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結婚式
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「本日は、叶響・相田彼方の結婚披露宴にお越しいただき誠にありがとうございます。
先にお知らせしたように、本日は長年支え見守ってくださっている、ファンクラブメンバー様にもご出席賜りたいとのお2人のご要望があり、ファンクラブメンバー様のみが見れるよう、事務所の撮影班が撮影を行います。
なお、メディアの方々にもお越しいただいておりますが、動画の撮影はお断りしておりますと共に、本日は取材行為もお断りしております。
記事にされる場合は、ご自身が見たままをお書きいただくよう、お願いしておりますので皆様本日は楽しんで頂けたら幸いでございます。」
以前から、マスコミやファンに結婚式をしてほしいとか、披露宴見たい!と要望がありました
本人達も、特に響が結婚式をしたがっていたので、僕と頼と社長で必死にスケジュールを調整し、海外へ行く2週間前に4日間の休みを確保しました
その半年前から結婚式の準備を事務所総出で行い、各関係先への招待状の発送(600通にも及んだ)、式場を押さえて、プランナー5名と披露宴会場となるホテルの支配人と何度も話し合いを行い、参加の返事と共に、2人と仲の良い人達からは余興をしたいとの申し出があり、そのスケジュールを組んだり、参加できない人からはビデオレターや祝電を贈るとの連絡がありました
前々から結婚式をするなら、見守ってくれていたファン達にも見て貰いたいとの2人の気持ちをくみ、録画できないよう媒体はスマホのみ、ファンクラブサイトにて見れるようにセキュリティを強化したり、各メディアには1社につき1名参加できるが録画撮影や他のお客様へのインタビューは禁止、写真はスマホでの撮影のみと条件をつけ参加してもらうことが決まりました
当日は、参加者500名に、ビデオレターが15組60名、祝電が50通以上届き、盛大な披露宴となりました
「では早速、新郎お二人の登場です」
会場の照明が暗くなり、『涙の花束を』の主題歌が流れ、一番後ろのドアが開き2人が出てきます
2人の席まで大分遠く、後ろの席の人とあまり話す時間がない事から、各テーブルを全て回る予定にしました
全方向の壁には巨大なスクリーンがあり、2人の様子が映し出されます
招待客は驚きながらも、2人にお祝いを述べ、時には握手、時にはハグをしながら、2人は時間をかけ席へとやって来ました
『本日は、私叶響と、相田彼方の結婚披露宴へお越しいただき、まことにありがとうございます。
念願の結婚式ができたのは、ここに居られる皆様、そして画面の向こうで見てくれているファン達、裏方をしてくれているスタッフさん達のおかげです。
本当にありがとうございます。』
『結婚式を見たい!と言って事務所を動かしてくれたファンの皆、メディアの記者さん達。
スケジュール調整に協力してくださった関係者様、そして、僕達の結婚式をするために、事務所の皆が動いてくれて、今日僕達はこの場に立てました。本当にありがとう。』
2人は揃って深く一礼し席に座りました
「それではまず、乾杯をいたします。ご挨拶はお2人の事務所の永倉社長にお願いいたします。」
社長が壇上に上がり、今にも泣きそうな顔でマイクを握ります
「まずは2人とも、結婚おめでとう。響とはもう12年以上の付き合いになるな。15だったお前は荒れてて、人の言う事は聞かないし、毎日殴り合ったのは良い思い出だ。彼方は響と正反対で、凄くしっかりしてて、純粋で、良い子過ぎて逆に心配になった。
そんな2人は、本当に色々な事を乗り越えてきた。
きっとこれからも、何があっても2人で乗り越えて行けると確信している。
夫夫として互いを支え合い、役者仲間として高め合っていってほしい。
2人の益々の幸せを願いまして…乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」」
2人は幸せそうに笑いながら乾杯しました
大規模な披露宴の為、普通の披露宴とは違いケーキ入刀などは行いませんでした
しかし5時間程披露宴は続きます
乾杯の後、一部ビデオレターが紹介され、その関係先の人達のテーブルへ2人が行って写真を撮ったり喋った後は、余興の1つ、歌手の方々がバンドを組んで、2人の好きな歌を歌ってくれたり、お色直しをする時の退場時は、2人と共演したうちの事務所の俳優達が、他の招待客からお題を貰い、2人を巻き込みエチュードを披露しながら退場したりと、場を盛り上げていました
お色直し後すぐにメディアの記者さん達と話し一緒に写真を撮って、記事に使ってねと、2人の写真も撮ってもらっていました
ビデオレターの続きを見たり、2人をよく知る人へランダムに突撃し、普段の2人についてインタビューをしたり、事務所が招待客をグループ分けし、全員参加のグループ対抗ゲームを行い、勝ったグループには豪華商品をプレゼントしたりしました
