【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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次の日から僕と響さんは怒涛の毎日を過ごしていた

カナダの映画製作スタッフ達と、まずは挨拶をして、監督がこっちに来るまでに宣伝用の写真をバンクーバーの街並みの中で撮ったり、インタビューを受けたり、日本の雑誌のカメラマンも居て、『涙の花束を』の特集ページを作るとの事で響さんと2人写真撮影の仕事を計4社、日本でのPR活動の一環でカナダを巡り、紹介しながら時にクイズを挟む世界の歴史クイズ番組の収録をした

響さんは僕を自然とエスコートしてくれて、収録の3日間は、お仕事って言うよりプチ旅行に来たみたいで楽しかった


その撮影から戻ると、監督達が到着していた

本読みを開始し撮影が始まった


今回の内容は

『あの日から2年後、カナダで『華月』と同じ手口の暗殺が何件も起きていた
初めはただの殺人事件として捜査がされていたが、半年の内に殺された人が50名にも上り、連邦警察は、テロの可能性があると捜査に乗り出す

捜査が進むと、この50名があるカルト集団の一員であった事が判明した

このカルト集団が起こした事件は様々な州で以前から起こっており、1年前に幼い子供が誘拐され、生け贄として殺された事件があった

連邦警察はカルト集団への報復だと結論付けた

カルト集団の被害者を洗い直し、ようやく犯人が浮上した
生け贄として殺された、その子供の母親であった
しかし、カルト集団を数人ずつ殺せる程、母親は健康ではなかった

癌に侵され余命2カ月と医者には言われており、現在入院していたのだ

だが連邦警察は、この母親が誰かに殺人を依頼したのではないかと、母親の体調を考慮しながら話を聞いた

母親は素直に認めた

『華月』というアジア人にカルト集団を一掃する事を依頼したのだと語った

報酬は自分の遺産と保険金

全て一掃できなくても、その母親が死ねば『華月』が遺産と保険金を受けとる事ができるように手配しているとも語った

連邦警察は『華月』について調べを進め、日本で暗殺者として警察から追われている『華月』と同一人物だと判断する

連邦警察は日本の警察に捜査協力を依頼、日本の警察はカナダで連邦警察と一緒に『華月』の捜査に乗り出す

そして明かされる『華月』という人物の闇

カルト集団を殺害しているのは本当に『華月』なのか、それとも他の誰かなのか

他の者ならなぜ『華月』の手口を知っているのか

他国を巻き込み、『華月』と日本警察の最後の戦いが始まる』

てな感じの話になっている


警察チームは日本での撮影を終え、各々の仕事が終わり次第合流する


監督が来た事によって僕と響さんの撮影が始まった

が、慣れない環境に僕は上手く役に入り込めない
入り込もうとすれば、現地の俳優さんやスタッフさんが話しかけてきたりする

皆フレンドリーで、普段なら話しかけて貰えるのは嬉しいが、今の僕にはストレスにしかならなかった

集中したいから、本番30分前からはソッとしておいて欲しいと拙い英語で説明したけど理解してもらえない

そんな僕を、監督と響さんが心配していた

納得のできる演技ができない

焦れば焦るほどストレスが貯まってどうしようもなかった

『はぁ~い!カナタ!まーた1人で居るの?折角なんだから向こうで皆と話しましょうよ!』

英語でペラペラ話しかけて来るのは、連邦警察官、ナタリア役のナンシーさんだ
アメリカで女優をしている

響さんのファンらしく、共演したくて、オーディションを受けてアメリカからわざわざカナダへ来たらしい

そして彼女が僕の1番のストレスの原因だった

英語ができない僕は、早口で言われると聞き取れない
急に腕を引っ張られたり、返事ができないと怒った口調で捲し立てられる

響さんや頼さんがすぐ庇ってくれるけど、響さんの場合はナンシーさんが、響さんにボディータッチしまくって、それを見せられるのもキツイ


『そこまでだ。ナンシー、何度言ったらわかる。彼方がスタジオに居る時は近づくな、話しかけるなと忠告したはずだ』


監督が僕の前にスッと立ち庇ってくれる

響さんが僕の隣に来てくれて肩を抱きしめ通訳してくれた

『そんな大袈裟よ!カナタの為を思って声をかけてるのよ?世界で通用する俳優になるには、いろんな人と縁を結ばなきゃ!』


『世界で通用?もしかして自分の事を言っているのか?』


監督がバカにしたような仕草をする


『何が言いたいのよ?』

『君、勘違いしすぎだよ。君は世界で通用する女優じゃない。今回のオーディション、俺が審査していたら落としていたよ。
君、台詞棒読みだからね。だからほとんど台詞がないんだよ』

『なんて失礼なの!?日本人は謙虚で紳士的って聞いてたけど嘘なのね!』

『礼儀には礼儀を、無礼には無関心を。日本人は、自分を攻撃する分にはスルーするが、自分が大切にしている者を傷つけられたら我慢などしない。
次、カナタに接触したらお前はクビだ!』

