少年兵と流れ星

阿納あざみ

文字の大きさ
13 / 16
第一章

第13話 駆ける

しおりを挟む
「プロジェクト:メテオラ……だね」
「反対。プロジェクト:プレアデスで」

 軍の指令部の奥、洗脳装置を破壊する作戦をメテオラは嬉々として話した。
 このような作戦立案にこなれているような気がしたのは、テラの気のせいではなかったらしい。
 メテオラの作戦を聞き、スバルは神妙な顔で反対した。

「またいつものじゃないか」
「定番と言ってほしいね。大体、それならスバルもでしょ」

 メテオラもスバルも譲る気はないようだ。
 スバルの肩かけ鞄にも、三部屋まとめてどうこうできるアイテムは入っていないのか。
 というテラの視線にムッとしてスバルは答える。

「まさか、ボクを見くびっているんじゃないだろうね? 違うよ。これ以上は被害が拡大するの。これからもここをそれなりに使うために、残しておいた方がいいと思うからとりあえず催眠ガス使おう、っていうのがプロジェクト:プレアデス。メテオラは一部屋ごとに爆弾で吹っ飛ばそうっていう安直な作戦。ここで爆弾なんか使ってごらんよ。下の階層にどんな影響が出るかわからない」

 実際、通信機の向こうでミーティ・アイが反対の声をあげている。
 ヘリオスから返事がないが、席を外しているのだろうか。
 テラには、とある考えがあった。
 それをどうにか言葉にしようと、熱を帯びそうなほどに思考を回す。

「…………ひとつ、考えがある。なるべく犠牲を出さないで、なるべく破壊が最小限のやつ」

 メテオラとスバルは、考え込むテラの様子ににんまり笑った。

「楽しくなってきた!」
「聞かせてもらおーじゃん」

 テラはつたないながらも言葉にした。
 いましたいことを。
 少し考えの甘いところは、メテオラとスバルでサポートして詰めていく。

「……ごめん、作戦立案なんてはじめてで」
「いいの! 気にしないで作戦決めよ!」

 メテオラは楽しそうにテラの話を聞く。
 スバルもやれやれと肩をすくめて、使えそうな道具をいくつか用意した。

「これは、テラがトドメって思った時に使えよ」

 一発の、狙撃用の銃弾が渡される。
 その弾丸はずっしりと重く、いま任されている責任そのもののように思えた。
 それをぎゅっと握りしめ、はっきりと伝える。

「任せろスバル。絶対に外さない」

 メテオラはそれを見て、うずうずと楽しそうにしていたが、我慢できなくなったのか腕を高々と突き上げ作戦名を叫んだ。

「プロジェクト:テラ、開始だぁ!」

 △▼△▼△▼△▼△

 プロジェクト:テラ。
 まず最初に陽動と実行に別れる。
 今回はテラがスバルとメテオラから離れるかたちになる。
 メテオラは楽しそうに手を振りながら、三つの部屋の方へ向かっていく。

「じゃあ陽動してくるね!」
「ま、この状況が既に陽動って言ったらそうだよな」

 スバルは仕方なさそうに笑って、メテオラのあとについていく。
 陽動組がやることは簡単だ。まっすぐ道を開けてくれればいい。
 ミーティ・アイの解析によれば、最後の、洗脳装置がある部屋を含めて三つの部屋が並んでいるらしい。
 それぞれ傾斜がついていて、ガスなど空気が流れるような兵器が充満するには手間がかかるらしい。
 
 だから正面突破だ。

 メテオラたちにはまっすぐ洗脳装置を目指してもらう。
 単純な攻撃だけで壊せれば御の字だが、この先の兵士は内地で働けるよう努力した者たちだ。
 きっとそうもいかないだろう。

 テラは固く決意する。
 今度こそ、家族を取り戻す。
 ふたりと反対方向にテラは駆け出した。
 目指すは、生活棟の屋上だ。

 「あっテラ!」

 労働棟二階層まで一気に駆けおりれば、そこにはルナたちがいた。
 彼らはもう少しで指令部に突入しようとしていたので慌てて止めた。
 彼らもこちらが作戦決行中だと聞くと、おとなしく生活棟で立てこもる方に作戦を変えた。
 ルナはどこで手に入れたのか、サルドニクスの国旗をマントのように身に付けていた。

「……マントは、どうしたんだ?」
「正しい秩序を取り戻すためにって身に付けてるの。……弾除けにもなるよ」

 こっそり呟いてクスクスと笑っている。
 テラは狡猾な妹に舌を巻いた。
 確かにサルドニクスに忠誠を誓った兵士は、旗を撃ちかねない状況になった場合一瞬躊躇するかもしれない。
 何せ国家への反逆の意思と受け取られかねないからだ。

「母さんはどうしてる?」
「……まだ色々言ってるよ。四階層のひとたちはみんな洗脳されてるみたい。……本当に、人を変えちゃう装置なんてあるの?」

 ルナの疑問ももっともだ。もし兵器を壊しても戻らなかったら。
 そんな嫌な予感がよぎる。
 それでも。

「俺は、みんなを信じるよ」

 その言葉にルナは大きく頷いた。
 晴々とした、知っているルナの、自信に満ちた笑顔だった。

「わかった。テラが信じるなら、私も信じる。母さんが元に戻るってね!」

 ルナとはそこで別れた。
 彼らはもう、どこでも生きていけるくらいの元気を取り戻しているように見えた。

 しかし、テラはわかっていた。
 ルナたちの元気がただの空元気で、もうしばらくすれば空腹に耐えかねて勢いが落ちてくる。
 だから早く解決しなければ。
 テラは、全力で走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...