Epitaph 〜碑文〜

たまつくり

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「他人事、ですか?そうですわね。私はあの邸宅に思い入れはありませんから」

「君が生まれ育った場所だろう?」

「母がまだ存命のときは、ですね。それ以降は離れで生活しておりましたし、王太子妃教育で王宮で過ごすことが多かったので」

「そう、だったのか?」

「ええ」

それきりレオノーラは再びペンを走らせる。

なんとなく居心地が悪くなったカイルは空になったティーカップに自らでお茶を注ぐ。その様はかなり手慣れている。

「あら?アルキス伯爵は給仕をされるのですか?」

抜け目のないレオノーラだ、見逃すはずがない。

「はは、手慣れたものだろう?もう貴族なんて名ばかりだからね。自分のことは自分でするようになったよ」

「そうでしたの…」

今度はレオノーラが沈黙する番だ、戦後ザダ王国を離れていた彼女にとって寝耳に水か。

「戦争責任を問われなかった貴族家もなんらかの影響は受けてるからね、前のように上げ膳据え膳で生活なんてできないよ」

それが現実だ、誰もが四苦八苦して新しい生活に慣れていった。

残った貴族家の多くが転封を命じられ、何もかも0からのスタートを余儀なくされた。

男は身なりに気遣う暇があれば領地の様子を見に行った。

女は暇を持て余すことがどれだけ贅沢だったか知った。

それらもようやく笑い話にできるまでになったが。

「仕方ありませんわ、自分達の勝手な都合で戦争を起こしたんですから。国が残っただけでも御の字ですわ」

「辛辣だな…」

「事実ですもの」

確かに事実だ、資源が枯渇しそうだからと他国の資源を狙ったのだ、まずは自分達で模索すればよかったのだ。

現に新たな特産品を生み出しているのだから。

「その結果、多くの命が失われましたわ」

「ああ、僕の親友達も連座で処刑されし、ミリアーヌも巻き込まれたな」

「…巻き込まれた?」

カイルの言葉をレオノーラは繰り返す、さも不思議そうに。

「おかしなことおっしゃるのね?あの子は巻き込まれたわけではございませんわ。罪人として処刑されただけです」

「…っ?!」

カイルにとって聞き捨てならない言葉が耳に入ってきた。それは激昂するには十分だった。
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