食事のコースが終われば、デザートビュッフェとアルコールバー、ソフトドリンクのバーを会場に設置し、招待客は席関係無く動いて交流できるようにしていました
時間を作り響と彼方君も招待客と話したり、写真を撮る時間を作り、ご飯もしっかり食べて貰いました
「では次は、『涙の花束をafterstory』で共演したジャックさんとルーシーさんからのビデオレターです」
『やっほー!ヒビキ、カナタ!一昨日のビデオ電話ぶり!今日はねぇ、お祝いのメッセージじゃなくて、招待客とファンの子達にサプライズだよ!』
『今月ヒビキとカナタは僕達の所に来るんだ。その仕事がね、僕達4人でバンドを組んでメジャーデビューします!』
その言葉に会場にどよめきが走ります
『曲作りや、PV撮影の裏側は、サイトにアップする予定だよ!楽しみにしててねぇ~』
響と彼方君は半笑いで顔を見合わせていました
きっと「今暴露すんなや」とでも思っているのでしょう
「えーっと…まだ始動してないので秘密にしてたんですが…」
「ジャック達ぶっこんできたねぇ…」
「まぁ、情報解禁しちゃったし、しょうがないか?」
「だね、えっと皆さん。僕達は今月末から暫く彼等の所で音楽制作に打ち込む事になりました。
まだバンド名すら決まってないんだけど…」
「そう、バンド名も決まってないけど、バンドを組むので、暫く日本に居ません。私達の動向は、ファンクラブに随時更新するのと、バンドのページができたら、アップしていくので楽しみにしておいてください。」
2人が交互に話せば、会場から大きな拍手と「待ってるぞー!」とか「楽しみにしてるー!」とか声が飛びました
短いようで長い披露宴はそろそろ終わりの時間に来ていました
「ではお次は、叶響さん・相田彼方さんへ、お二人のマネージャー様からのサプライズです。」
僕と頼はマイクを持ち壇上へ上がります
「2人共、結婚おめでとう。響が最愛のパートナーを見つけれた事、本当に嬉しいよ。2人がいつまでも一緒に居れるように、これからも支えていくからよろしくね。」
「結婚おめでとう。彼方、響の愛はめちゃくちゃ重いけど、受け止められるのはお前だけだ。お前も相当重たいから、本当お似合いだよ。」
僕達がそう声をかけると2人は笑いました
「彼方君がずっと願っていた事をね、響はどうにか叶えたがっていたんだけど、行動に移す時間がなくてさ。」
僕の言葉に、響は目を見開きます
僕達のサプライズが何か分かったらしいです
「だから響の代わりに、俺達が頑張った。後ろの扉、見てろ」
その言葉に、彼方君は困惑した表情で、響にエスコートされテーブルの前まで来て、会場の後ろの扉を見つめます
舞台『インぺリオ』のBGMが流れる中、扉が開き1人の青年が入ってきました
深々と一礼し、真っ直ぐ彼は彼方君の元へと歩いてきます
彼を見つめる響の目は優しくて、彼方君はそんな響にも困惑を隠せないでいます
青年が彼方君の前に立ちました
「今日は来てくれてありがとう。直接会うのは初めてだね。叶響です。」
響はそう言って青年と握手をします
「初めまして。俺は春風駿と申します。
あの事件の有志代表を務めておりました、彼方さんのファンの1人です。」
会場からざわめきが起きます
彼方君は目を見開き、口元に手を当て驚きで固まっています
「ファンを代表し、ご挨拶させていただきます。
ご結婚おめでとうございます。お二人が幸せである事こそが、俺達の幸せです。
ずっとその仲睦まじい姿を提供していただけたらと思います。」
会場からは優しい笑いが起こり、彼方君の目からはポロポロと涙がこぼれ始めました
「ありがとう、できるだけ提供させてもらうよ。…ほら、彼方。」
響が腕をほどき、彼方君の背中を軽く押しました
彼方君は春風君にガバッと抱きついてしまいます
「ヒョッオオオ!!!!!」
変な雄叫びを上げた春風君に、響が吹き出しました
会場にも笑いが起きます
「あ……あの……かな……彼方さ……」
春風君はワタワタしていましたが、彼方君が泣きながらすがり付くため、恐る恐る抱きしめ返し、背中を優しく撫でていました
「会いたかった……ありがとうって……直接、言いたくて……手紙も…凄く、嬉しくて……君が…動こうって…思わなければ、事件の解決は…なかった……僕を助けてくれて、ありがとう………危険な事させてごめん……」
必死に声を絞り出して気持ちを伝える彼方君に、もらい泣きをする人も出てきました
「いいえ、俺が動かなくても、きっと誰かが動いたと思いますよ」
春風君はとても優しい声で答えます
「そんなことはないんじゃないかな。実際に行動に移すって、凄く勇気のいる事だし、ましてやあの情報がない中、誰にでもできることじゃないよ。
彼方を救ってくれて本当にありがとう。」
響はまだ泣きじゃくっている彼方君と、彼方君に抱きつかれたままの春風君を、長い腕で一纏めに抱きしめました
「ウヒョッ!!!」
また春風君が叫び、会場も響も僕達も吹き出しました
響、絶対わざとやったでしょう
その後、春風君の席を僕達と同じ関係者席に移し、後程彼方君とゆっくり話す時間をとることにしました
「では最後に、新郎お二人から事務所の永倉社長、志野マネージャー、頼人マネージャーへお手紙です。」
