【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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台本も出来上がり、ナンシーさんへ日本人出演者が協力して、発音を教えていた
まぁ、日本人共演者は先程のナンシーさんの発言を通訳から聞いてしまった為、ナンシーさんへの態度は非常に冷たかった

ジャックさんは逆に、発音のレクチャーを受けた後はアニメの話で盛り上がっていた

本番は夕方、街の裏道で行われる

監督の横に響さんが立って見守ってくれている

「No 513、よーい…アクション!」

カチコンの音が響いた




『咲夜』が買い物の荷物を抱えて街の人混みを縫うように歩く

その後ろには連邦警察の姿がある

現在連邦警察は、アジア人を見かけたら『華月』か確認する為に職務質問をする事になっていた
そして、生死は不明だが『華月』にはただ一人愛する人がいた、それが『咲夜』だ
『咲夜』の外見的特徴は日本の警察から提供されている

『咲夜』の情報と似た男を発見し声を掛けるために追いかけた

「あの、すみません。」

ジャックが演じる連邦警察官ジニーが『咲夜』に声をかける

「…はい?」

その青年が振り返ると、まだ子供のような青年がキョトンとした顔で連邦警察を見上げる

「突然申し訳ない、日本人かな?」

「はい、そうですけど…?」

外人から訛りはあるものの、流暢な日本語で質問された青年は首をかしげる

「名前を教えてもらえるかな?今、人探しをしているんだ」

「人探しですか?俺はユイト タカハシといいます」


「ホントに?ウソダタラ、タイフォシュルゾ」

ナンシーが演じるナタリアが睨みながら詰めよってくる

「え!?」

ビクッとした拍子に、買い物袋から荷物が落ちる

『止めろ!』

ジニーがナタリアの肩を掴み後ろに引き寄せた

「申し訳ない」

落ちた荷物を拾い青年に手渡すと、青年の手が震えている

「本当に申し訳ない。怖がらせてしまったね。僕達が探している人ではないようだ。気をつけて帰ってくれ」

そう言って背を向け、ナタリアを無理やり路地から連れ出して行った

それを見送った青年は、スッと表情を変える

眼光鋭くほの暗い瞳をし、先程の幼い表情も雰囲気も一切ない

青年は暗い路地裏へ姿を消した


「カーット!!」

「確認しまーす」

ガヤガヤと音が戻ってくる

直ぐにモニターチェックに向かう

「はぁ……ナンシーの台詞は吹替えねぇと駄目だなぁ」

「そうですね、逮捕するぞが棒読みのタイフォシュルゾですからねぇ…」

監督と助監督、響さんやスタッフさんが呆れている

ナンシーさんは画面を見て固まっていた

あまりに自分とジャックさんの日本語に、差がありすぎて驚いているんだろうか?


「まぁ良い、次『咲夜』と『華月』のシーンなぁ!日が落ちる前にやるぞ!」

監督の言葉に皆動き出す

ワンブロック先のアパートメントに移動し、撮影準備にかかる

ジャックさんとナンシーさんも見学するそうだ


「No .514 よーい、アクション!」

カンッーーーーーー


眼光鋭い目付きで、荷物を抱えて『咲夜』はアパートの階段を上っていく

「お帰り」

その声に顔をあげると、そこには『華月』

「ただいま」

『華月』に返事をする『咲夜』の表情は先ほどとは一変し、幸せそうに微笑んでいた

「変わったことは?」

『咲夜』から荷物を取り上げ腰に手を回す

「やっぱり、連邦警察が動いてるみたい」

「そうか。」

「俺に似た奴も探してたみたいだから、日本の警察が捜査協力してるのは確かだね」

「ああ」

「それと……背の高い男の連邦警察官、日本語ペラペラだったよ。」

「ふーん?それは面倒だな」

本当に面倒と思っているのか疑問になるほど、淡々としている『華月』

2人は静かに部屋に入っていった


「はい、カット!」

「はーい!チェックしまーす」

響さんと僕も部屋から出てモニターを見に行く

うん、夕日の光が良い感じに『華月』を照らしてて神々しい

「OK、次はスタジオに移るぞー!」

スタッフは直ぐに撤収作業に取りかかる

「凄いヨカッタよー!」

ジャックさんが拍手をしてくれる

「ありがとう」

「カナタ、スグニカオ変わってオドロイタ!ケド凄くイイカオダッタ!」

「だよな?俺も、あの笑顔にはノックダウンするかと思った」

ジャックさんの言葉に響さんが答える

「ヒビキイイねぇ、カナタのエガオヒトリジメ!!」

「画面に映ってるけどな」

「ミツメテルノ、ヒビキデショ。ヤキモチモチはダメだよ」

「何だよヤキモチモチって」

3人で笑いながらスタジオへ戻った


スタジオでの撮影もNG無しの1発撮りで時間を巻き、今日の遅れを取り戻した

ジャックさんとナンシーさんには、スマホに日本語の明日用の台詞を録音し、今日は終了となった



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