Epitaph 〜碑文〜

たまつくり

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どんな国でも上流階級というのは存在し、そういう集いも存在する。

ドルトミルアン国に赴いた表向きの用事をすませるため、カイルはとある夜会に出席していた。

主催者はとある洋服屋の女性店主マイナ・クールド、彼女は大量生産を実現させたかなりのやり手だ。

彼女はそれだけではなく、食物に嗜好品まで様々な品物を取り揃えた大型店舗の出店を考えているらしい。

「ザダ王国のシガーは主人が大好きで、ぜひとも繋がりを持ちたいと言ってますの」

枯渇しそうな資源から脱却するため、戦後ザダ王国はシガーの製造を始めた。

それはコーウェル侯爵家が中心となってすすめられた事業で、少しずつだが周辺諸国に知られる特産品となっている。

「もともと採られていた岩塩はどうなりましたの?うちの主人は大変なグルメで…、ザダ王国の塩を使った料理は一味違う!と」

実は細々とだが岩塩の採掘は行われていて、愛好家も少なからずいる。希少性を全面に打ち出したことが功を奏したのだ。

「ですからぜひ!新しいお店にシガーと塩を卸していただけないかしら?いえ、量はそこまで多くなくていいのですわ」

希少性を強調させるのか、とカイルは頭の中で計算を始める。どれだけ売れば元が取れるか?品質はどれくらいのものを?それにしてもマイナは一方的に話し続けて、カイルは相槌を打つだけになってしまう。

「そうだわ、紹介したい方がいるの。こちらへいらして?」

マイナの突然の提案に少々面食らいながらも、培った貴族のあしらいでカイルは促されるまま着いていく。

「これから紹介する方はね、とある王国の高貴な血筋の方なのよ」

ピクリ、とカイルの指が反応する。

「足がお悪いので杖をお使いなんですが、そんなことは微塵も感じさせない所作の美しい方ですの」

まさか、とカイルは視線を彷徨わせる。

「だから礼儀作法を娘に教えてもらえないかとお願いしましたの」

ドクドクと心臓が脈打っているのをしっかりと自覚できる。

「はじめは断られたのですが、何度もお願いしてなんとか引き受けてくださいましたの」

そして、まさかが確実となり目の前に現れた。

「ご紹介しますね、サイナリィ・マグドロス様です」

つい先日会ったばかりのレオノーラがそこにいた。
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