悪役令嬢とヤクザさん

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ドレスと女の戦い


「パーティー?」

それは夏が終わりかけの季節だった。

臣から、一緒に表家業のパーティーに出て欲しいとマリアは言われた。

「ああ。いつもは、親戚のおばさま方にパートナーを務めてもらっているんだが、今回はパーティーの日にちが早まってしまったせいで、おばさま方の都合がつかないんだ。」

臣はいつも、表家業では親戚の中から40~50代のマダムをパートナーとして連れている。
ただし、娘や姪が居ても、臣に縁談を持ってきたりせず、下心を持っていない親戚のみではあるが。
あと、臣に近づいてくる女を蹴散らしたり、縁談を持ちかけようとしてくる狸達も、返り討ちにできる聡明さも選考基準となる。
その為頼めるのが3人程しかおらず、基本的に彼女達がローテーションでパートナーを務めてくれる。
ある意味第二の母である。彼女達も臣や将を息子のように可愛がっている。

「そうでしたの。私で良ければご一緒させていただきますわ。どういったパーティーですの?」

2人でお茶をしつつ、詳しいパーティーの内容を確認する。

「今回のパーティーは、望月建設と高崎建設が、共同で商業施設を建設したんだ。
内装をうちが、外観を向こうがデザインし、設計はお互いの会社の建築士が共同で。
その完成を祝って、商業施設が一望できるホテルでのパーティーになる。」


「あの商業施設、完成いたしましたのね。確か3年前から始めた事業でしたわよね?」

「よく覚えてたね。いろいろな問題が起こって大変だったけど、ようやく完成したんだ。」

「おめでとうございます。パーティーはいつですの?」

「今度の日曜日になる。明日にでも、パーティー用のドレスを買いに行こう。もっと早くから一緒に行くことが分かっていれば、ドレスもオーダーメイドできたんだけど…」

臣がしゅんとするとマリアはフフッと笑う。


「問題ございませんわ。ドレスはどういった形がよろしいですか?」

「他の女がよってこない程、マリアの良さを引き立てるドレスが良いかな。」


ニッコリ笑う臣の笑顔は、本当に女に付きまとわれたくないと、ありありと書いてあった。

「臣様はどんなタキシードを着用されますの?」

「まだ決めてないんだよね。基本的にこの国では、タキシードのデザインはそこまでないし、お洒落をしたら、高崎建設の社長がまた姪を押して来そうだし。」

そう、臣は女性にモテるため今回も社長から息のかかった女性を紹介されていた。たまたま社長の姪が会社に来ていた時に、臣も会議で会社に来ており、姪が臣に一目惚れ。
社長は姪に頼まれて、最初に紹介した女ではなく、姪とのお見合い話を持ちかけてきた。
それはスッパリとお断りしたが、とてもしつこい。
街起こしの一環のプロジェクトな為、切り捨てる事もできず早や3年。
やっと切り捨てられると臣達は安堵していた。


「それなら、ドレスとタキシードは私に任せていただけません?」

「…マリアが選ぶってこと?」

「はい。公爵令嬢の知識、お見せいたしますわ。」

マリアはフフフフフッと楽しそうに笑ったのだった。






翌日、臣とマリアは望月家御用達のドレスとスーツの専門店に来ていた。

ここは世界各国から集められたデザインをタブレットで確認し、オーダーメイドで仕立ててくれる。
既製品の取り扱いもあり、店舗に在庫が無かろうと、すぐに取り寄せ翌日中には受け取れるのだ。

ドレスとタキシード以外にもスーツや小物やアクセサリーも全てが揃う。

いつも担当してくれているマネージャーの木谷とマリアが真剣に、ドレスとタキシードを選んでいる。
今回はマリアに全て任せる事にしたので、臣は手持ち無沙汰だ。

最初木谷にマリアを紹介すると、凄く驚いていた。
まず女性を伴っての来店が初めてだった事と、臣の女嫌いは周知の事実。
マリアに対して優しい笑みを浮かべ、彼女の好きなようにさせて欲しいとまで言われた。
隣同士に座り、女性の腰に手を回したまま優雅にお茶を飲む臣に、スタッフの中で偽物なのでは?なんて言われていた。


「ではこちらのドレスはこの部分に黒曜石を取り付けてワイヤーが目立たないようにいたしますね。
あと背中側ですが、どこまでこちらの生地を使われますか?」

「肩甲骨を綺麗に見せたいので……ここからここまで、こんな風に……」

マリアは既製品を少しリメイクするらしい。

臣は金額は気にせず好きにして良いと伝えてある。

「ではタキシードの方ですが……タイとこの部分はスカイブルーですね。シルバーはこちらで…柄はこちらで宜しかったでしょうか?」

「ええ、完璧よ。」

「では明日の夜までに仕上げますので、明後日に確認をお願いいたします。」

「ええ、よろしくね。」


納得の物ができたのか、マリアはニッコリと微笑んだ。

パーティー当日は、15時からのパーティーに備えて、朝からエステに行って、その後、髪と化粧は望月グループが経営する美容院で整えてもらう。

臣は午前中は仕事があるので、仕事が終わったらマリアと合流する予定だ。


店を出て、ボディーガードに守られながら、二人はショッピングをしてから帰ることにした。

秋物が出始めたので、偵察がてらぶらつくのだ。

服やアクセサリー、鞄や文房具などを見て回り、少し休憩する為カフェに入る。

その間も、臣はマリアをエスコートし続けた。
時に腕を組み、時にマリアの腰に手を回して。

マリアは、最初腰に手を回したエスコートを受けた時、向こうの世界では親密な関係じゃなければしない仕草だったので、顔を真っ赤にしていた。
しかし今では、隣に座ればいつも腰に手を回されているし、外を歩く時も、人が多い所では腕ではなく腰に手を回してのエスコートなので慣れてしまった。

