Epitaph 〜碑文〜

たまつくり

文字の大きさ
11 / 30

11

しおりを挟む
概ね仕事も順調に熟せたカイルは、成果を纏めるため宿屋に籠もっていた、これは父や次兄ナキスに提出するための報告書も兼ねている。

細部まで拘る二人を納得させるものを作成しなくてはならないのは毎回骨が折れるが、こうして自らの行動を書き出していけば反省点も見つけやすい。

大体終わったところで、顔を上げたカイルは眉間を揉み込む、最近目が悪くなってきたと感じている。年齢を考えるとどうしようもないことなのだが、少しでも抗いたいのは仕方ないことだろう。

お互い歳をとった、それがレオノーラと再会した時に抱いた第一印象だった。

ドルトミルアン王国で過ごす時間が増えていくにつれレオノーラに再会したときのような必死さはなくなっていた。頭が冷えたのか、あの時は愛娘のために気が急いていた。

改めて考えると、カイルはレオノーラに非常識なことをしてしまったと反省していた。いくら娘可愛さとはいえ、あんなことを聞いてはいけなかった。

カイルがレオノーラを訪ねた理由は何かしらアドバイスが欲しいということもあるが、最大の理由は娘の礼儀作法をレオノーラに教えて欲しいということだった。

先日のマイナの話から分かるように、レオノーラは礼儀作法の講師として相当な名声を得ている。

レオノーラの教え子の中でも有名なのがドルトミルアン国で外務大臣に就任したシェイラ・モールだろう。二十五歳という若さに加え女性として初の要職に就いた彼女は、孤児院で育ったというバックボーンもあり一躍時の人となった。

そのシェイラは就任会見で自分をここまで導いてくれた『サイナリィ・マグドロス』に最大の感謝を伝える、と語った。

元々発展著しいドルトミルアン国、そして共和制が成功した国として注目を浴びていた。

そこで挙げられた名を報道各社はこぞって調べ、『サイナリィ・マグドロス』が孤児院で教師をしている女性だと突き止めた。それと共に『サイナリィ・マグドロス』がとある国の王族出身だということも。

共和制で発展を遂げたドルトミルアン国で、君主制の象徴ともいうべき王族に感謝を伝えるなどと!という批判が上がり収集をつけるためなのだろうか、とうとう『サイナリィ・マグドロス』が表舞台に立つことになった。

多くの報道陣が待ち構える中、彼女は杖をつきながらも記者会見の場に姿を現し、堂々と質問に答えていった。

─王族というのは本当なのか?─
王族です、王位継承権を放棄しておりますので」

─ドルトミルアン国で孤児院に勤めることになったきっかけは?─
「ドルトミルアン国に来たばかりの頃、大変親切にしていただいた方が孤児院を運営していたからです」

─何を教えているのか?─
「主に礼儀作法、読み書き計算です。幸いにして教育には困らない育ちでしたので、私が教えられることは全て教えております」

─ドルトミルアン国を君主制にしたいといった願望はあるのか?─
「まったくございません、大事なのは国民の生活です。共和制でそれが守られるのならば変える必要がありませんから」

記者会見は『サイナリィ・マグドロス』がドルトミルアン国の国民としての立場を明らかにし、彼女の教養の深さと覚悟が見て取れるものになり、そして同時に、あのシェイラ・モールを育て上げたという名声を得た。

問答は写真と共に新聞の一面を飾り、それが少し遅れてザダ王国にもたらされた。
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

処理中です...