地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき

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「·····律はさ、彼女がいるんでしょ?」 
「え」

(·····あ、間違えたぁぁぁぁぁぁ)

咄嗟に出た言葉に自ら反応をする。違う。そういう事を聞きたいんじゃない。

「······どこで、誰から、聞いたの。」

俺の方を真っ直ぐ見て、真剣な顔立ちで律は聞いてきた。
俺はしまった!と思い、

「い、いや~風の噂だよ」

と答えてしまった。

でも、その反応からして、彼女が本当になんだ、ということが分かってしまった。

(···律に、彼女を、つくって欲しくない)

そう思う時点で、恐らく俺の恋は、もう幕を閉じる。

「零」

凛としてはっきりとした声が、力強く俺の名前を呼ぶ。その声にドキリとする。

「·····何?」
「俺は!····確かに、彼女が、いた。」
「うん」

相槌を打ちながら聞く。

「でも、好きかどうか、分からなかった。·····それでもいいからって、言われて、付き合うことになった。····でも、俺に好きな人が出来たんだ。」
「······うん」
「零······俺ね、零が「ストップ!」」

律が言い終わる前に、俺が遮る。理由は簡単だ。と思ったからだ。

恐らく震え声の俺。でも、律はそんなことを気にせず言い直した。

「零!俺は、零が好きなんだよ!」
「·······っ」

少し声を荒らげた律。

「····んで、·····」
「え?」

(····なんで、なんで言っちゃうんだよ。)

俺の聞きたかった答え。言われたかった答え。言って欲しかった言葉。
でも、今の俺にとってそれは、毒だ。

俺は腐男子だ。

同性同士の恋愛はいいと思う。

でも、あくまで俺は見る専。

俺は、"人殺し"だから、誰かを幸せにするなんて、そんな資格ない。

律が言ってくれた言葉は嬉しいものなのに、胸のモヤモヤが晴れない。
晴れてくれない。

「····律」
「何?」
「それは、きっと、違うよ。」
「········は?」

ドスの効いた声が響く。

「律はまだ中3でしょ?今まで人を好きになってなかったのに、俺みたいな珍しいタイプが現れて混乱しただけだよ。きっと、それは錯覚だよ。」

思ってもいないことは、案外ペラペラと口から出て、少し安心してしまった。

律は、黙っているのか、と思ったら俺の両手首を掴んで、俺の頭の上に乗せるように俺を倒した。

そして、強引にキスをする。

「······な、に·····」
「珍しいタイプ?錯覚?はっ、笑わせんな。····俺の好きを、零が分かったような口を聞くな!」

俺の頬に、1粒の水がこぼれた。
目には涙がたまり、その後ポロポロと流れ落ちてきた。

「·······ごめん。頭冷やすわ。」
「あ、······っ」

乱暴にシャツで涙を拭って、律は家を出ていった。

(·····俺、····最低なことした。)

今になって罪悪感が押しかかってきた。

律のあんな顔、見たことがない。

俺は、もし、自分の気持ちを好きな人に否定されたら傷つく。

「····はっ、·······馬鹿じゃん·····っ」

いつの間にか、目が滲んだ。

そして、部屋には物音一つしなくなった。



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