カフェでは、先に注文をしてから好きな席に着くスタイルのようで、ボディーガードに挟まれつつ、マリアはケーキと熊のラテアートを注文した。
男三人はアイスコーヒーを注文する。

先にボディーガード一人が席を取りに行き、避難経路が確保できて、あまり目立たない奥の席に案内された。

ボディーガードは周りを警戒しながら休憩をとり、臣とマリアは、先ほど行ったお店の話で盛り上がっている。

突如ガタッと音を立てて二人のボディーガードが立ち上がり、誰かの行く手を阻んでいる。

「ちょっと!どいてよ!!」

声からして女らしいが、ボディーガードの二人で姿は見えない。

臣は振り向きため息をこぼした。

「何なの、あんた達!私を誰だと思ってるのよ!」

大きな声に、店内にいた人の視線を集めている。

臣はマリアとの楽しい会話を邪魔され、超絶不機嫌な顔をしている。
マリアは臣の表情を、また女に言い寄られそうな状況に苛立っていると勘違いした。

「臣様、ちょっとあしらってきますから、お待ちになって。」

マリアはそう言って立ち上がり、ボディーガードの間から顔を出した。

「……誰よあんた。」

女がマリアを睨む。

ボディーガードは、マリアを隠そうとするが、マリアは首を振り一歩前に出た。

「淑女がそんな大きな声を出すなんて、みっともなくってよ?」

頬に手を当て少しだけ首をかしげる。
キラキラと髪が揺れ、マリアの見た目も合わさって周りがザワつく。

「は?淑女っていつの時代よ…じゃなくて、あんた、私の臣とどういう関係!?」


「…わたしの臣……?貴女、臣の恋人かしら?」

マリアはわざと臣を呼び捨てにした。

「そ、そうよ!」

大きく頷く女に、マリアはウフフッと上品に笑う。

「何笑ってんのよ!」

マリアの態度に女が怒鳴る。

「嘘はもう少し、上手くついたほうがよろしくてよ?
臣が貴女のような女性を恋人にするわけがないわ。
臣はとてもセンスがあるの。自分に似合う高級な物しか必要としないのよ。ご存じなくて?」


「…は?」


「あら、はっきりと言わないと理解できないのかしら。臣は貴女のような下品な女性を恋人に選んだりしませんわ。
貴女、いくらピンク色がお好きでも、ご自分に似合う服を着た方がよろしくてよ。お年を召していらっしゃるのに、全身ピンクとフリルは頂けないわ。センスが無さすぎです。
そういった格好が許されるのは10代までの子供くらいですわ。
貴女はせめて差し色に使うとか、小物をピンクにするだけになさい。」

ピシャリとそう言えば、周りからクスクスと笑いが起きる。
皆聞き耳を立てているのだ。

「な…っ…失礼よ!」

「失礼なのは貴女よ?
突然押し掛けてきて怒鳴り散らすなんて、どんな教育を受けて育ったのかしら?
良い歳をして、自分の行いがマナー違反だと理解できないのかしら?
最初に優しく教えて差し上げたのに、理解していらっしゃらないから、ハッキリと言って差し上げただけですわよ?」


女は言い返そうとするが言葉が出ず口をパクパクしている。

「金魚の真似かしら? 臣の屋敷の錦鯉のようですわね。私が近づくと餌を求めて口をパクパクさせますの。金魚なら可愛らしいですが、貴女の場合は……見苦しいのでおやめになった方がよろしくてよ」

ブフッと少し後ろに居たボディーガードが吹き出す。

他の人達も、耐え切れないとばかりに笑い出した。

女は顔を真っ赤にして店を出ていった。

「去りかたも下品ですわ…」

ポツリと漏らしながら、席に戻ろうと振り向くと、臣が満面の笑みで立っていた。

「流石マリアお嬢様。とても素晴らしかったです。感動いたしました。」

マリアの手を取り、手の甲に軽くキスをする。

その光景を周りも見ており、黄色い悲鳴が起こる。

「あれくらい、"朝飯前"ですわ。」

ふふんっとマリアが笑うと臣はクスクス笑う。

「そんな言葉まで覚えたんだ?凄いね。」

「日本語は面白いんです。同じ意味でも沢山の言い方があったり、言葉が同じでも使うところが違えば意味が変わったり。」

「確かにね。けどそれが他国の人にとっては凄く難しい事なんだよ。」

「確かに難しいですが、覚えていくうちに楽しくなってきますの」

「マリアは本当に勉強熱心だね」

臣はマリアの頭を撫でると、「出よう」と言い、マリアをエスコートし店を後にした。






    
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