僕達は寝耳に水で、3人ともその場に固まっていると、スタッフに促され2人の前に立たされました
「永倉さん、志野さん、頼さん。忙しい中、こんな素敵な結婚式を開いてくれてありがとうございました。
僕は突然俳優になる事になって、事務所へ誘っていただいて、俳優の道を歩み始めました。
最初から問題続きで、売り出す前から事件に巻き込まれて、永倉さんは僕の俳優としての道が消えないよう、守り、慎重に対処してくださいました。
今でも社長業が忙しいはずなのに、現場に様子を見に来てくれたり、相談にのってくれたり、息抜きにご飯へ連れていってくれて、常に見守ってくれています。
志野さんは、仕事で海外に居たのに、響を置いて戻って来てくれて、ずっと警察との橋渡しに奔走してくれました。
志野さんはいつも僕を心配してくれて、僕のマネージャーではないのに全力で助けてくれます。
頼さんも、立川さんのマネージャーだった時から気さくに察してくださってて、僕が行方不明になっている時は旅行中だったのに帰国して、問題解決に尽力してくれました。
その後僕のマネージャーになってくれて、本来のマネージャーの仕事以上に、僕に俳優としてのイロハや私生活も支えてもらっています。3人はいつも僕に俳優としての道を示してくれます。
お父さんのような永倉さん、お兄ちゃんみたいな志野さん、頼さん。僕にとって家族のような3人と出会えて、僕は幸せです。これからもよろしくお願いします。」
僕の隣で、新婦の父のように泣く社長
僕もうるうるしてしまいました
「俺からも。まず永、15歳の時俺を拾ってくれてありがとう。永に拾われてなければ、俺は人生の…下手したら人としての道を踏み外していたかもしれない。
親に見捨てられて、居場所がなかった俺にモデルという仕事を与え、自分の家に引き取ってくれた。永が俺の両親に言った言葉は今でも覚えてる。『今日から響の親は俺だ!教師として立派かもしれんが、親としては失格だ。響は俺の息子にするから、さっさと書類を書きやがれ!』って。拾ってもらった当初は、大人なんて信じてなくて、反発して殴り合いの喧嘩をしてた俺を養子縁組してまで、あの家から助け出してくれて本当に感謝してる。
俺の父親は永だけだよ。父さん、ここまで育ててくれてありがとう。これからもよろしく。」
響は穏やかな笑みを社長に向け、社長は大号泣していました
「志野、いつも俺を支えてくれてありがとう。新入社員の頃から真面目で仕事ができて、皆から一目置かれていた志野だけどずっと陰で努力してたのは知ってる。だからこそ、信用できる志野をマネージャーにした。常に俺の考えを理解し、先回りして準備してくれる志野は、俺にとってかけがえのないパートナーだよ。志野が居ないと俺は俳優なんてやっていけない。これからもずっと俺のマネージャーでいてほしい。」
何でもできて、何でもこなす響にそう言ってもらえるなんて…正直、僕が居なくても問題ないと思う
けど響が必要と言ってくれるなら、ずっとマネージャーとして支えていきたい
僕は泣きながらも首を何度も縦に振った
「それから頼。龍さんのマネージャーだった時から、まるで兄貴のように世話をやいてくれてありがとう。まだガキで永や龍さんにまで楯突いてた俺をいつも叱って諭してくれたお陰で、あれ以上落ちなくてすんだと思ってる。昔の不良仲間から呼び出されて、1人対何十人って状態だったのに、永と2人で助けに来てくれた時、俺なんかを大切にしてくれる人達の為にも変わりたいって思った。
俺を助けに来てくれてありがとう。」
普段泣かない頼が珍しく声も出さず泣いています
僕が出会う前の3人の話は聞いたことがありました
不良だった響は始め大人を目の敵にし、手負いの獣のようだったそうです
何度も響と殴り合ったと頼から聞きました
響は殴り合いながらも、けして本気で殴ってきたりせず、社長や頼を観察していたとも言っていました
きっと二人を見極めていたのでしょう
信用に値するか、心を許していいのか
3人が積み上げてきたものは、その絆は、どんなことがあっても崩れたりしないでしょう
こうして2人の結婚披露宴は終了いたしました
次の日には各紙一面に結婚披露宴の記事が掲載され、写真はあの時撮ってもらったツーショット写真で、全メディアその写真でした
内容はバラバラですが、来ていた記者の感動した部分がクローズアップされていて、全容を知りたかったら、各社の新聞と各テレビ局のニュースを見たら大体わかるのではないだろうかと思います
ただ、響の生い立ちなどは一切記事にされませんでした
ネットの呟きにも上がっていません
皆さん配慮してくださったのだと嬉しく思います
披露宴終わり、控え室にファン用の撮影カメラをセットし、響と彼方君と春風君3人で話す時間を作りました
「俺、他のファンに殺されそう……」
「大丈夫だよ。有志代表の人気、彼方のファンの中では凄いよ?」
「いや…彼方さんに抱きしめられただけじゃなくて、叶さんにまで抱きしめられましたから!
ホント怖い!!」
プルプルしている春風君は、小型犬のように愛らしいです
「響って、春風君の事気に入ってるよね?」
ジト目で彼方君が響に言いました
これは嫉妬しているのかな?
