少年兵と流れ星

阿納あざみ

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第一章

第14話 崩壊

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 テラは走った。
 母を洗脳している機械を一刻も早く壊すために。
 労働棟を越えて、生活棟の二階層から四階層、それらをさらに乗りこえて屋上まで向かわなくてはならない。

 逸る心と比べて、足や身体は確実に重たくなっている。
 考えてみればメテオラと出会ってからぶっ続けで行動していた。
 いまになって疲労感が出てきたのか、とテラは静かに笑った。

「上等だ、走り抜いてやる」

 階段を躓きながら、呼吸を乱しながら駆けあがる。

「こっちはそろそろ最後の扉だよー! 意外と手強かったけど、催眠ガスとわたしのパゥワーでなんとかなった!」

 通信機からメテオラのブイサインの見えそうな完勝宣言が鳴る。
 テラも負けてられないと、走りながら体勢と呼吸を整える。
 気づけば四階層だ。
 国家への忠誠を誓えと強迫してくる張り紙を踏みつけながら、屋上へ繋がる埃っぽい階段をのぼる。

「こっちも、もう少しで着く!」

 鍵のかかった扉を、何度か蹴飛ばし無理やり開ける。
 軍靴を履いたままで良かったと思った。

「着いた!」

 通信機に叫んで何度も訓練して何度も繰り返した狙撃態勢に移行する。
 労働棟を上から見下ろせば、ミーティ・アイから通信が入る。

『アイから狙撃ポイントを指示するね。ミスターテラはのんびり構えててね!』
「そうだな。のんびり構えよう」

 ミーティ・アイの言葉に思わず吐息を漏らす。
 そして、深呼吸をする。上がった息を整え、スバルからもらった弾丸を籠めて、狙いをつける。
 
 テラは軍事的勉強をしてきた、いわゆる軍人家系の人間ではない。
 それでも三年間、毎日戦場に身を置いたことで身につけた経験があった。
 ゆえに、どこを狙えばいいかをおおよそ理解していた。

 ミーティ・アイの通信によってその精度は格段に上がり。
 スバルから与えられた、他惑星の超科学技術を取り込んだ弾丸を備えて。
 メテオラに教えてもらった、己がしたいことを胸に宿して。

「宇宙海賊ミーティアだ、床に伏せろ!」

 その合図で、テラは彼らの守っていた洗脳装置を、部屋ごとぶち抜いた。

 音が一瞬遅れ、ミサイルのような轟音があたりに響きわたる。
 撃ち抜かれた建物は、外壁を貫かれた直径数センチの穴と、大きなひび割れが残った。
 そして狙いの洗脳装置は、その部屋を守る厳重な警備と金庫のなかで、大きな爆発をして焼失した。

「完璧! 指令部の人たち固まっちゃってる

 メテオラの一言で、テラはようやく現実感を取り戻した。

「はは……ああ、よかった……」

 そして、緊張の糸や体力、精神力の尽き果てたテラは、その場に倒れ伏した。

「あーあ。やっぱお疲れだったかい」

 宇宙船より降り立ったヘリオスは、テラをよっこいしょと抱きかかえて、集合ポイントの労働棟四階層へのんびり移動する。
 おそらく今ごろはメテオラ、スバル、ルナたちによって指令部に残った軍人たちは縛りあげられているだろう。

「みんなお疲れ様。無事で何よりさね」

 ヘリオスはにっこり笑いながら、その場を後にした。
 
 ここにテラの家族救出計画、そしてその後の洗脳装置破壊計画は、見事に完遂されたのだった。
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