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第一章
第15話 そして
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終わってしまえば濁流のような一日も凪いだ海のごとく穏やかな朝に塗りつぶされる。
テラは朝日で目を覚ますと同時に己の狙撃銃を探した。
見当たらない。
なくす筈がない己の半身をきょろきょろと見回していると、メテオラがいい匂いをさせて近寄ってくる。
「あ、起きた? 状況掴めてる?」
メテオラはレーフの作ったスープを両手に、テラの狙撃銃を背負って話しかけている。
確かに遠くでレーフが、やたらと大きい鍋をかき混ぜていた。
どうやら炊き出しをしているようだ。
メテオラは両手のスープをこぼさないように、そうっとテラの隣に座るとそのままそれを差し出す。
「ふふ、ぜーんぶ終わったよ」
メテオラ曰く、状況はすべていい方に進んでいるらしい。
母は洗脳装置の破壊と共に倒れたもののすぐに目を覚まし、地獄のような北部支援者保護区域の状況をすぐさま取り止めた。
収容されていた人々には、母に反感を持つ者もいたが、それもサルドニクスのせいであることを知っている。
そして何より、彼らはレーフの美味しいスープで満たされたのだった。
健康状態の悪い労働者たちには、レーフの磨き抜かれた腕によって作られた、まだ知らない味覚の刺激される美味しさのスープがだされた。
そのスープは、お腹が膨れるとともに、くさくさとした嫌な気分をも洗い流すものだった。
ルナもまた戦い終えてマントを脱いでいる。
そして彼女もレーフによる美味しいスープを飲んでお腹いっぱいになってすやすや穏やかに眠っている。
この後サルドニクスが来るだろうが、そこの調停もヘリオスとスバルで取り繕ってくれるらしい。
「ありがとう、メテオラ」
「どういたしまして。……あれ?」
そこに母がやってくる。メテオラはスープを渡してから席を外した。
彼女も母子の対面は気を遣うらしい。
母は言いにくそうに視線をあちこちにそらしている。
洗脳されていた時の記憶も残っているらしい。
最後まで嫌な機械だなと思った。
テラも何を言えばいいか分からなかった。
それでも彼女は意を決したようにまっすぐテラの目を見て、それから頭を下げる。
「テラ、私、酷いことを言ってごめんなさい」
「いいんだ母さん。いいんだよ。…………全部、終わったから」
思わず涙声になるのを奥歯を噛みしめて抑えこむ。
乾いた瞳がやけに滲んで痛かった。
全部いいのだ。全部無事に終わった。テラはそれで充分だった。
だから母の肩を抱きしめた。
さめざめと泣く母は、かつてよりずっと小さくなったように思えた。
△▼△▼△▼△▼△
「万事すべてこともなし、だね!」
母が去った後、メテオラは嬉しそうに頷きながら戻ってきた。そしてテラに話しかける。
「テラ君のしたいこと、できた?」
「ああ、満足だ」
テラは渡されたスープを飲みながら、いままで感じたこともないほど穏やかな心持ちで、いまの光景を眺めていた。
ルナは健やかに寝ているし、母は元に戻った。
家族はそれがいい。
しかし、メテオラは満足できないらしい。
「ふーん」というとくちびるを尖らせそっぽを向いた。
「まぁいいか。今は」
メテオラはそう納得しようとしていた。
しかしテラには何を求められているかわかっていた。
だから思っていることを伝える。
「でも……俺も、もっと広いところに出たくなった」
「ほんと!?」
すぐさまメテオラはしゃがんで身を乗り出した。
非常に嬉しそうでこちらもおそらく口角が上がっている。
「あぶなーい、あとちょっとで駄々こねるところだった!」
「嘘だ。メテオラは俺のしたいことを優先させてくれるだろ?」
そう言うとメテオラは舌をペロリと出して笑った。
「そうだね。本当にしたいことがあるなら、そっちを優先してほしい。でも家族はいいの?」
テラは少し考える。
確かにまたサルドニクスによって苦しめられるかもしれない。
そもそもこんな内戦モドキをした時点でサルドニクスの国力はだいぶ落ちているのかもしれない。
