稀血の令嬢は普通に生きたい 〜王子からの溺愛と執着は日常ですか?〜

ひまわり

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第2章

12.殿下との再開

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食堂は中等部と高等部にそれぞれある。
お昼時なので混雑していた。

「何にしようかな~。ミラは決めた?」

「私はこのサンドイッチとサラダのセットにしようかな。」

「それも美味しそう…でも定食も迷う…。」

「混んでるから先に注文して席取りしておくよ、ゆっくり選んでね。」

「ありがとう!」


列の進みが早く、予想よりも早く注文できた。
商品を受け取り空いている席を探す。

(なかなか空いてないな…)

「ミラ。」

ウロウロしていると、後ろから声がかかった。 

「久しぶり。元気にしてた?
制服似合ってるよ。」

思わぬ人物に驚く。

殿下ともう1人の男子生徒が立っていた。

「……!殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」

「そんなに固くならないで。ここは学園内だから。」

…コクリ、と頷く。

「先程のご挨拶は素敵でした。」

「ありがとう。目が合ったね。
ちなみに、彼はイオ・ユタフェース。私の側近兼護衛で、シオンとも友達だよ。」

目が合ったのは気のせいじゃなかったのか、と一瞬固まる。
(あまりにもサラッと……)

もう1人の男子生徒の視線が向いている。

「あっ、初めまして。シオンの妹のミラ・アストリアです。」

「初めまして!シオンと目と髪が同じだ。
とっても美少女でビックリ!」

どう反応すると良いか分からず戸惑う。

「ありがとうございます…?」

「なんで疑問形?」

長身なので威圧感があったが、お茶目に笑うので緊張は解れた。

「イオ、ミラにちょっかい出さないでくれ。
ミラ、今からお昼だよね。ご一緒しても良いかな。」

サンドイッチとサラダの乗ったトレーを持っていることに気がつく。

「あっ…、友人も一緒なのですが、良いでしょうか。」

「もちろん、お友達が良いって言ってくれなければ諦めるよ。」

むしろ大喜びするのでは、とミラは思う。

「殿下とご一緒できるのは、とても嬉しいことだと思います。」

「……ミラもそう思う?」

「はい。」

その言葉に嘘はない。
入学式で改めて感じたが、雲の上のような存在である殿下と会話していることが既にイレギュラーだ。

周りの生徒たちが先ほどからこちらをチラチラ見ている。

(殿下が食堂に来ることは珍しいのかな…?)

「えー、ミラちゃん素直!可愛い!」

「辞めろ、というかその呼び方は何だ。」

「え、だめ?」

「ダメだ。」

「あっ、別に、何でも大丈夫ですよ。」

「ありがとう!優しいっ」

…舌打ちが聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。


「とはいえ、席だな。」

殿下がそう言って周りを見渡すと、近くに座っていた人たちがそそくさと立ち上がり離れていく。

「空いたね。」

(うん、確かに空いた…) 

今の流れだと空けるしかないよね、と思いつつも申し訳ない。

「俺、殿下の分も適当に買ってきますね。」

殿下と向かい合わせで2人、周りの視線が痛い。

戸惑いながら視線を上げると、殿下が微笑んでいた。

「いつもは周りに気を遣わせちゃうから食堂はあまり使わないんだ。」

「そうなんですね、確かに凄い混雑ですもんね…。」 

「ミラの後ろ姿は追いかけたくなってしまうみたいなんだ。」

はて?
私が食堂に入るところを見たから来たということだろうか。
殿下がわざわざ…?

視線を合わせたまま話されて、思わず赤くなる。

「……恐縮ですっ…。」

クスッ、と殿下は笑う。

まだ視線は合っている。エメラルドの瞳が動かない。

「……そんなに見られると恥ずかしいです…」

耐えれなくて逸らしてしまう。

「ミラもこっちを見てよ。」

「……免疫無いので、お手柔らかに…っ」

クスクスと笑われ、余計に恥ずかしい。



「え、何この空気、俺邪魔?」

「いや本当に、いつ声かければ良いかと戸惑いました。」

イオ様とユノが立っていた。

「ユノ!ごめん、探した?」

「ううん、こちらこそお待たせ。それよりこの状況は…。
あっ、ご挨拶が遅れました。ユノ・ラエタンテでごさいます。」

「ごめんね、急に。ルシア・スティエルネです。ご一緒させてくれるかい?」

「はいっ!もちろんです!」

殿下がイオ様をユノに紹介し、4人で席に着く。

(……不思議な光景だ…)

まさか初日からこんなランチになるとは。

殿下は揶揄からかっていたのだろうが、2人が来てくれて助かった。


「これから2人は魔力測定なんだ?しっかり食べなきゃね。」

魔力ランクの測定は血圧測定のように楽だが、魔力測定では特殊な機械に魔力を貯める必要があるため、魔力を消耗する。

「殿下とイオ様も魔術訓練には参加されますか?」

「そうだね、何か必須の公務でも無い限りは参加すると思うよ。」

「とかいって、いつも面倒がってるけどね。」

「色々煩わしいこともあるからね。でも今回はミラが闘ってるところが見たいな。」

「おそらく違うチームでしょうから…。」

チームを均等化するため、高いランクの人が固まることはないだろう。

「ミラちゃんランク高いの?」

「まぁ、それなりです…?」

「また疑問形じゃんっ」

ランクは訓練で上がるのが基本であるため、上の者は鍛えられて体格が良いことが多い。

ミラは華奢なのでそのイメージからはかけ離れている。

「まぁでもシオンの妹だもんね。」


その後も少し会話をして、ランチを終えた。

トレーを返しに行ったユノとイオ様を待つ。


「今日はありがとう。これから学園生活頑張って。」

「こちらこそありがとうございます。」

楽しいランチの時間だった。
微笑みながら、軽く一礼する。

「またご一緒しても良いかな。」

「えっ、…はいっ。」

「ありがとう。またね。」

上げられた手に、思わず手を振り返す。

(「また」があるんだなあ……)

ぼんやり考えていると、ユノが戻ってきた。

「ねぇ!何あれ!殿下めちゃくちゃミラのこと見過ぎじゃない?!いつの間にあんなに仲良くなってたの?」

「いやいや、そんな事はないよ。たぶん兄の妹だから良くしてくれてるんだと思う。」

「それだけには見えなかったけど…2人の空気感に割り込むの気が気じゃなかったよ…」

「私も緊張してたからユノとイオ様が居てくれて良かったよ。」

「まぁ私も貴重な経験だったよ。ありがとう。」

礼を言われることはしていないのだけどな。
「また」があるかもしれないということは、今は言わなかった。



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