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「サイナリィ様は私のお店にも出資してくださって、公私共に頭が上がらない方ですわ」
「そう、なんですか…」
「ええ!娘の礼儀作法も教えてもらっていますの!」
マイナの話は続く。
「はじめは断られたのですが、私は商人でしょう?諦めは悪いのよ?しつこく何度もお願いしましたの。そうしたら漸く引き受けてくださって」
止まらないマイナの話を半分は聞き流しながらチラリとレオノーラを見れば、彼女は慣れているらしく、記憶にある淑女の微笑を浮かべていた。
そうだ、レオノーラはどんな話でもこうしていたな。と心で呟く。
「…マイナ様、あちらの方々がお話したがっているようですわ」
レオノーラが示した先には招待客の数人がチラチラとこちらを伺っていた。
「あら、すっかりサイナリィ様とのお話しに夢中になってしまって…」
「かまいませんわ、私もマイナ様とお話出来て有意義な時間を過ごせましたもの」
「でしたら今度お店にもいらして?お待ちしておりますわ」
「ええ、機会がございましたら」
レオノーラの返事に気を良くしたようで、マイナはパタパタと忙しなく先程見やった数人の方へと向かっていく。
その背を見送り、残された二人の間に微妙な空気が流れる。
「マイナ様は話し出すとなかなか止まらないのですわ、良い方ですし、私がこの国に来たばかりの頃は本当にお世話になりましたの」
レオノーラ自らがマイナとの関係を話し出した。
来たばかりの頃?ということは20年近く前ということか。
「腕は良いのにチャンスに恵まれなかったマイナ様に、ほんの少しアドバイスをして出資をしたらあれよあれよという間にここまで大きな商店にしたのです」
ほんの少しと言うが、頭のいいレオノーラのことだからそれの重みが違うのだろう。
「はじめは私の素性なんて知らなかったようですわ、それを知った時の驚きようは…、マイナ様は忘れてもらいたい過去のようですが」
口元に手を当て「ほほ」と笑う様は貴婦人だ、「そういえばあなたの紹介を忘れてましたわね、相変わらずおっちょこちょいですわ」と無作法も気にならない様子は2人の関係性をよく現している。
「今日はどうしてこちらに?」
思いがけない再会に戸惑ったのはカイルだけではないようだ。
「…あ、あぁ。父が招待されたのだけど、長旅は難しいから、僕が名代で」
「そうでしたの、候爵はお元気かしら?」
「少し弱ってきたけどまだまだ元気だよ。そろそろ兄に爵位を譲ることを考えているそうだ」
「ではケビン様が?」
「ああ、すっかり落ち着いて侯爵家の当主の覚悟ができているようだよ」
ケビンとはカイルの長兄、ミリアーヌの処刑を伝えた冷静な次兄とは違い、熱血で情に熱い男だった。
「まあ、あの猪突猛進を体現したようなケビン様が?」
「そうなんだ、僕も驚いてるよ」
ケビンは侯爵家の長男として生まれなければ騎士になっていたと公言するくらい武に長けていた。
あの戦争でも率先して前線に出ようとして周囲から止められたほどだ。
今となっては止めてくれた周囲に感謝しかない。
「そう、なんですか…」
「ええ!娘の礼儀作法も教えてもらっていますの!」
マイナの話は続く。
「はじめは断られたのですが、私は商人でしょう?諦めは悪いのよ?しつこく何度もお願いしましたの。そうしたら漸く引き受けてくださって」
止まらないマイナの話を半分は聞き流しながらチラリとレオノーラを見れば、彼女は慣れているらしく、記憶にある淑女の微笑を浮かべていた。
そうだ、レオノーラはどんな話でもこうしていたな。と心で呟く。
「…マイナ様、あちらの方々がお話したがっているようですわ」
レオノーラが示した先には招待客の数人がチラチラとこちらを伺っていた。
「あら、すっかりサイナリィ様とのお話しに夢中になってしまって…」
「かまいませんわ、私もマイナ様とお話出来て有意義な時間を過ごせましたもの」
「でしたら今度お店にもいらして?お待ちしておりますわ」
「ええ、機会がございましたら」
レオノーラの返事に気を良くしたようで、マイナはパタパタと忙しなく先程見やった数人の方へと向かっていく。
その背を見送り、残された二人の間に微妙な空気が流れる。
「マイナ様は話し出すとなかなか止まらないのですわ、良い方ですし、私がこの国に来たばかりの頃は本当にお世話になりましたの」
レオノーラ自らがマイナとの関係を話し出した。
来たばかりの頃?ということは20年近く前ということか。
「腕は良いのにチャンスに恵まれなかったマイナ様に、ほんの少しアドバイスをして出資をしたらあれよあれよという間にここまで大きな商店にしたのです」
ほんの少しと言うが、頭のいいレオノーラのことだからそれの重みが違うのだろう。
「はじめは私の素性なんて知らなかったようですわ、それを知った時の驚きようは…、マイナ様は忘れてもらいたい過去のようですが」
口元に手を当て「ほほ」と笑う様は貴婦人だ、「そういえばあなたの紹介を忘れてましたわね、相変わらずおっちょこちょいですわ」と無作法も気にならない様子は2人の関係性をよく現している。
「今日はどうしてこちらに?」
思いがけない再会に戸惑ったのはカイルだけではないようだ。
「…あ、あぁ。父が招待されたのだけど、長旅は難しいから、僕が名代で」
「そうでしたの、候爵はお元気かしら?」
「少し弱ってきたけどまだまだ元気だよ。そろそろ兄に爵位を譲ることを考えているそうだ」
「ではケビン様が?」
「ああ、すっかり落ち着いて侯爵家の当主の覚悟ができているようだよ」
ケビンとはカイルの長兄、ミリアーヌの処刑を伝えた冷静な次兄とは違い、熱血で情に熱い男だった。
「まあ、あの猪突猛進を体現したようなケビン様が?」
「そうなんだ、僕も驚いてるよ」
ケビンは侯爵家の長男として生まれなければ騎士になっていたと公言するくらい武に長けていた。
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今となっては止めてくれた周囲に感謝しかない。
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