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昔と現在
「お疲れさまでしたー!」
「お疲れ様です!また明日よろしくお願いします!」
ガヤガヤと騒がしいスタジオの中、撮影が終わり挨拶の声が飛び交う。
彼方は、自分の仕事が終わったので同じ局の他のスタジオで仕事中の響の元へ向かった。
中に入ると、まだバラエティーの撮影中だった為、彼方は邪魔にならないように見学した。
一瞬響と目が合って、響はフッと優しく愛しそうな笑顔を浮かべた。
彼方がこうやって見学に来たら、いつもすぐに分かるらしく、必ず目が合って微笑みを向けられる。
「よう、彼方!」
彼方が振り返るとAD時代にお世話になったADの綾部が立っていた。
「綾部さん!お疲れ様です!」
AD時代のようにしっかり頭を下げて挨拶する彼方に、綾部は苦笑いを浮かべる。
「彼方は相変わらずだなぁ。今日は旦那待ち中?」
「そうなんです。この後友達の家で鍋パ予定なんで。」
「へぇ。あの叶さんがねぇ…」
「皆それ言うんですけど、響ってどんな人だったんですか?僕、非の打ち所がない人ってしか知らなかったんですけど。」
彼方は昔から芸能界に疎く、響の事を知ったのも、響が主演し国内外で大ヒットした映画を観たからだ。
ドラマとかもほとんど観ることがなかった彼方を友人達が映画に誘った。
映画を観た後、ファストフードを食べながら映画の内容を興奮冷めやらぬ皆と話した。
その時に響についても友人が熱く語っていた為知ったのだった。
実際の響は、皆が知っている通り頼りになり、どんな事も器用にこなして、人一倍責任感が強くて、努力を惜しまない人で、真摯に役者として取り組んでいる人だ。
響の周りの人は彼の事を、優しくて、いつもおおらかで、カリスマ性のある人と評価するけど、実際は違う。
彼方や事務所の人は、彼方が絡むと敵意剥き出しの野生動物みたいになるし、馬鹿は嫌いだし相手にしない。
自分に面倒事が降りかかるのが嫌で、先を読み回避しているにすぎない。
響の中身は昔の不良だった時と変わらず、ただ自分を良く見せる術を学び、上手く立ち回る事を覚えただけなのだ。
「叶さんって面倒見もいいし、気さくだし、どんな役柄もできるし、自分でアクションまでしちゃうだろ?
ファンの子達にとって理想の旦那像だし、理想の息子像でもあるわけよ。
子供からは理想の大人像らしいぞ。
何年か前に雑誌のランキングに載ってたから。」
「へぇ。そんなランキングやってたんですね。」
雑誌も買ったことがない彼方は、そんな面白い企画があるのかと思った。
「そんなに気になるなら、直接ファンに聞いてみたら?ファンクラブで定期的に交流してるんだろ?」
「何で綾部さんが知ってるんですか。」
現在、FPFでは新たな取り組みとして、一ヶ月に一度ファンクラブ内でライブ配信を行っている。
ライブ配信と言っても、雑談しかしていなくて、ファンのコメントを拾って喋っているだけだ。
ただ、事務所に来ていた人が飛び入り参加したりする事もあるので、結構人気である。
この前は、まだ売り出し中の新人君の所に響が飛び入りして、その子と仲良く喋り、褒めるものだからSNSのハッシュタグで話題になっていた。
そのおかげか、新人君のファンも増えファンクラブの人数も増えていた。
事務所は古株とか新人とか関係なく関わりを持つようにしているので、皆仲が良い。
もちろん喧嘩する事もあるけど、皆素直だから第三者が間に入ってちゃんと話し合いをすれば、より絆が深まっていたりもする。
最近のコメントには子供さんやご年配の方も参加してくれていて、年齢層の幅が広がりつつある。
早速、響がライブ配信する日に彼方が飛び入り参加した。
この二人が揃うと視聴人数が爆上がりする。
「こんばんは。今日はねぇ、皆に聞きたいことがあるらしくって嫁が参加するよ。」
コメント欄が『マジでーーー!!!』『キャー!!!』『かなくーん!!』と一気に流れる。
おいでと手招きされて、彼方が隣に来るとコメント欄が物凄い早さで流れていく。
「皆さんこんばんはー。ちょこっとお邪魔します。」
コメント欄は『ひびかな』が沢山流れている。
「じゃあ、早速だけど彼方が聞きたいこと聞いてみたら?」
『何ー?』『何だろ?』『何でも答えるよー!』と流れ始める。