戦争に負けてもっとひどい目にあうかもしれない。
それでも。
「俺は、俺のしたいことをするよ。母さんもルナも、俺が説得する」
「説得されるまでもないよ」
ふたりの間に割って入るようにルナの声が響いた。
うしろをふりかえれば、ルナがまるで仁王立ちをするように腰に手を当てていた。
「母さんのことは私に任せて。テラはテラのしたいことをして。ていうか私たちの許可取る必要ないよね? テラのしたいことだよ。そっち優先しなよ」
力強いルナの言葉に、メテオラは大声で笑った。
「いい妹ちゃんだね!」
テラもまた、苦笑する。
そしてはっきり断言する。
「立派な自慢の妹だ」
そしてテラは立ち上がる。
もうやることは終わっていた。
あとはヘリオスたちの戦い次第だ。
それもきっといい方へ向かうだろう。
テラは理由もなく――否、彼らなら大丈夫という信頼感から、そう思った。
△▼△▼△▼△▼△
サルドニクスは技術大国だ。
資源の乏しい砂漠の国が他国と渡り合うためには、技術力を磨くしかなかった。
そして彼らは惑星の外の住人と巡りあっていた。
惑星外の人々からは多くの技術提供があった。
サルドニクスはそれらを利用し、技術大国としてちからを蓄えようと考えていた。
――しかし。
「そんな、話が違います!」
サルドニクスの軍上層部は混乱に陥っていた。
決して彼らも愚かではない。
戦争なんてしない方がいいことを知っている。
何故なら、サルドニクスは他国へ技術者を貸し出したり、他国の技術を掠め取ったりしてつけてきたものだ。
もちろんいまのサルドニクスなら自国だけで教育は完結するが、そもそも国力――人口の乏しい砂漠の小国である。
戦争なんてせずに、融和政策を取った方が得る利益が大きい国家だ。
戦争なんてしない方がいい。
そんな手段取るわけがない。
――洗脳でもされていなければ。
通信は一方的に切断された。
それと同時に彼らの洗脳も解ける。
彼らは罪の大きさにうち震えた。
何人もの無益な人死にを出したことを、数字上とはいえ知っている。
それでも、軍人の矜持か己の使命感か、せめて内乱を収めてから自決をしようと決意した。
手始めに先程から通信に割り込む惑星外の宇宙船と通信を繋いだ。
『ハロー、宇宙海賊ミーティアだよ!』
テラは朝日で目を覚ますと同時に己の狙撃銃を探した。
見当たらない。
なくす筈がない己の半身をきょろきょろと見回していると、メテオラがいい匂いをさせて近寄ってくる。
「あ、起きた? 状況掴めてる?」
メテオラはレーフの作ったスープを両手に、テラの狙撃銃を背負って話しかけている。
確かに遠くでレーフが、やたらと大きい鍋をかき混ぜていた。
どうやら炊き出しをしているようだ。
メテオラは両手のスープをこぼさないように、そうっとテラの隣に座るとそのままそれを差し出す。
「ふふ、ぜーんぶ終わったよ」
メテオラ曰く、状況はすべていい方に進んでいるらしい。
母は洗脳装置の破壊と共に倒れたもののすぐに目を覚まし、地獄のような北部支援者保護区域の状況をすぐさま取り止めた。
収容されていた人々には、母に反感を持つ者もいたが、それもサルドニクスのせいであることを知っている。
そして何より、彼らはレーフの美味しいスープで満たされたのだった。
健康状態の悪い労働者たちには、レーフの磨き抜かれた腕によって作られた、まだ知らない味覚の刺激される美味しさのスープがだされた。
そのスープは、お腹が膨れるとともに、くさくさとした嫌な気分をも洗い流すものだった。
ルナもまた戦い終えてマントを脱いでいる。
そして彼女もレーフによる美味しいスープを飲んでお腹いっぱいになってすやすや穏やかに眠っている。
この後サルドニクスが来るだろうが、そこの調停もヘリオスとスバルで取り繕ってくれるらしい。
「ありがとう、メテオラ」
「どういたしまして。……あれ?」
そこに母がやってくる。メテオラはスープを渡してから席を外した。
彼女も母子の対面は気を遣うらしい。
母は言いにくそうに視線をあちこちにそらしている。
洗脳されていた時の記憶も残っているらしい。
最後まで嫌な機械だなと思った。
テラも何を言えばいいか分からなかった。