「え"!?」
春風君の青い顔が歪みます
「こらこら、嫌そうな顔をしない」
「や…マジで俺、明日から命の危険が……」
「大丈夫だって。俺が春風君を気に入ってるのは当たり前の事だよ。彼方を助けてくれた恩人なんだから。」
「それはそうだね。けどなんだろう?今日初対面だよね??」
彼方君は首をかしげます
「そうだよ?」
「なのに、前より気に入ってる感じがする」
「え?嫉妬ですか!?ヤバッ!目の前で彼方さんが嫉妬してる!可愛い!!」
青い顔から赤い顔へチェンジした春風君は頬に手を当てデレデレし始めました
「落ち着け。……似てるだろ?」
「「は?」」
「彼方と春風君。見た目の雰囲気もだけど、中身がさ。テンパると途端に面白くなるところとか。」
響の言葉に、僕と頼は笑ってしまいました
確かに似ているかもしれません
「「いやいや、別に面白く……」」
「本当は生き別れの兄弟ですって言われたら信じちゃいそうだもん」
「そんなに?」
「いや……見た目は、そりゃファンなので、髪型似せてみたりしちゃったり……」
「ほら、恥ずかしがるとモジモジして声が小さくなる所も似てるだろ?」
「た…確かに………え?まさか本当に兄弟!?」
「え?彼方って生き別れのお兄ちゃんがいるの?」
「いないはず。」
「いや…俺、上に姉貴と兄貴、下にも弟2人居るんで…」
「大家族だ!」
「賑やかそうだな」
ファンクラブのページで3人の会話は生放送されています
コントが始まってしまい、ツッコミが不在でどんどん話が逸れていくので、ドアを少し開け響にカンペを見せました
「春風君が彼方に似てるから、なんか親近感もあってって感じだね」
よし、上手く軌道修正しました
ドアを閉め、また別室で3人の会話を見守ります
「春風君はあの時大学生だったけど、今は何してるの?」
「俺、あの事件がきっかけでやりたい事が見つかったんですよ。あ、これ名刺です。」
「…春風探偵事務所………え!?探偵さんなの!?」
「はい、あの時一緒に捜査した親友とリーダー達と立ち上げて、今所長をしています。」
「へぇー…凄いな……」
「あ!でも不倫調査とか、そういうのはしてないですよ!
うちが取り扱うのは、犯罪に関わる調査なので、主に警察が権限の関係で調べられない事だったり、弁護士さんの依頼だったりなんです。一般の人だと、ストーカーが誰なのか突き止めたいって人とか。」
「僕の時みたいに、人を助けてるんだね」
「そうですね…1人でも多くの人を助けたいって日々頑張ってます。」
「探偵なら、顔がわれると不味いんじゃない?会場に来て大丈夫だったの?」
「大丈夫です。お二人のマネージャーさんが、僕を探し当てて、何度も頭を下げに来てくれて…ファンの子達には生放送をするけど、セキュリティ対策はしてる事とか、会場でも招待客には、最後のゲストは写真NGだと伝えてくれると説明を受けたので。
何より、彼方さんがずっと俺に会いたいって思ってくれてるのを聞いて、推しの願いを叶えないなんてオタクじゃないって事で来ちゃいました」
「春風君はオタクの鑑だね。」
3人は暫くあの事件の時の事や、それからの事、色々な話をして終始楽しそうでした
最初は一般人の自分が結婚式に行くなんてと、断られていました
けど、春風君の親友さんが「オタクなら、押しの幸せが一番じゃねーの?」と後押ししてくださったのです
春風君はその言葉に、ハッとして、結婚式に行くと言ってくださいました
ただ、気後れしてしまうので最後の方に少しご挨拶させて貰うだけでいいと言われ、あの形に落ち着きました
「志野、頼。ありがとう」
春風君を見送りに出た後、戻ってくると廊下で響に呼び止められ頭を下げられました
「響…」
「気にすんな、俺達からの結婚祝いだ」
頼が響の頭をポンポンと叩いて頭を上げさせます
「うん…2人がマネージャーで良かった。これからもよろしく」
「勿論。こちらこそよろしくね。」
「しっかりサポートするから、お前達はやりたい事をやればいい。…ところで彼方は?」
プライベートでは常に一緒に居る彼方君が今は居ません
「披露宴で疲れて、駿に会って感動して興奮したせいか、さっき電池が切れたように寝ちゃったよ。」
「そっか。ゆっくり寝かしてやりな。」
「これ、このホテルの鍵だよ。支払いも終わってるから泊まっていって。着替えとかも部屋に置いてあるから。」
「ああ、助かる。」
部屋の鍵を渡し、彼方君を迎えにいく響を見送りました
響と彼方君はあの後、春風君と普通のお友達になりました
春風君は「いやいやいやいや!無理です無理です!!」って言ってたのですが、彼方君が悲しい顔をして「……だめ?」と一言
響がだめ押しの「オタクは押しの幸せが一番じゃなかったっけ?」の一言で春風君は降参しました
春風君を駿と呼び、春風君は響君、カナ君と呼ぶ事になり、連絡先を交換し、日本に戻ってきたらまずはご飯を食べに行こうと約束していました
2人にとって、芸能界と関係のない友人ができたのは、芸能界に入って初めてのことでした
