人気者達に何故か俺が構われすぎてます。

どらやき

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(素直····ね、)

保健室から、教室に戻ろうとして廊下を歩いていた。授業が終わったのか、廊下には沢山の生徒が出ていた。

「あ、········まじか」
「春馬~!!」

目線の先には、虹宮が居た。

「春馬、ちょっといい?」
「いや、えっと······」
「おけ!行こ。」

そう言って半ば強引に俺の腕を引っ張り、屋上に連れて行った。

初めてはいる屋上は、とても広くて風が吹き抜けていた。少し肌寒い。

「あのさ、春馬はある?」

不意に虹宮が聞いてきた。

「記憶·····?」

まさか、と思いながらも1度知らないフリをしようと思った。虹宮は、そのまま話し続けた。

「うん。僕はさ、日本っていう国で生きてて、ここは【果てない恋の話】の世界、でしょ?」

何かを確信したかのように話す虹宮は少し怖かった。でも、何処か悲しそうな顔をした。

「·······うん。そうだよ。俺も記憶、あるよ。認めたくないけど·····」
「だよね。ゲームと内容が違い過ぎて確信したもん。」

口を少しとんがらせた。裏表はあるのかもしれないが、共通点があって安心感を持ったのか、俺はいつの間にか聞こうと思っていたことを聞いていた。

「で、でもさ····虹宮ってことは、主人公じゃん?なんで、俺に······」

「あんな事をしてくるのか」と聞こうとしたところで話を遮られた。

「春馬はさ、僕の推しなんだよね。」
「推し?」
「うん。だからさ、僕的には高原星吾とくっついて欲しいわけ。分かる?」
「·············分からない。」

とりあえず、虹宮が良くないことを考えていることは分かった。

「なんかね、僕はの主人公らしい。だから、あと2日でこの世界からはいなくなる。」
「へぇ~·······って、2日ぁぁ?!」

あまりにサラッと言うので聞き流してしまった。

「え?期間限定?は?どういう···」
「春馬がさ、目覚めた時、僕の隣にもう1人男性が居たでしょ?その人が所謂"導き人"ってやつで、俺はまだ日本で生きてる。でも、植物状態?だっけ、そんな感じになってるらしい。」
「そんな·······」

植物状態ってことは、もうすぐ死んでしまうかもしれないという事。俺は、まだ虹宮とめっちゃ仲が良いって訳では無い。

でも、居なくなるのは、寂しい······気がする。

「だからさ、僕がこっちの世界にいる間にさっさとくっついてよ。」

虹宮は、本当に居なくなるのか。あと2日でもう、会えなくなるのか。色々考えてしまい、答えることが出来なかった。

そんな俺を見て感じ取ったのか、虹宮は顔を覗き込んできた。

「なに?もしかして、好きって気持ちがないの?」
「えっ、······いや、」

曖昧な俺の答えに虹宮は顔をずいっと寄せてきた。

「······うん。」
「ふ~ん。じゃあさ、想像してみてよ。もし、高原が、春馬と違う誰かとキスをしていたら?」

(·······星吾が?····俺、以外、と?·····あの、優しい顔を?他の人に····見せる?····俺以外に?)

その時、胸がズキリと痛んだ。

「·····え」
「どうだった?」
「·····分からない。····でも、もし、そうなったら、気持ち良く·····受け入れられない、かも····」
「·····な~んだ。分かってんじゃん。」
「いや、別に好きって訳じゃ·····」

自分の言葉に気づいて、言えなくなる。
"ない"と言えなかった。いや、違う。

すると虹宮は、納得したような顔を俺に見せて頷いた。



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