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しおりを挟む青の国に来て6日目
まだカイン達は部屋から出てこない
レイドいわく、階段の近くまでモアさんの覇気が漂っていてそこから奥へ進めないらしい
獣人は自分より明らかに格上の人物が分かるらしく、喧嘩とかになったら負けるのが分かっているから回避しようとするらしい
おかげで、モアさんの部屋は来賓用(その中でも一番良い部屋)の為他の来賓用の部屋の掃除が出来ない状態らしい
…………いやぁ……早く番えばいいと思ってたけど、まさか弊害が生じるとは思いもしなかった
俺はこの国に来て2日目から、国の事を教わり始めた
レイドともう番ったし、青の国にこのまま住むことになるからだ
レイドが騎士団へ行く時は一緒に行き訓練を見せてもらったり、たまに俺も出来そうなことがあれば混ぜてもらった
それからこの国の重鎮達と顔合わせをしたりと毎日バタバタしていた
初日に家族の事をぶち撒けた俺は、何であんな事喋っちゃったんだろうと1人反省してたら、レイドは「ソウの事がまた1つ知れて嬉しかった。ソウは逃げたんじゃない、私に出会う為にここに来ただけ。ソウが苦しい時に側に居てやれて私は嬉しいよ。」
そう言われて気づいた
いくらこっちに来て二度と戻れないと言っても自分の中で、家族の出来事は終わりに出来てなかったのだと
家族の事を思い出すと胸が苦しくなるし、憎い気持ちも溢れてくる
そんな俺をレイドは優しく抱きしめ番の匂いで包んでくれる
もう家族に会う事は無いけど………俺は彼等の幸せを願える時は来ない気がする
「どうした?」
昼ごはんを食べた後、フカフカの絨毯に大きな柔らかいクッションを置きそれに凭れ食後の紅茶を飲んでいた
「ん??何が?」
「家族の事を考えていたんだろ?」
向かいにいたレイドが隣りに来る
「匂い変わった?」
「ああ。ほら、1人で溜め込まないで話して。」
あの日から、お互い何でも話すと約束した
良い事も悪い事も、どんな事でも話すと
「うん……俺さ、多分一生家族の事恨んでるんだろうなって…家族の幸せを願えないんだ。」
「………願う必要があるのか?」
「え?」
「ソウは家族に辛い思いをさせられてきた。それなのに『家族』と言うだけで幸せを願わないといけないのか?『家族』はお前の幸せを願った事があるのか?」
俺の幸せを……家族が願う?
「な……かったと…思う………」
「それはどうして?」
「…小さい頃からご飯とお金は与えて貰ってたけど、学校の行事には兄ちゃんと姉ちゃんのには行ってたけど、俺のには来てくれたことないし…
服とか勉強道具は貰った金で俺と弟と妹の分をやりくりして買ってたし…
高校…試験を受けて受かれば行ける学校に行く時は、学費を出してもらえなくて、成績優秀者になるしかなかった。
成績優秀者になれば学費が全額無料になる学校を選んで進学した。
16歳になったら少しだけ仕事ができるんだけど、その給料は弟や妹の小遣いや生活費に消えていった。
その頃になると俺達の食事は用意されてなくて…
俺の給料をやりくりして何とかなってた。
そして今年、必死に貯めたお金で大学に進学した。
来年は妹の高校進学がある。
それでも親はお金を出さないし、弟も仕事をしないで学校行って遊んで……」
「……なるほどな。本当にソウは頑張ったな…頑張りすぎだ………もっと早く出会えてたら良かったのに………」
ギュッと抱きしめてくれて、番の匂いで包んでくれる
「ソウ、お前が家族を憎む気持ちも分かるし、幸せを願えない気持ちも分かる。
というよりそう思うのは当たり前だ。」
「…当たり前?」
「そりゃそうだろう?
