【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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 案の定言われた

 マスコミが仕事場の所に集まってて、何か盛り上ってて僕に気づいていないから、めちゃくちゃ緊張しながら「おはようございます」って声かけたら、皆「おはよう!おめでとう!」って言ってくれたのは良いんだけど、その後直ぐに「付き合ってなかったの?」って言われた

 だーかーらー!!
 何で!?何で皆付き合ってたと思ってるの!!

「付き合って無かったです」

 って答えたら「馴れ初めは?」ってぐいぐいくるの……

「えっと……僕が自分の気持ちに気づいたのは、映画の試写会の後で……」

「え??」「マジで言ってる?」「鈍感すぎない?」「その前からどう見ても両想いだったよな?」と、男子校のノリみたいになってきた

「因みに何で気づけたの?きっかけは?」

「あの…映画でキスしたじゃないですか…?僕、役に入りすぎてて、キスされた記憶なかったんです…。試写会の時にキスしてたって知って……」

 マジで恥ずかしいんですけどー!!

「へぇ~」「なるほどねぇ」「キスして気づくって青春か!!」「若いって良いねぇ」

 と親戚の叔父さんみたいになっていくマスコミ逹

「今幸せ?」

「はい、人生で一番幸せです」

 照れながらも、そこはハッキリと伝えた

「そのうち、彼方君は人妻になるんだろうなぁ」「だなぁ」「時間の問題だな」「せっかくだから、結婚式放送して欲しいよな」

 もうインタビューではなくなっていた

 マスコミってこんなんだっけ?

 いや、違うよね?普通、ファンに向けて一言!とか何か色々言って来るもんじゃないの??

「いや…人妻って……」

 僕男ですが……せめて夫で………

「いやいや、ここに来る前に叶さんに直撃してきたんだよ俺達。」

「そうそう、本当は舞台後にお付き合い開始しようと思ってたけど、叶さんも彼方君も仕事が忙しすぎて、そんな話もできなかったって」

「一緒に住んでるけどすれ違いの毎日で、めっちゃストレス感じてたらしいよ?」

「ほら、彼方君は可愛いから綺麗なお姉さんとか、男達に狙われそうじゃん。」

「そそ、叶さんも離れてる時凄く心配だったらしいよ?彼方君は人たらしだからさぁ」

「早く首輪つけなきゃねぇって俺らと話してたんだよ」

 何の話してんだよ!!真面目にインタビューしろよ!!

 ファンクラブの報告にしろ、インタビューにしろ、何かおかしくない?


 その後少し喋って僕はスタジオへ入った

 そこでも、共演者やスタッフ、監督達から「付き合って無かったの?」って言われたよ!!

 マジで意味分かんないんですけど!!



 その後もさんざん弄られつつ、顔合わせと舞台の本読みを終えた

 今回の舞台は2週間だけの公演だ

 なので練習時間も少なく、自分の事務所以外の人達とするから、他にも仕事を抱える人もいる

 僕はオファーが来て主演をさせていただくが、他の方はオーディションを受けて選ばれた人達だ
その中に六花も居る

 ベテランの方は、最初の弄りもあり直ぐに仲良くなれたけど、今主演を狙って日々鍛練している人達には少し遠巻きにされている

 これはADをやってた時にも度々見た光景だ

 大抵の理由が、実力が伴ってないのに、ちょっと有名になっただけのポッと出が主演なのが納得いかない!だ

 その気持ちはわかる、だからこそ僕は主演として、座長として妥協しないし、人一倍努力を怠らない

 座長だからって皆を無理に纏めようとは思わない
 僕が気にくわないって思ってる人がいるのは仕方ないし、無理に歩み寄ってもそういう人は反発する
 僕の勝手な解釈だけど、気にくわないからって態度に出す人は、そこまでの人だと思ってる
 僕達がしているのは舞台を作り上げることで、来てくれるお客さんに、感動や舞台の楽しさを感じさせることだ

 それを、気にくわないってだけで和を乱し協力・努力しようとしないなら、その人は役者をやるべきじゃないって思ってる

 僕の目標は響さんや立川さんだから、そういった人を相手にしている時間はない


 立ち稽古が始まり、僕は1人台本を持たずに練習に参加する
六花は驚いていたけど、映画とかに出てこのやり方が楽だと気づいた
 僕の台本は頼さんに預けて、メモを取ってもらってる

 日々変わる指示に、いちいち書き込みをしていたら練習に集中できない
 帰りに頼さんが書いてくれた所を復習して次の日には完璧にするという事を繰り返した

六花は若手の役者さん達と僕の仲を取り持ってくれた
殆どの人とちゃんと話して、今は仲良く稽古ができていると思う
ある2人を除いて…



 ある日、稽古場に来ると怒鳴り声が聞こえた

 頼さんと顔を見合わせ、ちょっとだけドアを開けて中を覗いてみる

 そこには、ベテランの小泉さんが若手役者の胸元を掴み上げているではないか

「お前達の態度には我慢の限界だ!!彼方が何も言わないから、俺達も黙っていたけど、お前達はプロ意識がないのか!?
 足を引っ張ることしか考えてないのは見え見えなんだよ!!
 実力もないくせに、人の邪魔をすることだけは上手くなりやがって!!」

