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ナキスが案内したのは公園内にあるカフェだった。そしてそこはカイルも見覚えがあった。
「ナキス兄さん、ここって?」
「レオノーラ嬢が住んでいた離れだ、本宅とは離れているからヤルシュ王国の領事館として使うことはないから俺が買い取ったんだ。公園内にあるからそのまま有効活用しようと思ってね、カフェを開いたんだ」
「そう、なんだ…」
「俺がここにカフェを開いてるなんてお前は知らなかっただろう?」
「うん、知らなかったよ」
「仕方ないか、お前はカージリアン公爵家のことは一切耳にしたくなかっただろうから」
「そうだね…」
かつてカージリアン公爵邸の敷地内に建てられていた離れ、レオノーラという高貴な身分の令嬢が住むには手狭だが、専属侍女もついておらず、生活のほとんどを自らで行っていたというから十分な広さだったのだろう。
しかしカイルはここにレオノーラが住んでいたことを知らなかった。彼女が離れに住んでいることは知っていてもその離れの場所までは知らなかったのだ。
ずいぶんと辺鄙な場所にある離れを不思議に思いミリアーヌにたずねたのだ、ミリアーヌは「ここは物置よ」と答えたのを覚えている。カージリアン公爵家の規模を考えたらこれくらいの物置があってもおかしくはないと納得したのだ。
レオノーラが住んでいるのに物置とはね…。
カイルの中のミリアーヌが完全に崩れていた、それと同時に自身があまりに情けなく、ナキスに気づかれないよう溜め息をもらした。
それきり会話は途切れ、それはカフェの2階にある3部屋あるうちの一室に通されるまで続いた。
通された部屋は広めのテーブルセットとお揃いのチェストが置けるくらいの広さで少し手狭だ。カイルの目線の先に出入り口ではない扉があることからここは侍女控室で、扉の向こうが主賓室だろうか。
ナキスが給仕に指示したのか、ややしてカイルにはダージリン、ナキスにはレオノーラが好む例の青いお茶が出された。
「それ、レオノーラが好きだと言ってたお茶かな?青くてびっくりしたよ」
「これか?確かにレオノーラ嬢ならこちらでも飲む機会があっただろうな、なんせヤルシュの特産品だからな、俺も初めて見た時は驚いたな、飲んでみるとクセになる」
そういえばとカイルは思い出した、ナキスは王太子の留学に随行していたと。その経験から語学に堪能な彼は戦後復興の先陣を切った。
多岐に渡る事業を展開しては雇用を増やし、利益は社会に還元すると言っては派手に遊んだ。
その豪快さは『コーウェルの殿様』と異名がつけられるほど。
生涯独身を公言している彼は『独身貴族だ』と常日頃から自称している。
「フランシーヌはどうしている?」
「だいぶ落ち着いたよ、お友達から誘われたお茶会なら出席するようになったんだ」
「そうか、閉じこもってばかりじゃ身体にも良くないからな。何か欲しい物は言ってなかったか?」
「まだそこまで考えられないみたいだね」
「わかった、でも欲しい物があったら遠慮なく言ってほしいと伝えておいてくれ」
「伝えておくよ、ナキス兄さんありがとう」
ナキスは自身に子どもがいない分、甥姪をことさら可愛がっていて、フランシーヌの婚約破棄も誰よりも怒っていたのがナキスだ。
「ドルトミルアン国はどうだった?こちらとは違うから戸惑ったことが多かったんじゃないか?」
その言葉をきっかけにしばらく二人はヤルシュ王国とドルトミルアン国の違いに話の花を咲かせる。
「やっぱり共和制というのはなかなか理解できないな、絶対的な指導者が存在しなければ政治も経済も混乱する、そうなると一番被害を受けるのは国民だ」
「その指導者を国民が決めるため選挙というものが存在しているんだろうけど、正しく導けるかどうかを見極めるにも知識は必要だ、それを国民が身につけているのだろうか?」
ナキスの疑問は最もで、カイルも疑問に感じていたことだった。
ただドルトミルアン国に行ってからそれらは払拭されたと言ってもいい。
何気なく通った市場では誰もが簡単に金銭の計算を行い、立ち寄ったカフェでは女性が一人でお茶を飲んでいた。
ザダ王国では教育がそこまで普及しておらず、未だに物々交換を行っている壱馬もあるという、ましてや女性一人でカフェに入るなど考えられない。
それをナキスに言うと、
「女性の権利というものが当たり前のように存在しているのか、素晴らしいな」
と、ポツリと呟いた。
「レオノーラ嬢の活躍も一翼を担ったのかもな…」
かつての仲間を思うような言葉にカイルは何も言えなかった。
「ナキス兄さん、ここって?」
「レオノーラ嬢が住んでいた離れだ、本宅とは離れているからヤルシュ王国の領事館として使うことはないから俺が買い取ったんだ。公園内にあるからそのまま有効活用しようと思ってね、カフェを開いたんだ」
「そう、なんだ…」
「俺がここにカフェを開いてるなんてお前は知らなかっただろう?」
「うん、知らなかったよ」
「仕方ないか、お前はカージリアン公爵家のことは一切耳にしたくなかっただろうから」
「そうだね…」
かつてカージリアン公爵邸の敷地内に建てられていた離れ、レオノーラという高貴な身分の令嬢が住むには手狭だが、専属侍女もついておらず、生活のほとんどを自らで行っていたというから十分な広さだったのだろう。
しかしカイルはここにレオノーラが住んでいたことを知らなかった。彼女が離れに住んでいることは知っていてもその離れの場所までは知らなかったのだ。
ずいぶんと辺鄙な場所にある離れを不思議に思いミリアーヌにたずねたのだ、ミリアーヌは「ここは物置よ」と答えたのを覚えている。カージリアン公爵家の規模を考えたらこれくらいの物置があってもおかしくはないと納得したのだ。
レオノーラが住んでいるのに物置とはね…。
カイルの中のミリアーヌが完全に崩れていた、それと同時に自身があまりに情けなく、ナキスに気づかれないよう溜め息をもらした。
それきり会話は途切れ、それはカフェの2階にある3部屋あるうちの一室に通されるまで続いた。
通された部屋は広めのテーブルセットとお揃いのチェストが置けるくらいの広さで少し手狭だ。カイルの目線の先に出入り口ではない扉があることからここは侍女控室で、扉の向こうが主賓室だろうか。
ナキスが給仕に指示したのか、ややしてカイルにはダージリン、ナキスにはレオノーラが好む例の青いお茶が出された。
「それ、レオノーラが好きだと言ってたお茶かな?青くてびっくりしたよ」
「これか?確かにレオノーラ嬢ならこちらでも飲む機会があっただろうな、なんせヤルシュの特産品だからな、俺も初めて見た時は驚いたな、飲んでみるとクセになる」
そういえばとカイルは思い出した、ナキスは王太子の留学に随行していたと。その経験から語学に堪能な彼は戦後復興の先陣を切った。
多岐に渡る事業を展開しては雇用を増やし、利益は社会に還元すると言っては派手に遊んだ。
その豪快さは『コーウェルの殿様』と異名がつけられるほど。
生涯独身を公言している彼は『独身貴族だ』と常日頃から自称している。
「フランシーヌはどうしている?」
「だいぶ落ち着いたよ、お友達から誘われたお茶会なら出席するようになったんだ」
「そうか、閉じこもってばかりじゃ身体にも良くないからな。何か欲しい物は言ってなかったか?」
「まだそこまで考えられないみたいだね」
「わかった、でも欲しい物があったら遠慮なく言ってほしいと伝えておいてくれ」
「伝えておくよ、ナキス兄さんありがとう」
ナキスは自身に子どもがいない分、甥姪をことさら可愛がっていて、フランシーヌの婚約破棄も誰よりも怒っていたのがナキスだ。
「ドルトミルアン国はどうだった?こちらとは違うから戸惑ったことが多かったんじゃないか?」
その言葉をきっかけにしばらく二人はヤルシュ王国とドルトミルアン国の違いに話の花を咲かせる。
「やっぱり共和制というのはなかなか理解できないな、絶対的な指導者が存在しなければ政治も経済も混乱する、そうなると一番被害を受けるのは国民だ」
「その指導者を国民が決めるため選挙というものが存在しているんだろうけど、正しく導けるかどうかを見極めるにも知識は必要だ、それを国民が身につけているのだろうか?」
ナキスの疑問は最もで、カイルも疑問に感じていたことだった。
ただドルトミルアン国に行ってからそれらは払拭されたと言ってもいい。
何気なく通った市場では誰もが簡単に金銭の計算を行い、立ち寄ったカフェでは女性が一人でお茶を飲んでいた。
ザダ王国では教育がそこまで普及しておらず、未だに物々交換を行っている壱馬もあるという、ましてや女性一人でカフェに入るなど考えられない。
それをナキスに言うと、
「女性の権利というものが当たり前のように存在しているのか、素晴らしいな」
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かつての仲間を思うような言葉にカイルは何も言えなかった。
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