それでも彼女は意を決したようにまっすぐテラの目を見て、それから頭を下げる。
「テラ、私、酷いことを言ってごめんなさい」
「いいんだ母さん。いいんだよ。…………全部、終わったから」
思わず涙声になるのを奥歯を噛みしめて抑えこむ。
乾いた瞳がやけに滲んで痛かった。
全部いいのだ。全部無事に終わった。テラはそれで充分だった。
だから母の肩を抱きしめた。
さめざめと泣く母は、かつてよりずっと小さくなったように思えた。
△▼△▼△▼△▼△
「万事すべてこともなし、だね!」
母が去った後、メテオラは嬉しそうに頷きながら戻ってきた。そしてテラに話しかける。
「テラ君のしたいこと、できた?」
「ああ、満足だ」
テラは渡されたスープを飲みながら、いままで感じたこともないほど穏やかな心持ちで、いまの光景を眺めていた。
ルナは健やかに寝ているし、母は元に戻った。
家族はそれがいい。
しかし、メテオラは満足できないらしい。
「ふーん」というとくちびるを尖らせそっぽを向いた。
「まぁいいか。今は」
メテオラはそう納得しようとしていた。
しかしテラには何を求められているかわかっていた。
だから思っていることを伝える。
「でも……俺も、もっと広いところに出たくなった」
「ほんと!?」
すぐさまメテオラはしゃがんで身を乗り出した。
非常に嬉しそうでこちらもおそらく口角が上がっている。
「あぶなーい、あとちょっとで駄々こねるところだった!」
「嘘だ。メテオラは俺のしたいことを優先させてくれるだろ?」
そう言うとメテオラは舌をペロリと出して笑った。
「そうだね。本当にしたいことがあるなら、そっちを優先してほしい。でも家族はいいの?」
テラは少し考える。
確かにまたサルドニクスによって苦しめられるかもしれない。
そもそもこんな内戦モドキをした時点でサルドニクスの国力はだいぶ落ちているのかもしれない。
戦争に負けてもっとひどい目にあうかもしれない。
それでも。
「俺は、俺のしたいことをするよ。母さんもルナも、俺が説得する」
「説得されるまでもないよ」
ふたりの間に割って入るようにルナの声が響いた。
うしろをふりかえれば、ルナがまるで仁王立ちをするように腰に手を当てていた。
「母さんのことは私に任せて。テラはテラのしたいことをして。ていうか私たちの許可取る必要ないよね? テラのしたいことだよ。そっち優先しなよ」
力強いルナの言葉に、メテオラは大声で笑った。
「いい妹ちゃんだね!」
テラもまた、苦笑する。
そしてはっきり断言する。
「立派な自慢の妹だ」
そしてテラは立ち上がる。
もうやることは終わっていた。
あとはヘリオスたちの戦い次第だ。
それもきっといい方へ向かうだろう。
テラは理由もなく――否、彼らなら大丈夫という信頼感から、そう思った。
△▼△▼△▼△▼△
サルドニクスは技術大国だ。
資源の乏しい砂漠の国が他国と渡り合うためには、技術力を磨くしかなかった。
そして彼らは惑星の外の住人と巡りあっていた。
惑星外の人々からは多くの技術提供があった。
サルドニクスはそれらを利用し、技術大国としてちからを蓄えようと考えていた。
――しかし。
「そんな、話が違います!」
サルドニクスの軍上層部は混乱に陥っていた。
決して彼らも愚かではない。
戦争なんてしない方がいいことを知っている。
何故なら、サルドニクスは他国へ技術者を貸し出したり、他国の技術を掠め取ったりしてつけてきたものだ。
もちろんいまのサルドニクスなら自国だけで教育は完結するが、そもそも国力――人口の乏しい砂漠の小国である。
戦争なんてせずに、融和政策を取った方が得る利益が大きい国家だ。
戦争なんてしない方がいい。
そんな手段取るわけがない。
――洗脳でもされていなければ。
通信は一方的に切断された。
それと同時に彼らの洗脳も解ける。
彼らは罪の大きさにうち震えた。
何人もの無益な人死にを出したことを、数字上とはいえ知っている。
それでも、軍人の矜持か己の使命感か、せめて内乱を収めてから自決をしようと決意した。
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