「えっとね、僕この業界に入るまでテレビも見ないし、雑誌とかも買わないタイプの人間だったんだ。
だから響の事も友人に聞いた事しか知らなかったんだよね。
でね、最近特になんだけど響の事を『あの叶さんがねぇ…』って言われるんだよね。
僕と出会う前の響って、今とどこが違うのかなって。」
彼方がそう言うと一斉にコメントが流れる。
『顔』『顔じゃね?』『顔だな』『顔だね』
「え?顔??」
コメント欄には『顔』という文字ばかり流れる。
響は苦笑いをし、彼方は困惑した顔をしている。
『目が優しくなった』『幸せオーラ』『雰囲気優しい』なども流れ始める。
「え?昔は優しそうじゃなかったってこと?」
「こらこら」
チャリンと音がして、スパチャが届く。
「あ、スパチャありがとう。えーっと『響君は、常に完璧人間で笑顔も完璧でした。今と比べると、悪い言い方をすればロボットとか人形ですね。この時はこの笑顔、この時はこの笑顔みたいな形状記憶型笑顔って感じだったんです。あの頃はそれが普通だったので、かな君と出会ってからの響君は、表情豊かで人形に魂が宿ったとファンの中では囁かれていました。』だって。そうなの?」
彼方はポンポンと響の膝を叩く。
「えー?んー…俺自身意識してなかったなぁ。でも確かに、志野達にも『仕事中、表情が豊かになったね』と言われたかな。」
「そうなんだ。あ、またスパチャだ。『彼方君と出会う前の響は、プライベートを一切話さないし、俳優として作られた叶響でした。今もバラエティーとかで観る響は基本的にそんな感じだけど、彼方君と待ち合わせしてると思われる日に収録された物は、目がキラキラしててご機嫌なのが一目瞭然で可愛らしいです。
ファンはストイックな響も好きだけど、彼方君と関わっている時の響を知ってしまうと余計沼りました。』だって。
皆、僕が見学に行ってたり収録後に会う約束をしてると分かるんだ?」
コメントには『わかる!』『目の輝きが違う』『生放送だとソワソワしてる』『たまに急に優しく笑う時ある』など書き込まれる。
「俺そんなに分かりやすい?」
もう響はタジタジだ。
『1000万狙えは別人かと思った』『素の響が見れたよね』『昔じゃ考えられない姿が見れたよ』
コメント欄でファン同士が話し出す。
ファンクラブのチャット欄は、俳優が喋ってる時は穏やかに流れ、ファン同士の交流場ともなっている。
「あー、この前の生放送か。」
《1000万狙え》とは3時間の生放送クイズ番組で、芸能人やスポーツ選手、政治家まで出る。
クイズは知識・教養・推理・パズル・間違い探し・順位予想など多岐にわたり、ボーナスとして生中継中、10名がスポーツで競いその他の人は順位当てをする。
スポーツに参加する人はその場で決め、参加する人には10万円が参加賞として貰える。
順位当ては一位~三位までをピタリと当てた人も10万円貰える。
二人一組のペアが、五十組集まり一位を狙って戦う。
一位になれば1000万を獲得できる。
彼方と響はペアとなりクイズ番組に出た。
二人は苦手な分野がきっちりと分かれていた。
響はパズル・間違い探し、彼方は推理・順位予想。
お互い補い合えたことで、ぶっちぎりで正解していた。
生放送であっても、彼方が傍に居るとリラックスするのか、響は穏やかな表情で彼方をずっと見ているし、彼方もつい前を向くより響の方を体ごと向けて内緒話をするように顔を近づけて話しており、共演者を驚かせていた。
他のペアも夫婦で参加している人はいたが、彼方たちのように距離は近くないしイチャついてもいない。
ただ彼方も響もイチャついているつもりが全くなかった。
スポーツ順位当てクイズのスポーツは弓道で、一度も経験がない人が参加した。
挙手制だったが一人足りず、響が出るなら僕も出よっかなと軽いノリで彼方も出た。
皆が予想している間に別スタジオに行き、レクチャーを受けて5本程射る練習をすれば本番となる。
10人全員横一列に並び、3本射って合計点数で順位が決まる。
投票はスポーツ選手に票が集まり、大体の人は上位3名をスポーツ選手にしていた。
同じく出演していた六花と昴は、一位に響、二位に彼方、三位に政治家の名前を上げていた。
結果は六花と昴の予想が的中し、スタジオは騒然となった。