先にお知らせしたように、本日は長年支え見守ってくださっている、ファンクラブメンバー様にもご出席賜りたいとのお2人のご要望があり、ファンクラブメンバー様のみが見れるよう、事務所の撮影班が撮影を行います。
なお、メディアの方々にもお越しいただいておりますが、動画の撮影はお断りしておりますと共に、本日は取材行為もお断りしております。
記事にされる場合は、ご自身が見たままをお書きいただくよう、お願いしておりますので皆様本日は楽しんで頂けたら幸いでございます。」
以前から、マスコミやファンに結婚式をしてほしいとか、披露宴見たい!と要望がありました
本人達も、特に響が結婚式をしたがっていたので、僕と頼と社長で必死にスケジュールを調整し、海外へ行く2週間前に4日間の休みを確保しました
その半年前から結婚式の準備を事務所総出で行い、各関係先への招待状の発送(600通にも及んだ)、式場を押さえて、プランナー5名と披露宴会場となるホテルの支配人と何度も話し合いを行い、参加の返事と共に、2人と仲の良い人達からは余興をしたいとの申し出があり、そのスケジュールを組んだり、参加できない人からはビデオレターや祝電を贈るとの連絡がありました
前々から結婚式をするなら、見守ってくれていたファン達にも見て貰いたいとの2人の気持ちをくみ、録画できないよう媒体はスマホのみ、ファンクラブサイトにて見れるようにセキュリティを強化したり、各メディアには1社につき1名参加できるが録画撮影や他のお客様へのインタビューは禁止、写真はスマホでの撮影のみと条件をつけ参加してもらうことが決まりました
当日は、参加者500名に、ビデオレターが15組60名、祝電が50通以上届き、盛大な披露宴となりました
「では早速、新郎お二人の登場です」
会場の照明が暗くなり、『涙の花束を』の主題歌が流れ、一番後ろのドアが開き2人が出てきます
2人の席まで大分遠く、後ろの席の人とあまり話す時間がない事から、各テーブルを全て回る予定にしました
全方向の壁には巨大なスクリーンがあり、2人の様子が映し出されます
招待客は驚きながらも、2人にお祝いを述べ、時には握手、時にはハグをしながら、2人は時間をかけ席へとやって来ました
『本日は、私叶響と、相田彼方の結婚披露宴へお越しいただき、まことにありがとうございます。
念願の結婚式ができたのは、ここに居られる皆様、そして画面の向こうで見てくれているファン達、裏方をしてくれているスタッフさん達のおかげです。
本当にありがとうございます。』
『結婚式を見たい!と言って事務所を動かしてくれたファンの皆、メディアの記者さん達。
スケジュール調整に協力してくださった関係者様、そして、僕達の結婚式をするために、事務所の皆が動いてくれて、今日僕達はこの場に立てました。本当にありがとう。』
2人は揃って深く一礼し席に座りました
「それではまず、乾杯をいたします。ご挨拶はお2人の事務所の永倉社長にお願いいたします。」
社長が壇上に上がり、今にも泣きそうな顔でマイクを握ります
「まずは2人とも、結婚おめでとう。響とはもう12年以上の付き合いになるな。15だったお前は荒れてて、人の言う事は聞かないし、毎日殴り合ったのは良い思い出だ。彼方は響と正反対で、凄くしっかりしてて、純粋で、良い子過ぎて逆に心配になった。
そんな2人は、本当に色々な事を乗り越えてきた。
きっとこれからも、何があっても2人で乗り越えて行けると確信している。
夫夫として互いを支え合い、役者仲間として高め合っていってほしい。
2人の益々の幸せを願いまして…乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」」
2人は幸せそうに笑いながら乾杯しました
大規模な披露宴の為、普通の披露宴とは違いケーキ入刀などは行いませんでした
しかし5時間程披露宴は続きます
乾杯の後、一部ビデオレターが紹介され、その関係先の人達のテーブルへ2人が行って写真を撮ったり喋った後は、余興の1つ、歌手の方々がバンドを組んで、2人の好きな歌を歌ってくれたり、お色直しをする時の退場時は、2人と共演したうちの事務所の俳優達が、他の招待客からお題を貰い、2人を巻き込みエチュードを披露しながら退場したりと、場を盛り上げていました
お色直し後すぐにメディアの記者さん達と話し一緒に写真を撮って、記事に使ってねと、2人の写真も撮ってもらっていました
ビデオレターの続きを見たり、2人をよく知る人へランダムに突撃し、普段の2人についてインタビューをしたり、事務所が招待客をグループ分けし、全員参加のグループ対抗ゲームを行い、勝ったグループには豪華商品をプレゼントしたりしました
食事のコースが終われば、デザートビュッフェとアルコールバー、ソフトドリンクのバーを会場に設置し、招待客は席関係無く動いて交流できるようにしていました
時間を作り響と彼方君も招待客と話したり、写真を撮る時間を作り、ご飯もしっかり食べて貰いました
