはそうですね、と頷いた。
ルミエラは恋というものを嫌悪している。己の体が汚された契機となったためであり、恋によって理性を失った兄を思うと吐き気がするためだった。
そもそも今のルミエラは身体年齢こそ8であるが、精神年齢はふたつの生を加算すればもう23歳である。正直、同じ年頃の令息を婚約者として見ることは難しい。
第一王孫は、名をオスカーという。現在6歳なので、身体年齢では2歳、精神年齢では18歳分離れていることになる。王太子によく似た面差しだが、髪の色だけは盗人の――つまりルミエラの体のものを受け継いでいた。赤い髪に翡翠の瞳、同じ年頃の令嬢が見れば黄色い悲鳴をあげそうな美しさである。
「ベルローズ嬢の噂は聞いています。とても優れた方であると、父上も母上も誇らしげに仰っておりました。僕も、ベルローズ嬢に早くお会いしたいと思っていたんです」
「左様でございますか」
「ベルローズ嬢の発明はすごいです。どうしたらあのようなことを思いつくのですか?」
「さあ。思い浮かんだものを形にしているだけですので」
「そうなんですね! これが才能なんでしょうね」
第一王孫は沈黙を嫌うようだった。絶え間なく何かを話し続けた。ルミエラが何ひとつ話題を提供しようとしないのも、原因のひとつだったかもしれないが。
「......あの、僕はベルローズ嬢と婚約できたら嬉しいなって思ってました。ベルローズ嬢は僕と話すのは楽しくないですか?」
建物に戻る直前、泣き出しそうな顔で第一王孫は言った。もう6歳になろうと言うのに、これほどまでに感情の制御ができないのは如何なものかと思う。さあ、とルミエラは無感情に首を傾げた。
「誰と何を話しても変わりませんので」
第一王孫は心底意味が分からないと言いたげに眉を寄せた。
――結局、第一王孫とルミエラの婚約は結ばれなかった。
なかなか会えなくなるという事情がふたりの恋に火をつけたのだろうか。
あろうことか、卒業式を二日後に控えた日、ふたりは口づけを交わした。一度限りの思い出だと、そう言って。
目の前が真っ赤になった。
口づけひとつであっても、それは立派な不貞だ。離縁の材料になるほどの、神への冒涜。それを一度限りだからなどと言って行う愚かしさが信じられなかった。
「どうして......?」
かろうじて絞り出した声は震えていた。
「どうして、そんなことができるの! わたくしの体で! 乗っ取った他人様の体で! ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルトの体で!」
ルミエラはその空間に閉じ込められて幾度目かに絶望した。
「......わたくしの体が、汚された」
次期王妃として貞淑に、完璧に――そうあれと育てられ、己を律してきたルミエラに、それは耐えられることではなかった。
――もう、どうでもいいわ。
家族も婚約者も見限り、ただひとり孤独に生き延びてきたのは、ひとえに己を取り戻すため。盗人に汚された己が名誉と誇りを築き直す為である。
誰も気づいてくれない孤独の中、矜持と気概だけで生きていたルミエラにとって、首に手を回しはしたなく音を立てて口づける己の姿は、獣のものにしか見えなかった。艶めかしい声を聞いた瞬間、鳥肌が立った。
――もう、わたくしはわたくしに戻れない。
静かな絶望が体を覆っていく。視野が狭窄し、ルミエラは意識を手放した。
***
目が覚めると、ルミエラは赤ん坊になっていた。
驚愕した。息苦しさに声をあげたら、それが産声だったのだから。
意識を取り戻したのは、ちょうど生まれた時らしい。盗人のように誰かの体を奪ったわけではないのだろうと分かり、ルミエラは僅かに安堵した。赤子らしく喚くのは性に合わなかったので、どうしても人の手を足りないとき以外は黙っていた。使用人たちは赤子らしくないと気味悪がっていたが、中身は15歳まで生きた貴族令嬢だ、仕方のないことである。
驚くべきことに、ルミエラの兄が父に、義姉が母になっていた。ただし結婚と同時に兄はリラを愛人として迎えたためふたりの仲は冷え切っており、子供が生まれたことで愛人の家に入り浸るようになったそうである。
嘆かわしい話だ。次期公爵としての執務を、責任を、なんと心得ているのだろう。
これ以上下がると思っていなかった兄への評価が下限を突破した瞬間であった。
