85 / 113
SIDE 光一
しおりを挟む長期勤務のご褒美として、静流が用意したのは無人島でのバカンスだった
行きのクルーザーは静流と晶が運転してくれる
俺と旬と虎と鷹は着くまでカードゲームをする事にした
普通に遊ぶだけじゃつまらないから、罰ゲームつきだ
だがしかし……鷹が全勝しやがった!!
なんでも、大富豪だけは強いらしく一度も負けたことが無いとか…
そして最後の罰ゲームがバカップルになって一日過ごす事だった
俺の相手は旬
大学入学日に知り合って、直ぐに親友といえるほどになった男
見た目は綺麗で、今はそれに輪をかけて色気が出てきている
大学生の時はひたすらストーカー被害にあっていた
見た目は綺麗で中身は毒舌なためM男に好かれやすかった
だが親友の俺から見た旬は、凄く繊細で優しく、可愛い物が大好きで、天邪鬼な性格からわざとツンツンしている機械オタクだった
ストーカー被害に疲弊していた旬を守る為ほぼ毎日一緒に居た
逆恨みで俺を襲おうとした奴も居たが、子供の時から合気道と空手を習ってきて、高校からはボクシングにのめり込んだ俺には襲撃犯なんぞ赤子の手をひねる様なものだった
だが旬は凄く心配し、俺から距離を取ろうとした
そんな時に穂高と仲良くなり3人で行動する様になった
大学2年に上がると、春や樹ともつるむ様になったが、俺たちに囲まれる旬はストーカーから見れば野獣に囚われたお姫さまの様に映ったらしく、行動がエスカレートし始めた
そんな時穂高から静流を紹介された
静流は変なやつで、まるで掴み所のない男だった
気づけば側にいて、俺達の中心になっていた
3年に上がると、進路の事で悩む旬に色香が漂い始めていた
俺達は常に警戒し、ストーカーから皆で守っていた
けど冬の日、旬は風を引いて熱が出て3日間大学を休んでいた
大学の講義中、珍しく旬から電話がかかってきた
旬は皆のカリキュラムを暗記していて講義時間は絶対電話なんてかけてこない
俺は嫌な予感がして、一緒にいた静流に旬の元へ向かうとだけ告げ直ぐに電話に出た
旬は震える声で、誰かが玄関のドアを壊して侵入しようとしていると言った
バイクをかっ飛ばし、旬のマンションへ急いだ
旬の部屋に向かうと、既にドアが壊されていた
急いで中に入ると旬が押し倒され、上の服は切り刻まれただの端切れになっていて、ズボンも脱がされかかっていて必死に抵抗していた
腕から流れる血を見て、俺はついに切れた
後ろから思いっきり背中を蹴飛ばし、吹っ飛んだストーカーを見ながら上着を脱いで旬にかけた
ストーカーは包丁を俺に向け走って来たので包丁を持つ手を蹴り上げそのまま顔を殴った
脳が揺れたのか、白目を向いて後ろへ倒れたストーカーに馬乗りになって何度も殴った
気がついたら背中から旬が抱きついて泣いていて、静流と穂高が俺の両腕を抱き込んで止めていた
春と樹はストーカー男を俺から遠ざけていた
すぐ警察と救急車が来て、ストーカー男はストレッチャーに乗せられ連れて行かれた
俺は過剰防衛の自覚があったから、自分も捕まると思っていたがお咎めなしだった
後から聞いた話では、樹の父親と静流、穂高が警察にストーカー被害届けを毎回提出していたのに捜査せず、春が調べた所ストーカーの中には現役警察官もいた事が判明
その事を公にしない代わりに俺はお咎めなしだったらしい
今思えばあの頃から凄い連携プレーだった
そしてその日を境に俺と旬は親友でいれなくなった
本格的に襲われた旬はほっとく事ができず、旬も抱きついたまま離れなかったので俺が泊まる事にした
「風呂行って来い」と言っても首を横に振るだけ
「寝るか?」と聞いても首を横に振る
「一緒に風呂入るか?」と聞けば頷いた
それでも離れようとしない旬に、仕方なく抱き上げて風呂場に連れていき、服を脱がせ、また抱えて風呂に入った
親友なのに、その白く細い体にドキリとした
潤んだ目で俺がする事をジッと見つめて安心した顔をする旬に邪な気持ちが芽生え始めていた
風呂から上がり服を着せようとしたけどピッタリと張り付き離れてくれないせいで、俺も旬も素っ裸でベッドに寝転んだ
シングルベッドは180cmを超える身長の俺には大分狭かったが、旬は足を絡ませギュッと抱きしめてきた
この体制はヤバい…どうにかしないと…とぐるぐる考えていた俺の耳に届いたのは、旬のすすり泣く声だった