『何ですって!?そんな子供の何がいいのよ!英語も話せない、皆とコミュニケーションさえ取れないクソガキじゃない!』

ナンシーさんは、どんどんヒートアップしている

通訳してくれている響さんの顔がめっちゃ怖くなってるから、もっと酷いことを言っているのは想像できる

ナンシーさんが叫ぶように捲し立てているせいで、僕達の周りには他の出演者やスタッフさんが集まってしまっている

ナンシーさんは、今その事に気づいたのか、一瞬まずいって顔をしたけど、ナンシーさんとよく話しているジャックさんが居るのを見つけると「ジャック!」と彼を呼んだ

『貴方からも言ってやってよ!響のパートナーが彼では役不足だって!』

名指しされたジャックさんはうんざり顔でナンシーさんの近くまで来た

『役不足って?』

『あの子ずっとNGばかりじゃない!台詞もろくに覚えてないんでしょ?』

日本の映画なので、僕と響さんのシーンは日本語の台詞だ
ナンシーさんは日本語が分からないらしく、僕が納得できなくてやり直している事が分かっていないみたいだ


『ナンシー、君はこの映画の前作を見てないのかい?』

『見てないけど、なんの関係があるのよ?』

『今のカナタの演技は、あの時とは違って集中できていないのが見ていて分かる。台詞は完璧だよ。けど本人が自分の演技に納得できてないからやり直ししてるのさ。
ここに居るメンバーは皆分かってるから、彼が集中できるように話しかけないんだよ』

『…嘘よ。そんなの。だってこの間まで皆カナタに話しかけてたじゃない!!何度もNGを出すから鬱陶しくなって、今は話し掛けないんでしょ!?』


『止めてくれ。俺達をそんな底辺な奴と同じにしないでくれ。監督と響に、この間言われたんだよ。カナタは初めての海外で、言葉も分からないから元々ストレスが貯まっている。
本番前に俺達が話し掛けに行くと、言葉を聞き取ろうと必死になって集中できなくなる。
話しかけるなら撮影が終わってからにして欲しいってね。』


『そんなの英語が話せないのが悪いんじゃない』

『ならこうしよう、お前の台詞を日本語に変更したら、少しはカナタの気持ちが分かるんじゃないか?あぁ、後日本の共演者やスタッフとの会話も日本語で。』

『はぁ?何で私が!』

『だってこの映画、本当なら日本だけで撮る予定だったんだ。けど、ここの製作会社の会長が監督のファンで「涙の花束を」の続編を作る話が出たのを聞き付けて、是非ここを使って欲しいって頼み込んで、来てもらったんだよ。
日本で撮影されていたら、君は日本まで行って撮影に参加しなければならなかった。
なら、ここでも同じようにカナタの苦労が分かるまで、日本語に触れたらいいよ。
大丈夫、僕の役は元々通訳を兼ねてあるから、日本人とは基本日本語での台詞だし、1人増えた所で問題ないよ。』

ジャックさんがナンシーさんを言葉で追い込み、監督に許可を求めている

監督も、通訳が他の出演者やスタッフをフォローしてくれるなら構わないと許可を出した

ナンシーさんは顔を歪め、足元にあった椅子を蹴飛ばしスタジオを出ていった


『あの…ジャックさん、ありがとう』

「ドウ、イタシマシテ」

「あぇ!?」

ジャックさんから日本語が!!


「彼方、ちゃんと紹介できてなかったが、ジャックは俺がアメリカで仕事をする時によく共演するんだ。
彼も世界を飛び回る有名俳優なんだよ」

いや、確かに洋画でよく見る人だよ
僕でも知ってる有名俳優さん

響さんより年上だろう、目元に少しシワがあるハンサムな人

「何で日本語…?」

「ワタシ、日本ノアニメ大好き!タクサンミテ、勉キョシテル!」

「凄い!!」

思わず拍手する

『はははっ!響が言った通り、カナタは可愛いな!』

流石に今のは聞き取れた

「…響さん?」

僕の何をいつ話してたの??


「いや…ほら、彼方が拉致された時、俺アメリカに居ただろ?その時の映画の主演がジャックだったんだよ。
彼方と毎日連絡取ってたのを見つかっちゃって、それで彼方の話をちょくちょくね。」

「あー…なるほど」

あの時、アメリカの人達も心配してくれてたって言ってたな

「ジャックさん、あの時はご心配かけました」

ペコって頭を下げると

「イキテテヨカッタ!ヒビキガ、アノトキ、デビルダッタンダヨ」


「…デビル?」

ジャックさんは何度も頷く

「ハジメテミタヨ、アノコワーイ顔!デビルガカサナル…コウ…コウ?」

「更新な」

すかさず響が言葉を教える

「ソウ!コウシンしてた!」

「へぇ……ってか、ジャックさん日本語上手すぎません?」

「ヒビキ、lectureシテクレル、ウマクナル!」

なるほど、響さんが教えてあげてたんだ


僕達はナンシーさんの台本~日本語version~が出来上がるまで喋っていた

お陰で気が紛れたのか、何度も撮り直していたシーンをすんなり撮影する事ができた



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