稀血の令嬢は普通に生きたい 〜王子からの溺愛と執着は日常ですか?〜

ひまわり

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第1章

2.稀血と歴史(シオンside)

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家に帰ると、帰りが遅いことを心配していた母と父が出迎えた。

「…!どうしたの、その血…!」

「お母様、大丈夫です。傷は治っています。それよりミラが…息はしているのですが…」

ミラを部屋に寝かせた後、シオンは母に起きた事を話した。
魔獣に遭ったこと、傷を負ったこと、

ーーーそして、
ミラが手を握った時、その傷が治ったことを。


「…そう…ミラが…」

母の声色は、思ったよりも落ち着いてた。
それは、驚きよりも不安が大きく見えた。

「あれは、何だったのか、お母様はご存知なんですか。どの属性の魔法でもない…傷が治癒するなんて…」

母は戸惑う表情を見せた後、何かに決意した表情に変わった。

「…あなた、ミラが『治癒の血』を持つと分かった以上、話すしかないわ。」

「…あぁ、そうだな。ちゃんと伝えよう。」

それまで黙って会話を聞いていた父が口を開いた。
普段の和気藹々あいあいとした家族の様子からは信じられないほどの切り詰めた空気に、シオンはギュッと息を呑んだ。


「シオン、付いてきて。」

母と父に連れられたのは、父の書斎だった。普段から仕事を教えてもらうために入っている部屋だったが、ある一つの棚の前に立った。

父が本棚の奥に手を触れる。

ギギィーーー


本棚が横にずれていく。
そこには新たな部屋が広がっていた。


「………ここは…」

「ここはね、『治癒の血』に関する論文、資料が集まった部屋なの。」

中は図書館を思わせるような本棚が並び、研究室のような器具や装置もあった。

それにしても…

「…あの、お母様…その、『治癒の血』とはいったいなんでしょうか。」

「そう、その話を今からするわね。『治癒の血』はーーー」

母は一冊の本を手に取り、話し始めた。

ーーーーーー

今から100年前。

今となっては大国であるスティエルネ王国は、その以前、他の国々と大して変わらない国力であった。

そんなスティエルネ王国には、ある時、5属性のどれにも属さない治癒の力、『治癒の血』を持つ一族が現れた。

スティエルネ王国は、その力を持つ一族を厚く保護し、役職を与え、その力を国の反映となるように協力を求めた。

傷や病を治す治癒の力によって軍隊の武力は上がり、また、伝染病の悪化を防ぐことができるなどの結果、隣国の支配を圧倒し、領地を広げながらも国の安定が保たれる大国となっていった。

スティエルネ王国の繁栄がもたらされた後も、『治癒の血』を持つ一族はその血が途絶えることの無いよう、国の保護のもと、できるだけ自由が奪われないよう配慮されながらの生活をしていた。

スティエルネ王国の繁栄を見届けた隣国たちは、もちろん『治癒の血』を欲した。

スティエルネ王国は、国王の意向により、『治癒の血』を持つ者たちの自由を制限することはなかった。
そのため、『治癒の血』を持つ者が国外へ出ていくこともあったが、その力は必ずしも承継されるわけではなかった。

その力を引き継ぐ者もいないわけではなかったが、国外に出た者たちの血はいつしか途絶え、スティエルネ王国以外でその血縁が続くことはなかった。

そして今から50年ほど前。
手に入らないならば、と、
『治癒の血』を求め、渇望する者たちは、スティエルネ王国の『治癒の血』を持つ者たちを虐殺する行為に出た。

国のもとで保護されていた結果、隣国に『治癒の血』を持つ一族の居場所は確定されており、的確な攻撃によって殺害が行われた。

それは、後に、「スティエルネの悪夢」と呼ばれるようになる。


既に大国になっていたスティエルネ王国は、広範な情報網と武力により隣国に圧倒的な力を見せ鎮圧した。

しかし、その対応の素早さを持ってしても、国のもとで保護されていた『治癒の血』を持つ者達の大半は命を失ってしまった。

スティエルネ王国の国王は、
『治癒の血』に頼り特別視したことにより、隣国からの攻撃の的となって、残虐的な事態を起こしてしまったことを悔やんだ。
それ以降、『治癒の血』の保護と国の事業へ積極的な協力を求めることをやめ、生き残った者たちは静かに民衆の中に解き放たれた。
『治癒の血』を持つ者は、静かに、その力を公には見せることなく、今でも生き残っているとされている。

ーーーーーー  



母は静かにこちらを見た。

母、マイラ・アストライアは、
息子から見ても美しく、綺麗な女性だった。
ミラは、母の容姿を引き継いだのだと思う。


「…お母様の祖先はね、『治癒の血』の一族なの。
ここは、『治癒の血』に関する研究もしているの。私達の力の謎を解き、その保護をするために。」

「ミラは、その力を引き継いだということでしょうか…あの出来事が、その力…」

「そうなるわ。お母様もミラくらいの年齢に力が使えるようになったと思う。
いつ力が現れるか、そもそも力が現れるのかは誰にもわからないの。」

「でも、僕にはその力はないですよね。」

「全員がその力を引き継ぐわけではないのよ、お父様は普通の人だから。」

静かに見守る父に目を向けると、優しく微笑んでくれた。

「お父様はね、『治癒の血』が途絶えないように、そして、この力を持つ者が生きやすくなるように研究もしているのよ。」

シオンはその年には見合わない理解力と知識を持ち、優秀であった。

母の話から、
『治癒の血』は今でもその存在が狙われていて、襲われる可能性があること。
研究とは、その力を何かに代替させたり、他の魔法でも賄えるようになることで、『治癒の血』の希少性を下げ、その者達が安全に暮らせるようにするためだと理解した。




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