かといって義姉も義姉で、兄を嫌うあまり兄の血を引く己の娘のことも気に入らないらしく、別に愛人を囲っていたから、基本的に面倒を見てくれるのは乳母と使用人であった。
そんな状態であっても、ルミエラは何も思わなかった。意図的ではないにしろ、家族や婚約者から捨てられた悲哀はもう経験している。初めから家族の情に期待などなく、むしろちょうどいいと思ったほどであった。
長じるにつれ、ルミエラは天才令嬢として名を馳せるようになった。元より王妃教育まで修めたルミエラにとって、同じ年頃の貴族令嬢が学ぶようなことは正しく児戯である。あまりにも退屈だったので暗い空間で得た知識を基に新たな魔法を考案したり、航海技術の向上に関わったりと、精力的に活動した。
――よって、この現状はなんら不思議なところがない。
「ザイツェフェルト公爵が嫡孫ベルローズ、王太子殿下ならびに王太子妃殿下、第一王孫殿下に拝謁いたします。クラルヴァイン王国に更なる繁栄がもたらされますように」
「顔をあげて、ベルローズちゃん。わたしたちは叔母と姪ですもの、仲良くしましょう?」
「恐悦至極に存じます」
ルミエラが因縁の8歳を迎えた年である。この世で最も嫌悪している王太子妃こと盗人と、その王太子妃に尻尾を振るしか能がない王太子こと元婚約者のアークレイド、そしてそのふたりの子供である第一王孫に拝謁した。
話題は勿論、婚約に関してである。血は近いとはいえ、これほどまでに優れた令嬢が他国に流れる前に囲い込んでおきたいというところであろう。
「――というわけで、我が息子の婚約者になってもらいたいと考えている」
「であれば公爵にお話しください。わたくしの意見は不要のはず」
「まあ、そんなことを言わないで。婚約者とは生涯を共にするのよ? 好いた方と一緒がいいじゃない」
「その通り。私もこうして最愛の妃を迎えられたのだから」
「まあ、殿下ったら......」
盗人は頬を赤らめている。どうやら第一王子への愛は薄れたらしい。呆れた売女である。義兄となる方と口づけされておられましたよね、と言ってやりたくなったが堪えた。
「勿論、ザイツェフェルト公にも打診するが、先にそなたの意見を聞いておきたくてな」
「左様でございますか」
「あっでも、いきなり言われても分からないわよね。そうだわ、ふたりで庭園を散歩してきたらどうかしら? オスカー、案内してあげて」
「はい、母上。ベルローズ嬢、行きましょう」
少し緊張した面持ちで差し出された手を何の感慨もなく見つめ、ルミエラはそうですね、と頷いた。
ルミエラは恋というものを嫌悪している。己の体が汚された契機となったためであり、恋によって理性を失った兄を思うと吐き気がするためだった。
そもそも今のルミエラは身体年齢こそ8であるが、精神年齢はふたつの生を加算すればもう23歳である。正直、同じ年頃の令息を婚約者として見ることは難しい。
第一王孫は、名をオスカーという。現在6歳なので、身体年齢では2歳、精神年齢では18歳分離れていることになる。王太子によく似た面差しだが、髪の色だけは盗人の――つまりルミエラの体のものを受け継いでいた。赤い髪に翡翠の瞳、同じ年頃の令嬢が見れば黄色い悲鳴をあげそうな美しさである。
「ベルローズ嬢の噂は聞いています。とても優れた方であると、父上も母上も誇らしげに仰っておりました。僕も、ベルローズ嬢に早くお会いしたいと思っていたんです」
「左様でございますか」
「ベルローズ嬢の発明はすごいです。どうしたらあのようなことを思いつくのですか?」
「さあ。思い浮かんだものを形にしているだけですので」
「そうなんですね! これが才能なんでしょうね」
第一王孫は沈黙を嫌うようだった。絶え間なく何かを話し続けた。ルミエラが何ひとつ話題を提供しようとしないのも、原因のひとつだったかもしれないが。
「......あの、僕はベルローズ嬢と婚約できたら嬉しいなって思ってました。ベルローズ嬢は僕と話すのは楽しくないですか?」
建物に戻る直前、泣き出しそうな顔で第一王孫は言った。もう6歳になろうと言うのに、これほどまでに感情の制御ができないのは如何なものかと思う。さあ、とルミエラは無感情に首を傾げた。
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