「では次は、『涙の花束をafterstory』で共演したジャックさんとルーシーさんからのビデオレターです」
『やっほー!ヒビキ、カナタ!一昨日のビデオ電話ぶり!今日はねぇ、お祝いのメッセージじゃなくて、招待客とファンの子達にサプライズだよ!』
『今月ヒビキとカナタは僕達の所に来るんだ。その仕事がね、僕達4人でバンドを組んでメジャーデビューします!』
その言葉に会場にどよめきが走ります
『曲作りや、PV撮影の裏側は、サイトにアップする予定だよ!楽しみにしててねぇ~』
響と彼方君は半笑いで顔を見合わせていました
きっと「今暴露すんなや」とでも思っているのでしょう
「えーっと…まだ始動してないので秘密にしてたんですが…」
「ジャック達ぶっこんできたねぇ…」
「まぁ、情報解禁しちゃったし、しょうがないか?」
「だね、えっと皆さん。僕達は今月末から暫く彼等の所で音楽制作に打ち込む事になりました。
まだバンド名すら決まってないんだけど…」
「そう、バンド名も決まってないけど、バンドを組むので、暫く日本に居ません。私達の動向は、ファンクラブに随時更新するのと、バンドのページができたら、アップしていくので楽しみにしておいてください。」
2人が交互に話せば、会場から大きな拍手と「待ってるぞー!」とか「楽しみにしてるー!」とか声が飛びました
短いようで長い披露宴はそろそろ終わりの時間に来ていました
「ではお次は、叶響さん・相田彼方さんへ、お二人のマネージャー様からのサプライズです。」
僕と頼はマイクを持ち壇上へ上がります
「2人共、結婚おめでとう。響が最愛のパートナーを見つけれた事、本当に嬉しいよ。2人がいつまでも一緒に居れるように、これからも支えていくからよろしくね。」
「結婚おめでとう。彼方、響の愛はめちゃくちゃ重いけど、受け止められるのはお前だけだ。お前も相当重たいから、本当お似合いだよ。」
僕達がそう声をかけると2人は笑いました
「彼方君がずっと願っていた事をね、響はどうにか叶えたがっていたんだけど、行動に移す時間がなくてさ。」
僕の言葉に、響は目を見開きます
僕達のサプライズが何か分かったらしいです
「だから響の代わりに、俺達が頑張った。後ろの扉、見てろ」
その言葉に、彼方君は困惑した表情で、響にエスコートされテーブルの前まで来て、会場の後ろの扉を見つめます
舞台『インぺリオ』のBGMが流れる中、扉が開き1人の青年が入ってきました
深々と一礼し、真っ直ぐ彼は彼方君の元へと歩いてきます
彼を見つめる響の目は優しくて、彼方君はそんな響にも困惑を隠せないでいます
青年が彼方君の前に立ちました
「今日は来てくれてありがとう。直接会うのは初めてだね。叶響です。」
響はそう言って青年と握手をします
「初めまして。俺は春風駿と申します。
あの事件の有志代表を務めておりました、彼方さんのファンの1人です。」
会場からざわめきが起きます
彼方君は目を見開き、口元に手を当て驚きで固まっています
「ファンを代表し、ご挨拶させていただきます。
ご結婚おめでとうございます。お二人が幸せである事こそが、俺達の幸せです。
ずっとその仲睦まじい姿を提供していただけたらと思います。」
会場からは優しい笑いが起こり、彼方君の目からはポロポロと涙がこぼれ始めました
「ありがとう、できるだけ提供させてもらうよ。…ほら、彼方。」
響が腕をほどき、彼方君の背中を軽く押しました
彼方君は春風君にガバッと抱きついてしまいます
「ヒョッオオオ!!!!!」
変な雄叫びを上げた春風君に、響が吹き出しました
会場にも笑いが起きます
「あ……あの……かな……彼方さ……」
春風君はワタワタしていましたが、彼方君が泣きながらすがり付くため、恐る恐る抱きしめ返し、背中を優しく撫でていました
「会いたかった……ありがとうって……直接、言いたくて……手紙も…凄く、嬉しくて……君が…動こうって…思わなければ、事件の解決は…なかった……僕を助けてくれて、ありがとう………危険な事させてごめん……」
必死に声を絞り出して気持ちを伝える彼方君に、もらい泣きをする人も出てきました
「いいえ、俺が動かなくても、きっと誰かが動いたと思いますよ」
春風君はとても優しい声で答えます
「そんなことはないんじゃないかな。実際に行動に移すって、凄く勇気のいる事だし、ましてやあの情報がない中、誰にでもできることじゃないよ。
彼方を救ってくれて本当にありがとう。」
響はまだ泣きじゃくっている彼方君と、彼方君に抱きつかれたままの春風君を、長い腕で一纏めに抱きしめました
「ウヒョッ!!!」
また春風君が叫び、会場も響も僕達も吹き出しました
響、絶対わざとやったでしょう
その後、春風君の席を僕達と同じ関係者席に移し、後程彼方君とゆっくり話す時間をとることにしました
「では最後に、新郎お二人から事務所の永倉社長、志野マネージャー、頼人マネージャーへお手紙です。」
僕達は寝耳に水で、3人ともその場に固まっていると、スタッフに促され2人の前に立たされました