司会者は苦笑いしながら一位の響にインタビューすると、響は「嫁に格好いい所を見せたくて」とのろけるし、彼方へインタビューすれば「響を真似したら上手くできました!流石響、何でもできて格好いい!」と笑顔で答えていた。
終始二人はこんな感じで、結局二位と差をつけ響と彼方のペアが優勝した。
最後に1000万円の使い道を尋ねられ、響は「んー…彼方が欲しいものでも買いますかね?」と答え、彼方は「えー…響が欲しいもの買いたいなぁ。」と、またもや皆に砂糖を吐かせるコメントをしていた。
『二人にはこれからもラブラブでいてほしいね』『うん、ラブラブ供給してください』『二人の自然体を見るのすごく好き』『二人に憧れる~!』『わかる!どうやったら、こんなに愛し合える人と巡り会えるのかなぁ?』
と、チャット欄は彼方と響を置いてきぼりに盛り上がっていった。
「ってことらしいんですよ。」
彼方はドラマの撮影の為スタジオに来ていた。
綾部が居たので捕まえて、この前の話の続きをする。
「あー、確かにあの番組凄い視聴率だったぞ。特に弓道の時と最後の順位発表。業界では二人をセットで出したら視聴率稼げるって大騒ぎになったほどだ。」
「えー?あ、だから最近響との仕事のオファーが来るのか…」
「早速来てるのか?」
「そうなんですよ。けどスケジュールは埋まってて無理なんですけどねぇ。」
「超売れっ子になっちまったなぁ。」
綾部は少し寂しそうに笑う。
「そのきっかけを作ったのは、『涙の花束を』で綾部さん達が全力で僕をフォローしてくれたからじゃないですか。
今でも皆が同じ現場に入ると、役者陣が仕事をしやすいように配慮してくれて、凄く助かってるんですよ。」
そう、今もAD時代の仲間に会えば昔みたいに話すけど、やはり立場が違うと気の使い方も変わってくる。
けどそれを感じさせないくらい、昔の仲間は上手く動いていて、現場の雰囲気がとても良い。
綾部さんの部下が居るのと居ないのとでは全然違うのだ。
この事は俳優陣なら大体の人が知っていて、この局での撮影時に綾部さんの後輩たちが居ると当たりの現場と言われるようになった。
「俺達は良い作品を作るために居るからな。どんな些細なことにも気づけるよう日々勉強して、情報共有してるだけだよ。」
へへっと照れたように綾部は笑った。
「お疲れ様です!また明日よろしくお願いします!」
ガヤガヤと騒がしいスタジオの中、撮影が終わり挨拶の声が飛び交う。
彼方は、自分の仕事が終わったので同じ局の他のスタジオで仕事中の響の元へ向かった。
中に入ると、まだバラエティーの撮影中だった為、彼方は邪魔にならないように見学した。
一瞬響と目が合って、響はフッと優しく愛しそうな笑顔を浮かべた。
彼方がこうやって見学に来たら、いつもすぐに分かるらしく、必ず目が合って微笑みを向けられる。
「よう、彼方!」
彼方が振り返るとAD時代にお世話になったADの綾部が立っていた。
「綾部さん!お疲れ様です!」
AD時代のようにしっかり頭を下げて挨拶する彼方に、綾部は苦笑いを浮かべる。
「彼方は相変わらずだなぁ。今日は旦那待ち中?」
「そうなんです。この後友達の家で鍋パ予定なんで。」
「へぇ。あの叶さんがねぇ…」
「皆それ言うんですけど、響ってどんな人だったんですか?僕、非の打ち所がない人ってしか知らなかったんですけど。」
彼方は昔から芸能界に疎く、響の事を知ったのも、響が主演し国内外で大ヒットした映画を観たからだ。
ドラマとかもほとんど観ることがなかった彼方を友人達が映画に誘った。
映画を観た後、ファストフードを食べながら映画の内容を興奮冷めやらぬ皆と話した。
その時に響についても友人が熱く語っていた為知ったのだった。
実際の響は、皆が知っている通り頼りになり、どんな事も器用にこなして、人一倍責任感が強くて、努力を惜しまない人で、真摯に役者として取り組んでいる人だ。
響の周りの人は彼の事を、優しくて、いつもおおらかで、カリスマ性のある人と評価するけど、実際は違う。
彼方や事務所の人は、彼方が絡むと敵意剥き出しの野生動物みたいになるし、馬鹿は嫌いだし相手にしない。
自分に面倒事が降りかかるのが嫌で、先を読み回避しているにすぎない。
響の中身は昔の不良だった時と変わらず、ただ自分を良く見せる術を学び、上手く立ち回る事を覚えただけなのだ。
「叶さんって面倒見もいいし、気さくだし、どんな役柄もできるし、自分でアクションまでしちゃうだろ?