「まぁまぁ…イズさんの言ってる事は正しいし理解できるけどさ、落ち着いて話そうよ。」

 小泉さんを宥めているのは演出家の田中さんだ

「いや、もう我慢ならねぇ。前日に変更箇所が出ても覚えてない、台詞も未だに忘れたり噛んだり、しまいには何だあのツイートは!?
 勝手に練習中の写真や動画撮ってアップしやがって!
 誰に許可得てんだ!?」

 おっと…?
 そんな事してたの??

 頼さんを見ると、直ぐにスマホで確認して見せてくれた

 本当に、僕達の稽古風景がアップされてる

 しかも最悪なことに犯人を追い詰め推理してる場面だ

 今回の舞台はサスペンスだ
 ゲームが元になっていて、そのゲームも主人公を選択でき、選択が誰かによって犯人も変わるスタイルだ
 今回は特別に脚本を書いていただいたので、犯人がバレるとネタバレになるわけで…
ゲームのファンからは新しいストーリーだ!と期待を寄せられてるんだよね

 これはまずい

 本当に不味い

 前代未聞の事態だ

 頼さんは「永倉に連絡してくる」と言ってこの場を後にした

 中では、勝手に写真や動画をアップした木戸君が言い返して、また小泉さんが怒鳴っている

 とにかく、ちゃんと話し合いをしないと駄目だ

 スポンサーとかとも、話さないといけないし、先ずはアップしたモノを削除してもらわないと話にならない

 勿論既に見た人が保存しちゃってる可能性はあるし、消したからと言って問題ない訳じゃない

「おはようございます。皆さん、先ずはそこに座ってください。話をしましょう。」

 ドアを大袈裟なほど音を立てて開け、響さんがぶちギレした時を憑依させて皆の前に出た

 普段と違う雰囲気に、小泉さん達も驚いたのか素直にしたがってくれた


「さて、今2人が掴み合って喧嘩してた原因はこれですか?」

 皆に見えるよう、例の動画が映った画面を皆に見せる

 大音量で流してやればギョッとする木戸君達

 僕(主人公)が小泉さん(犯人)を追い詰めているシーンを流す

「これ、流したことでどんな影響が出るか分かってて流したの?」

 僕は響さん僕は響さん……と心の中で呟き響さんを演じる

 僕自身で彼らに怒ってもナメられるのは普段の態度で分かってる事だ

 だから僕が知っている中で、ガチギレしたら本当に怖い人を憑依させ、彼らを叱らねばならないと思った

 無言の彼らに畳み掛ける

「しかもこのシーン、完璧にネタバレでしょ。既にチケット販売や各メディアに宣伝してるのに、大事な部分見せちゃダメでしょ。
 犯人を知った状態で見る舞台と知らないで見る舞台じゃ楽しみ方も全然違うんだよ。
 それにこれは契約違反だよ。どう責任とるつもり?まぁ、その前にさっさとこの動画と写真消せよ。」

 強い口調で命令すれば、震えた手でスマホを弄る彼らを見ていたら、頼さんと監督、プロデューサー、スポンサーのお偉方が入ってくる

 頼さんと目が合い頷かれる

 きっと既にこの事は皆さん耳に入っていて、今後の話をしていたんだろう

「彼方、これは?」

「おはようございます。僕が来た時には既に木戸君と小泉さんが胸ぐらを掴み合ってました。渡辺君と山野君が勝手にSNSに流した練習風景動画と写真の事で揉めていた為、今木戸君と山野君にはそれらを消させました…が、既にその投稿を見た人が保存しているでしょうし、拡散は止められないかと。」

 僕が響さんモードを続けていると、監督達は驚いた顔をするも、頼さんは僕が響さんを憑依させてる事に気づいたのかニタァっと嫌な笑みを向けてきた

「そ…そうなんだね。ありがとう…彼方が言うように、既に少しずつ広まっているのをこちらで確認した。
フォロワー数が少なかった為にトレンドにも上がって無いのが救いか…」

監督がため息を吐く

「ですがこれからは分かりません。映っているのが、自分でも劇団を運営している大物俳優の小泉さんと、今一番注目されている相田さんですからね。」

そう言うのは、この舞台のスポンサーだ

「あぁ。まだ話し合いの途中だが、最悪舞台は中止になる。」

そのプロデューサーの言葉に木戸君と山野君が真っ青になっている

そりゃそうだろ

内容が内容なだけに、一部の人しか動画を見てなくても、そういった判断になる事は予想できたはずだ

「話し合いの結果が出るまで、稽古は中止する事になった。
今後の詳しいスケジュールは各事務所を通すから確認してくれ。それから木戸と山野はこの後話を聞かせてもらう。」

この後解散し僕達は事務所へ直行した

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