「永倉さん、志野さん、頼さん。忙しい中、こんな素敵な結婚式を開いてくれてありがとうございました。
僕は突然俳優になる事になって、事務所へ誘っていただいて、俳優の道を歩み始めました。
最初から問題続きで、売り出す前から事件に巻き込まれて、永倉さんは僕の俳優としての道が消えないよう、守り、慎重に対処してくださいました。
今でも社長業が忙しいはずなのに、現場に様子を見に来てくれたり、相談にのってくれたり、息抜きにご飯へ連れていってくれて、常に見守ってくれています。
志野さんは、仕事で海外に居たのに、響を置いて戻って来てくれて、ずっと警察との橋渡しに奔走してくれました。
志野さんはいつも僕を心配してくれて、僕のマネージャーではないのに全力で助けてくれます。
頼さんも、立川さんのマネージャーだった時から気さくに察してくださってて、僕が行方不明になっている時は旅行中だったのに帰国して、問題解決に尽力してくれました。
その後僕のマネージャーになってくれて、本来のマネージャーの仕事以上に、僕に俳優としてのイロハや私生活も支えてもらっています。3人はいつも僕に俳優としての道を示してくれます。
お父さんのような永倉さん、お兄ちゃんみたいな志野さん、頼さん。僕にとって家族のような3人と出会えて、僕は幸せです。これからもよろしくお願いします。」
僕の隣で、新婦の父のように泣く社長
僕もうるうるしてしまいました
「俺からも。まず永、15歳の時俺を拾ってくれてありがとう。永に拾われてなければ、俺は人生の…下手したら人としての道を踏み外していたかもしれない。
親に見捨てられて、居場所がなかった俺にモデルという仕事を与え、自分の家に引き取ってくれた。永が俺の両親に言った言葉は今でも覚えてる。『今日から響の親は俺だ!教師として立派かもしれんが、親としては失格だ。響は俺の息子にするから、さっさと書類を書きやがれ!』って。拾ってもらった当初は、大人なんて信じてなくて、反発して殴り合いの喧嘩をしてた俺を養子縁組してまで、あの家から助け出してくれて本当に感謝してる。
俺の父親は永だけだよ。父さん、ここまで育ててくれてありがとう。これからもよろしく。」
響は穏やかな笑みを社長に向け、社長は大号泣していました
「志野、いつも俺を支えてくれてありがとう。新入社員の頃から真面目で仕事ができて、皆から一目置かれていた志野だけどずっと陰で努力してたのは知ってる。だからこそ、信用できる志野をマネージャーにした。常に俺の考えを理解し、先回りして準備してくれる志野は、俺にとってかけがえのないパートナーだよ。志野が居ないと俺は俳優なんてやっていけない。これからもずっと俺のマネージャーでいてほしい。」
何でもできて、何でもこなす響にそう言ってもらえるなんて…正直、僕が居なくても問題ないと思う
けど響が必要と言ってくれるなら、ずっとマネージャーとして支えていきたい
僕は泣きながらも首を何度も縦に振った
「それから頼。龍さんのマネージャーだった時から、まるで兄貴のように世話をやいてくれてありがとう。まだガキで永や龍さんにまで楯突いてた俺をいつも叱って諭してくれたお陰で、あれ以上落ちなくてすんだと思ってる。昔の不良仲間から呼び出されて、1人対何十人って状態だったのに、永と2人で助けに来てくれた時、俺なんかを大切にしてくれる人達の為にも変わりたいって思った。
俺を助けに来てくれてありがとう。」
普段泣かない頼が珍しく声も出さず泣いています
僕が出会う前の3人の話は聞いたことがありました
不良だった響は始め大人を目の敵にし、手負いの獣のようだったそうです
何度も響と殴り合ったと頼から聞きました
響は殴り合いながらも、けして本気で殴ってきたりせず、社長や頼を観察していたとも言っていました
きっと二人を見極めていたのでしょう
信用に値するか、心を許していいのか
3人が積み上げてきたものは、その絆は、どんなことがあっても崩れたりしないでしょう
こうして2人の結婚披露宴は終了いたしました
次の日には各紙一面に結婚披露宴の記事が掲載され、写真はあの時撮ってもらったツーショット写真で、全メディアその写真でした
内容はバラバラですが、来ていた記者の感動した部分がクローズアップされていて、全容を知りたかったら、各社の新聞と各テレビ局のニュースを見たら大体わかるのではないだろうかと思います
ただ、響の生い立ちなどは一切記事にされませんでした
ネットの呟きにも上がっていません
皆さん配慮してくださったのだと嬉しく思います
披露宴終わり、控え室にファン用の撮影カメラをセットし、響と彼方君と春風君3人で話す時間を作りました
「俺、他のファンに殺されそう……」
「大丈夫だよ。有志代表の人気、彼方のファンの中では凄いよ?」
「いや…彼方さんに抱きしめられただけじゃなくて、叶さんにまで抱きしめられましたから!
ホント怖い!!」
プルプルしている春風君は、小型犬のように愛らしいです
「響って、春風君の事気に入ってるよね?」
ジト目で彼方君が響に言いました
これは嫉妬しているのかな?