ファンの子達にとって理想の旦那像だし、理想の息子像でもあるわけよ。
子供からは理想の大人像らしいぞ。
何年か前に雑誌のランキングに載ってたから。」
「へぇ。そんなランキングやってたんですね。」
雑誌も買ったことがない彼方は、そんな面白い企画があるのかと思った。
「そんなに気になるなら、直接ファンに聞いてみたら?ファンクラブで定期的に交流してるんだろ?」
「何で綾部さんが知ってるんですか。」
現在、FPFでは新たな取り組みとして、一ヶ月に一度ファンクラブ内でライブ配信を行っている。
ライブ配信と言っても、雑談しかしていなくて、ファンのコメントを拾って喋っているだけだ。
ただ、事務所に来ていた人が飛び入り参加したりする事もあるので、結構人気である。
この前は、まだ売り出し中の新人君の所に響が飛び入りして、その子と仲良く喋り、褒めるものだからSNSのハッシュタグで話題になっていた。
そのおかげか、新人君のファンも増えファンクラブの人数も増えていた。
事務所は古株とか新人とか関係なく関わりを持つようにしているので、皆仲が良い。
もちろん喧嘩する事もあるけど、皆素直だから第三者が間に入ってちゃんと話し合いをすれば、より絆が深まっていたりもする。
最近のコメントには子供さんやご年配の方も参加してくれていて、年齢層の幅が広がりつつある。
早速、響がライブ配信する日に彼方が飛び入り参加した。
この二人が揃うと視聴人数が爆上がりする。
「こんばんは。今日はねぇ、皆に聞きたいことがあるらしくって嫁が参加するよ。」
コメント欄が『マジでーーー!!!』『キャー!!!』『かなくーん!!』と一気に流れる。
おいでと手招きされて、彼方が隣に来るとコメント欄が物凄い早さで流れていく。
「皆さんこんばんはー。ちょこっとお邪魔します。」
コメント欄は『ひびかな』が沢山流れている。
「じゃあ、早速だけど彼方が聞きたいこと聞いてみたら?」
『何ー?』『何だろ?』『何でも答えるよー!』と流れ始める。
「えっとね、僕この業界に入るまでテレビも見ないし、雑誌とかも買わないタイプの人間だったんだ。
だから響の事も友人に聞いた事しか知らなかったんだよね。
でね、最近特になんだけど響の事を『あの叶さんがねぇ…』って言われるんだよね。
僕と出会う前の響って、今とどこが違うのかなって。」
彼方がそう言うと一斉にコメントが流れる。
『顔』『顔じゃね?』『顔だな』『顔だね』
「え?顔??」
コメント欄には『顔』という文字ばかり流れる。
響は苦笑いをし、彼方は困惑した顔をしている。
『目が優しくなった』『幸せオーラ』『雰囲気優しい』なども流れ始める。
「え?昔は優しそうじゃなかったってこと?」
「こらこら」
チャリンと音がして、スパチャが届く。
「あ、スパチャありがとう。えーっと『響君は、常に完璧人間で笑顔も完璧でした。今と比べると、悪い言い方をすればロボットとか人形ですね。この時はこの笑顔、この時はこの笑顔みたいな形状記憶型笑顔って感じだったんです。あの頃はそれが普通だったので、かな君と出会ってからの響君は、表情豊かで人形に魂が宿ったとファンの中では囁かれていました。』だって。そうなの?」
彼方はポンポンと響の膝を叩く。
「えー?んー…俺自身意識してなかったなぁ。でも確かに、志野達にも『仕事中、表情が豊かになったね』と言われたかな。」
「そうなんだ。あ、またスパチャだ。『彼方君と出会う前の響は、プライベートを一切話さないし、俳優として作られた叶響でした。今もバラエティーとかで観る響は基本的にそんな感じだけど、彼方君と待ち合わせしてると思われる日に収録された物は、目がキラキラしててご機嫌なのが一目瞭然で可愛らしいです。
ファンはストイックな響も好きだけど、彼方君と関わっている時の響を知ってしまうと余計沼りました。』だって。
皆、僕が見学に行ってたり収録後に会う約束をしてると分かるんだ?」
コメントには『わかる!』『目の輝きが違う』『生放送だとソワソワしてる』『たまに急に優しく笑う時ある』など書き込まれる。
「俺そんなに分かりやすい?」
もう響はタジタジだ。
『1000万狙えは別人かと思った』『素の響が見れたよね』『昔じゃ考えられない姿が見れたよ』
コメント欄でファン同士が話し出す。
ファンクラブのチャット欄は、俳優が喋ってる時は穏やかに流れ、ファン同士の交流場ともなっている。
