Epitaph 〜碑文〜

たまつくり

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概ね仕事も順調に熟せたカイルは、成果を纏めるため宿屋に籠もっていた、これは父や次兄ナキスに提出するための報告書も兼ねている。

細部まで拘る二人を納得させるものを作成しなくてはならないのは毎回骨が折れるが、こうして自らの行動を書き出していけば反省点も見つけやすい。

大体終わったところで、顔を上げたカイルは眉間を揉み込む、最近目が悪くなってきたと感じている。年齢を考えるとどうしようもないことなのだが、少しでも抗いたいのは仕方ないことだろう。

お互い歳をとった、それがレオノーラと再会した時に抱いた第一印象だった。

ドルトミルアン王国で過ごす時間が増えていくにつれレオノーラに再会したときのような必死さはなくなっていた。頭が冷えたのか、あの時は愛娘のために気が急いていた。

改めて考えると、カイルはレオノーラに非常識なことをしてしまったと反省していた。いくら娘可愛さとはいえ、あんなことを聞いてはいけなかった。

カイルがレオノーラを訪ねた理由は何かしらアドバイスが欲しいということもあるが、最大の理由は娘の礼儀作法をレオノーラに教えて欲しいということだった。

先日のマイナの話から分かるように、レオノーラは礼儀作法の講師として相当な名声を得ている。

レオノーラの教え子の中でも有名なのがドルトミルアン国で外務大臣に就任したシェイラ・モールだろう。二十五歳という若さに加え女性として初の要職に就いた彼女は、孤児院で育ったというバックボーンもあり一躍時の人となった。

そのシェイラは就任会見で自分をここまで導いてくれた『サイナリィ・マグドロス』に最大の感謝を伝える、と語った。

元々発展著しいドルトミルアン国、そして共和制が成功した国として注目を浴びていた。

そこで挙げられた名を報道各社はこぞって調べ、『サイナリィ・マグドロス』が孤児院で教師をしている女性だと突き止めた。それと共に『サイナリィ・マグドロス』がとある国の王族出身だということも。

共和制で発展を遂げたドルトミルアン国で、君主制の象徴ともいうべき王族に感謝を伝えるなどと!という批判が上がり収集をつけるためなのだろうか、とうとう『サイナリィ・マグドロス』が表舞台に立つことになった。

多くの報道陣が待ち構える中、彼女は杖をつきながらも記者会見の場に姿を現し、堂々と質問に答えていった。

─王族というのは本当なのか?─
王族です、王位継承権を放棄しておりますので」

─ドルトミルアン国で孤児院に勤めることになったきっかけは?─
「ドルトミルアン国に来たばかりの頃、大変親切にしていただいた方が孤児院を運営していたからです」

─何を教えているのか?─
「主に礼儀作法、読み書き計算です。幸いにして教育には困らない育ちでしたので、私が教えられることは全て教えております」

─ドルトミルアン国を君主制にしたいといった願望はあるのか?─
「まったくございません、大事なのは国民の生活です。共和制でそれが守られるのならば変える必要がありませんから」

記者会見は『サイナリィ・マグドロス』がドルトミルアン国の国民としての立場を明らかにし、彼女の教養の深さと覚悟が見て取れるものになり、そして同時に、あのシェイラ・モールを育て上げたという名声を得た。

問答は写真と共に新聞の一面を飾り、それが少し遅れてザダ王国にもたらされた。
    
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