「え"!?」
春風君の青い顔が歪みます
「こらこら、嫌そうな顔をしない」
「や…マジで俺、明日から命の危険が……」
「大丈夫だって。俺が春風君を気に入ってるのは当たり前の事だよ。彼方を助けてくれた恩人なんだから。」
「それはそうだね。けどなんだろう?今日初対面だよね??」
彼方君は首をかしげます
「そうだよ?」
「なのに、前より気に入ってる感じがする」
「え?嫉妬ですか!?ヤバッ!目の前で彼方さんが嫉妬してる!可愛い!!」
青い顔から赤い顔へチェンジした春風君は頬に手を当てデレデレし始めました
「落ち着け。……似てるだろ?」
「「は?」」
「彼方と春風君。見た目の雰囲気もだけど、中身がさ。テンパると途端に面白くなるところとか。」
響の言葉に、僕と頼は笑ってしまいました
確かに似ているかもしれません
「「いやいや、別に面白く……」」
「本当は生き別れの兄弟ですって言われたら信じちゃいそうだもん」
「そんなに?」
「いや……見た目は、そりゃファンなので、髪型似せてみたりしちゃったり……」
「ほら、恥ずかしがるとモジモジして声が小さくなる所も似てるだろ?」
「た…確かに………え?まさか本当に兄弟!?」
「え?彼方って生き別れのお兄ちゃんがいるの?」
「いないはず。」
「いや…俺、上に姉貴と兄貴、下にも弟2人居るんで…」
「大家族だ!」
「賑やかそうだな」
ファンクラブのページで3人の会話は生放送されています
コントが始まってしまい、ツッコミが不在でどんどん話が逸れていくので、ドアを少し開け響にカンペを見せました
「春風君が彼方に似てるから、なんか親近感もあってって感じだね」
よし、上手く軌道修正しました
ドアを閉め、また別室で3人の会話を見守ります
「春風君はあの時大学生だったけど、今は何してるの?」
「俺、あの事件がきっかけでやりたい事が見つかったんですよ。あ、これ名刺です。」
「…春風探偵事務所………え!?探偵さんなの!?」
「はい、あの時一緒に捜査した親友とリーダー達と立ち上げて、今所長をしています。」
「へぇー…凄いな……」
「あ!でも不倫調査とか、そういうのはしてないですよ!
うちが取り扱うのは、犯罪に関わる調査なので、主に警察が権限の関係で調べられない事だったり、弁護士さんの依頼だったりなんです。一般の人だと、ストーカーが誰なのか突き止めたいって人とか。」
「僕の時みたいに、人を助けてるんだね」
「そうですね…1人でも多くの人を助けたいって日々頑張ってます。」
「探偵なら、顔がわれると不味いんじゃない?会場に来て大丈夫だったの?」
「大丈夫です。お二人のマネージャーさんが、僕を探し当てて、何度も頭を下げに来てくれて…ファンの子達には生放送をするけど、セキュリティ対策はしてる事とか、会場でも招待客には、最後のゲストは写真NGだと伝えてくれると説明を受けたので。
何より、彼方さんがずっと俺に会いたいって思ってくれてるのを聞いて、推しの願いを叶えないなんてオタクじゃないって事で来ちゃいました」
「春風君はオタクの鑑だね。」
3人は暫くあの事件の時の事や、それからの事、色々な話をして終始楽しそうでした
最初は一般人の自分が結婚式に行くなんてと、断られていました
けど、春風君の親友さんが「オタクなら、押しの幸せが一番じゃねーの?」と後押ししてくださったのです
春風君はその言葉に、ハッとして、結婚式に行くと言ってくださいました
ただ、気後れしてしまうので最後の方に少しご挨拶させて貰うだけでいいと言われ、あの形に落ち着きました
「志野、頼。ありがとう」
春風君を見送りに出た後、戻ってくると廊下で響に呼び止められ頭を下げられました
「響…」
「気にすんな、俺達からの結婚祝いだ」
頼が響の頭をポンポンと叩いて頭を上げさせます
「うん…2人がマネージャーで良かった。これからもよろしく」
「勿論。こちらこそよろしくね。」
「しっかりサポートするから、お前達はやりたい事をやればいい。…ところで彼方は?」
プライベートでは常に一緒に居る彼方君が今は居ません
「披露宴で疲れて、駿に会って感動して興奮したせいか、さっき電池が切れたように寝ちゃったよ。」
「そっか。ゆっくり寝かしてやりな。」
「これ、このホテルの鍵だよ。支払いも終わってるから泊まっていって。着替えとかも部屋に置いてあるから。」
「ああ、助かる。」
部屋の鍵を渡し、彼方君を迎えにいく響を見送りました
響と彼方君はあの後、春風君と普通のお友達になりました
春風君は「いやいやいやいや!無理です無理です!!」って言ってたのですが、彼方君が悲しい顔をして「……だめ?」と一言
響がだめ押しの「オタクは押しの幸せが一番じゃなかったっけ?」の一言で春風君は降参しました
春風君を駿と呼び、春風君は響君、カナ君と呼ぶ事になり、連絡先を交換し、日本に戻ってきたらまずはご飯を食べに行こうと約束していました
2人にとって、芸能界と関係のない友人ができたのは、芸能界に入って初めてのことでした
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