子を産んだ親は、子を産んだ責任があり成人するまでは必ず子育てをする。
もし子育てを放棄すれば、罪に問われる。
子供は1人では生きていけないのにそれを放棄すると言う事は子供を殺そうとしていると判断される。
病気や金銭面で子育てができない場合は国から援助がある。
…………子育ての放棄はそちらでは罪にならないのか?……こちらの世界での常識……なのか……?」
驚いた顔をするレイド
「いや……一応法律では取締があるよ。でも他人に知られない限り取締されることはないから……」
「近所に住む人は気づかなかったのか?ソウ達の現状に…」
「今の日本は隣に住んでるのがどんな人なのかさえ知らないのが普通なんだよ。
他の家族の事なんて誰も気にしない。
特に幸せそうに見える家はね。
両親も兄も姉も外面が凄くいい人達だったから。
…俺が居なくなって弟と妹はどうしてんのかな。」
憎いけど気にはなるんだ
不幸になれとは思わないけど、俺がした苦労を少しでも理解して欲しいと思ってしまう
「両親がそのままなら、ソウが頑張っていた様に自分達で働いて学校へ通うしかないだろうな。
ソウはしてきたんだ、できないなんて事はないだろう。自分が使う金の分だけ稼ぐんだから、ソウより楽だろ?」
「でも……兄ちゃんの事件もあるし…」
「ならソウのように家を出て自分だけで頑張ればいい。
親から愛されなくても、今までソウが親の代わりをしていたんだろう。
だから今まで働かなくても学校に通え、欲しい物を手にする事ができた。
でももう、ソウは私のモノだ。
もし向こうの世界へ戻る方法が見つかっても絶対に帰さない。
弟と妹は今まで楽をした分これからは自立して自分の足で歩いていけば良い。
ソウが犠牲になる必要はない。」
「レイド……」
出会ってまだ1月程しかたってないのに、どうしてこうも俺が欲している言葉を言ってくれるんだろう……
「ソウ、こちらの世界では家族という言葉は血の繋がりを差す言葉では無いと知っているか?」
「え?知らない。なにそれ??」
「私達の子供の作り方は種だと知っているだろう?」
「うん」
聞いた時すっげぇ衝撃的だった
「あの種は詳しく言えば種族の種と言うんだ。種族とは、獣化したら何の獣になるかと言うことだ。
昔は親と違う種族だと産まれたばかりの子を殺したり売り払ったり、種族差別があったらしい。」
「そんな……」
「だが当時召喚された賢者が言ったそうだ。『貴方方は間違っている。見た目が自分達と違うからという理由で全てを否定できるのなら、私は貴方達獣人全てを否定します。私には耳も尻尾もありませんから。私は小国へ行きます。彼等なら私を家族として受け入れてくれるでしょう。』とね。」
「ああ……確かに召喚された者は獣人ではないもんな…」
「賢者の言葉は獣人にとって衝撃的だった。初めて否定されたんだ。お前達は間違っているとも言われた。
そして獣人は考えた、賢者の言葉の意味を。
そして導き出した答えは『見た目や血の繋がりなどに囚われるのは愚かな事。そこに愛があれば誰でも家族になれる。良き友人になり、隣人となれる』だった。」
「…愛があれば家族になれる……か……」
「だから獣人の私から言えば、ソウが家族と呼ぶ者達は家族ではなくただの同居人にすぎない。」
まさかの言葉に面食らった
「ただの同居人…………」
ただの…同居人……
同居人……
ただ同じ家に住んでるだけの人………
あ…やばっ……………
「……クックックッ…………フフフッ……………」
笑いが……止まんない………
「…ソウ?」
「アハハハハハハ!!確かに!!ホントそれだよな!アハハハ!!」
ホント、ただの同居人だ
家族なんかじゃない
その言葉がストンと心の中に落ちて来て悩んでいた所にピタリと嵌った
「あー!!スッキリした!!」
「…ソウ………」
突然笑いまくった俺を心配げに見つめるレイドに自分から抱きついてキスをする
「レイドありがとう。俺自身、あの人達のこと家族って思ってなかったんだって気づいたよ。
愛してもいなかった。
だから憎く感じたんだ。
自分がしてる事は自分がしたくてしてる訳じゃない、もう嫌だ、逃げ出したいってずっと思ってたけど、向こうの世界では家族と言うのは大変な時こそ助け合うものって言われてるから……我慢しなきゃって思ってた。
でもそれが間違いなんだ。
愛のない家族は家族じゃない、ただの同居人。
いつまでもただの同居人の事を恨んでても時間の無駄だよな。」
ニコッと笑えば、レイドも微笑み返してくれる
「そうだな。ソウはもう私の家族だ。元同居人の事を考えるより本当の家族の事を考える時間の方が有意義だぞ?」
本当の家族…レイドが俺の家族…………
ブワァッと自分の匂いか一瞬で部屋に充満する
「ソウ!?」
レイドの言葉が本当に嬉しくて勝手にフェロモンが流れていく
「レイド愛してる!家族になってくれてありがとう!」
「こちらこそ……ソウ、愛してるよ」
匂いに当てられたレイドに組み敷かれ、そのままペロリと食べられた
おかげで午後の予定は全てキャンセルになってしまった
意図して匂いを出した訳じゃないけど……ここの廊下も通れなくしてごめんなさい……
お城で働く人達に迷惑をかけてしまったのだった
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