「あー、この前の生放送か。」
《1000万狙え》とは3時間の生放送クイズ番組で、芸能人やスポーツ選手、政治家まで出る。
クイズは知識・教養・推理・パズル・間違い探し・順位予想など多岐にわたり、ボーナスとして生中継中、10名がスポーツで競いその他の人は順位当てをする。
スポーツに参加する人はその場で決め、参加する人には10万円が参加賞として貰える。
順位当ては一位~三位までをピタリと当てた人も10万円貰える。
二人一組のペアが、五十組集まり一位を狙って戦う。
一位になれば1000万を獲得できる。
彼方と響はペアとなりクイズ番組に出た。
二人は苦手な分野がきっちりと分かれていた。
響はパズル・間違い探し、彼方は推理・順位予想。
お互い補い合えたことで、ぶっちぎりで正解していた。
生放送であっても、彼方が傍に居るとリラックスするのか、響は穏やかな表情で彼方をずっと見ているし、彼方もつい前を向くより響の方を体ごと向けて内緒話をするように顔を近づけて話しており、共演者を驚かせていた。
他のペアも夫婦で参加している人はいたが、彼方たちのように距離は近くないしイチャついてもいない。
ただ彼方も響もイチャついているつもりが全くなかった。
スポーツ順位当てクイズのスポーツは弓道で、一度も経験がない人が参加した。
挙手制だったが一人足りず、響が出るなら僕も出よっかなと軽いノリで彼方も出た。
皆が予想している間に別スタジオに行き、レクチャーを受けて5本程射る練習をすれば本番となる。
10人全員横一列に並び、3本射って合計点数で順位が決まる。
投票はスポーツ選手に票が集まり、大体の人は上位3名をスポーツ選手にしていた。
同じく出演していた六花と昴は、一位に響、二位に彼方、三位に政治家の名前を上げていた。
結果は六花と昴の予想が的中し、スタジオは騒然となった。
司会者は苦笑いしながら一位の響にインタビューすると、響は「嫁に格好いい所を見せたくて」とのろけるし、彼方へインタビューすれば「響を真似したら上手くできました!流石響、何でもできて格好いい!」と笑顔で答えていた。
終始二人はこんな感じで、結局二位と差をつけ響と彼方のペアが優勝した。
最後に1000万円の使い道を尋ねられ、響は「んー…彼方が欲しいものでも買いますかね?」と答え、彼方は「えー…響が欲しいもの買いたいなぁ。」と、またもや皆に砂糖を吐かせるコメントをしていた。
『二人にはこれからもラブラブでいてほしいね』『うん、ラブラブ供給してください』『二人の自然体を見るのすごく好き』『二人に憧れる~!』『わかる!どうやったら、こんなに愛し合える人と巡り会えるのかなぁ?』
と、チャット欄は彼方と響を置いてきぼりに盛り上がっていった。
「ってことらしいんですよ。」
彼方はドラマの撮影の為スタジオに来ていた。
綾部が居たので捕まえて、この前の話の続きをする。
「あー、確かにあの番組凄い視聴率だったぞ。特に弓道の時と最後の順位発表。業界では二人をセットで出したら視聴率稼げるって大騒ぎになったほどだ。」
「えー?あ、だから最近響との仕事のオファーが来るのか…」
「早速来てるのか?」
「そうなんですよ。けどスケジュールは埋まってて無理なんですけどねぇ。」
「超売れっ子になっちまったなぁ。」
綾部は少し寂しそうに笑う。
「そのきっかけを作ったのは、『涙の花束を』で綾部さん達が全力で僕をフォローしてくれたからじゃないですか。
今でも皆が同じ現場に入ると、役者陣が仕事をしやすいように配慮してくれて、凄く助かってるんですよ。」
そう、今もAD時代の仲間に会えば昔みたいに話すけど、やはり立場が違うと気の使い方も変わってくる。
けどそれを感じさせないくらい、昔の仲間は上手く動いていて、現場の雰囲気がとても良い。
綾部さんの部下が居るのと居ないのとでは全然違うのだ。
この事は俳優陣なら大体の人が知っていて、この局での撮影時に綾部さんの後輩たちが居ると当たりの現場と言われるようになった。
「俺達は良い作品を作るために居るからな。どんな些細なことにも気づけるよう日々勉強して、情報共有してるだけだよ。」
へへっと照れたように綾部は笑った。
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※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。