「旬…遅くなって悪かった」
ギュッと抱きしめると旬は、首を振る
「二度とこんな事起させないから。」
「…ごめ…ん………僕の…せいで……」
「ん?……あぁ…あれは俺が勝手にキレただけだから、気にすんな」
「…ありがと………」
「おう。……眠れそうか?」
「……目を瞑ると……あの男の顔が………触られた感触も…………」
思い出したのかカタカタ震える旬に言いようのない気持ちがこみ上げる
「くそっ…………旬、何された?」
「え…?」
「キスは?されたのか?」
「えぇ?何、急に………」
相当驚いたのか震えは止まり旬が俺を見上げた為、体の間に隙間ができた
「全部俺が上書きする。で?キスはされたのか?」
「上書きって……口にはされてないよ!」
「ふーん?……怖かったら言え」
この時の俺はどうかしていたと思う
まるで恋人がレイプされかけたみたいにイラついて、全部俺が上書きして旬の肌に残る感覚を全て自分に塗り替えたくて仕方がなかった
旬の上に跨がり両手を恋人繋ぎしてベッドに縫い付けた
旬が抵抗する間も与えず、唇にかぶり付き好き勝手にキスをした
苦しくなったのか、口を開いた隙に舌を滑り込ませ口内をあちこち刺激した
「んっ………っふん………ん………はぁ………ん」
口を離すたび漏れる喘ぎ声に俺は止まることができなかった
俺が触れると体を跳ねさせ、甘い吐息と声を出し、潤んだ瞳に俺を映し抵抗一つしない
体中にキスマークを付け、何度も旬が達しても俺が何度旬の中で果てても攻め続けた
最後は旬が意識を飛ばした
気づいたら朝まで旬を貪りまくっていたらしい
やっちまった…………
先に起きて旬の体をキレイにしたりシーツを変えたりして頭を冷やした
静流達が来ても旬は眠ったままで、俺達はストーカー男についてや今後のストーカー対策についてを話し合った
旬の心のケアも必要で、皆は俺が適任だと言ったが俺は戸惑った
昨日旬の気持ちを考えず何度も抱いた
俺がやった事はストーカー男とそうそう変わらない
旬が起きた時の反応が怖い
親友が突然自分を性的な目で見たんだ、旬に拒否られる可能性は十分ある
しかし起きてきた旬は皆を見て一瞬体を跳ねさせたものの、直ぐに俺を見てホッとした顔をして隣に座った
「…旬、ちゃんと眠れたか?」
穂高が心配げに尋ねると、いつも通りな笑顔で「グッスリ寝たよ」と笑った
「飯は食ったのか?」と樹に聞かれ、そういえば食べてない事に気づいた
「食べてない…お腹すいた」とお腹を抑えて言う旬に、みんな少し安心したようだった
それから暫くはご飯を買いに行ったり、予定がある時に交代で旬を守ることができるようにということで俺ともう一人で旬の家に泊まり込むようにした
あの日の事はお互い何も言わなかった
日に日に旬は元気を取り戻し、何やら静流とコソコソ話すことが増えていった
その事にモヤモヤする自分が嫌で、旬とはタイプの全く違う男と寝るようになった
旬は何も言わなかったけどきっと気づいていたんだろう
日に日に俺に近づかなくなっていた
喋りはするものの二人きりにならないようにし、側に来なくなった
休学していた大学に復帰してから、旬は変わった
ストーカーに自分から近づき、大好きな機械で事件にならない程度にお仕置きしまくって行ったのだ
その頃から『僕』ではなく『私』と言うようになり、敬語を使うようになった
本来の旬を知らなければ、イメージ通りの人間だろう
そうすることで力のない旬が自身を守れるようになった
静流とコソコソ話していたのはこの事だったのだろう
昔の事を思い出しながら旬の寝顔を見る
あの日以来、こんなふうに触れ合うことなんて無かった
「ん……むぅ……………」
そろそろ暑いだろう、でもせっかく眠っている旬を起こすのは偲びない
「………あつ………………こー?」
薄っすらと目を開けた旬は寝ぼけているのか、昔2人だけの時に呼んでた愛称で呼ぶ
「部屋、戻るか?」
「んー…………」
また体の力が抜け眠ってしまったのがわかる
起こさないよう抱き上げて俺はコテージへと戻った
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
415
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる