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毎朝のルーティーンで新聞を読んでいるサイナリィは、紙面の端の小さな記事に目を留めた。
『ザダ王国、建国記念日を華やかに彩る』
そういえばそうだったな、と思い出した。
今でこそ華やかな記念日となっているが、同時に多くの戦犯が処刑された日でもあった。記事には一切触れられていないことに心がザワザワする。
とっくに過去のことにしたというのに、幼馴染みに会ってから何故かこういうことが増えてきた。
ふと窓から空を見上げると雲ひとつない青空が広がっている。
「…まるであの日のようね」
誰にも拾われることのない独り言をポツリと呟く。
サイナリィにとってあの日とは戦争が終わった日でもなく多くの戦犯が処刑された日でもない、義妹に処刑が伝えられた日。
王弟である父は積極的に戦争に関わっていたと見做され処刑が決まっていた。だからミリアーヌも連座で処刑を言い渡されると覚悟をしていた様子だった。
ただ連座であればある程度の敬意を払われることが多く、処刑方法は毒杯を仰ぐことになるだろうと。
しかし告げられたのは絞首による処刑、その瞬間、一気に顔色が青くなったミリアーヌはギクシャクと泳ぐ目線を文官に向けた。
「…おかしいですわ。どうしてわたくしが、どうして…?」
たどたどしく「間違っている」と訴えるが、それに同意する者はいなかった。
「あなたは『王族から物を盗んだ罪』で処刑となります、連座ではありません」
冷静な文官は事実のみを伝えた。
「わたくしは何も盗んでなどおりません!何かの間違いです!」
「いいえ、あなたは盗んでいます」
文官は机に並んでいる多くのアクセサリーの内の一つを手に取ると「これに見覚えは?」と事務的に言った。
「それは、わたくしのネックレスですわ。黒髪に似合うからとお母様がくれたのです」
「この宝石はレオノーラ様の母親が嫁入りの際に持って来た物です」
「…え?」
「あなたの母親はレオノーラ様からこれを奪い、あなたに与えたということです」
「そ、そんな!わたくしはそういう物だとは知らなかったのです!」
「それと、こちらは?」
たくさんの細かい宝石が散りばめられた髪飾りを見せられたミリアーヌは、はっ、として表情を変えた。
「それは…、お義姉様から借りたのですわ」
「確かに「借りる」と言ったそうですが、そのまま何年もあなたの手元にあるのはどうしてですか?」
「返すのを忘れただけですわ!」
「おや?あなたはこれを着けて何度もパーティーに出席してますよね?褒められるたびに「いい物を見つけた、お気に入りなの」だと言っていたそうですが?」
「…褒められたのが嬉しくて、つい言ってしまっただけですわ」
「一言もレオノーラ様の物だとは言ってませんよね、あたかも自分の物だと」
「お義姉様は返せとは言いませんでしたわ、だからもういらないのだと思っておりました、返すよう言われたら返すつもりでしたわ」
「返す機会がなかったと」
「そ、そうですわ!」
「では、ここにあるもの全て返す予定だったと?」
ズラリと並んだアクセサリー、どれも見事な細工が施された一級品だ。
「こ、これは…」
ミリアーヌには全て見覚えがあった。しかし先程の髪飾り以外は母親がくれた物だった。
「多少のリフォームはされていますが、これらはレオノーラ様の母親が遺した物です。本来の持ち主はレオノーラ様です。あなたはこれらを身につけパーティーに参加していた。ああ、借りた、なんて言いませんよね?借りたにしては多すぎます」
「知らなかったのです、本当に知らなかったのです!どうか信じてください!」
悲鳴のような言い逃れに耳を貸す者は誰もいない。
「処刑は十日後です、せめてもの情でご両親と同日に施行されます」
文官の冷静な声でミリアーヌは牢へと連行された。
『ザダ王国、建国記念日を華やかに彩る』
そういえばそうだったな、と思い出した。
今でこそ華やかな記念日となっているが、同時に多くの戦犯が処刑された日でもあった。記事には一切触れられていないことに心がザワザワする。
とっくに過去のことにしたというのに、幼馴染みに会ってから何故かこういうことが増えてきた。
ふと窓から空を見上げると雲ひとつない青空が広がっている。
「…まるであの日のようね」
誰にも拾われることのない独り言をポツリと呟く。
サイナリィにとってあの日とは戦争が終わった日でもなく多くの戦犯が処刑された日でもない、義妹に処刑が伝えられた日。
王弟である父は積極的に戦争に関わっていたと見做され処刑が決まっていた。だからミリアーヌも連座で処刑を言い渡されると覚悟をしていた様子だった。
ただ連座であればある程度の敬意を払われることが多く、処刑方法は毒杯を仰ぐことになるだろうと。
しかし告げられたのは絞首による処刑、その瞬間、一気に顔色が青くなったミリアーヌはギクシャクと泳ぐ目線を文官に向けた。
「…おかしいですわ。どうしてわたくしが、どうして…?」
たどたどしく「間違っている」と訴えるが、それに同意する者はいなかった。
「あなたは『王族から物を盗んだ罪』で処刑となります、連座ではありません」
冷静な文官は事実のみを伝えた。
「わたくしは何も盗んでなどおりません!何かの間違いです!」
「いいえ、あなたは盗んでいます」
文官は机に並んでいる多くのアクセサリーの内の一つを手に取ると「これに見覚えは?」と事務的に言った。
「それは、わたくしのネックレスですわ。黒髪に似合うからとお母様がくれたのです」
「この宝石はレオノーラ様の母親が嫁入りの際に持って来た物です」
「…え?」
「あなたの母親はレオノーラ様からこれを奪い、あなたに与えたということです」
「そ、そんな!わたくしはそういう物だとは知らなかったのです!」
「それと、こちらは?」
たくさんの細かい宝石が散りばめられた髪飾りを見せられたミリアーヌは、はっ、として表情を変えた。
「それは…、お義姉様から借りたのですわ」
「確かに「借りる」と言ったそうですが、そのまま何年もあなたの手元にあるのはどうしてですか?」
「返すのを忘れただけですわ!」
「おや?あなたはこれを着けて何度もパーティーに出席してますよね?褒められるたびに「いい物を見つけた、お気に入りなの」だと言っていたそうですが?」
「…褒められたのが嬉しくて、つい言ってしまっただけですわ」
「一言もレオノーラ様の物だとは言ってませんよね、あたかも自分の物だと」
「お義姉様は返せとは言いませんでしたわ、だからもういらないのだと思っておりました、返すよう言われたら返すつもりでしたわ」
「返す機会がなかったと」
「そ、そうですわ!」
「では、ここにあるもの全て返す予定だったと?」
ズラリと並んだアクセサリー、どれも見事な細工が施された一級品だ。
「こ、これは…」
ミリアーヌには全て見覚えがあった。しかし先程の髪飾り以外は母親がくれた物だった。
「多少のリフォームはされていますが、これらはレオノーラ様の母親が遺した物です。本来の持ち主はレオノーラ様です。あなたはこれらを身につけパーティーに参加していた。ああ、借りた、なんて言いませんよね?借りたにしては多すぎます」
「知らなかったのです、本当に知らなかったのです!どうか信じてください!」
悲鳴のような言い逃れに耳を貸す者は誰もいない。
「処刑は十日後です、せめてもの情でご両親と同日に施行されます」
文官の冷静な声でミリアーヌは牢へと連行された。
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