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3章
two
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マイク越しに聞こえる鮮明な声。
「それは、朔が決めることだ。」
その声に組長吾桑は一瞬怯えを見せた。
「全部聞いてたって訳か。」
「当たり前だろう。それより、朔に会わせろ。話はそれからだ。」
マイク越しから聞こえるその声に吾桑は一瞬躊躇ったが、意を固めた。
「はぁ····分かった。···だが、明後日だ。」
「明後日?」
この"明後日"というのには吾桑ならではの思いがある。
「あぁ。それが嫌なら会わせねぇ。」
睨みつけるその目は威厳を感じさせた。
数秒間があき、彼が答える。
「分かった。明後日だ。·····弦、下がれ。」
「····へーい。」
その言葉に吾桑は安堵の息を吐いた。
*****
朔side
俺は明と呼ばれる男性に、ある平屋の豪壮な家に連れてこられた。
「あ、あの···ここは?」
「ここっすか?ここは、大堂組の城っすね!」
「城·····」
俺はそのまま明さんに付いて、家の中に入る。
中は和の感じが漂う綺麗な家だった。
キュッキュッと歩く度に音がする。
フローリングをした後だろうか。
(こう見ると、普通の··········)
あれこれ考えていると広間と思われる所に連れてこられた。
「あの······ここ、は········」
広間に入ってある人物の姿を俺の目に映した。
(·············え、な、なんで)
明さんを見るともの柔らかい顔つきになって、俺を見て微笑んだ。
「朔」
そう呼ぶその声は俺の記憶を全て持っていく。
(あぁ········そっか、)
あなたに、貴方にもっと、
(もっと····俺を呼んで·····もっと、もっと)
この感情は"恋"ではない、きっと、家族のような"愛"だろう。
会えて嬉しいはず、嬉しいのに、緊張かはたまた怯えか···まるで足が床に固定されたように動かない。
すると、不意に背中をポンと叩かれた。
「····あ、きらさん······俺······」
「うん。」
震える足を押さえて、指先まで冷えた手をさすって········
今まであっただろうか。
こんなにも緊張をしたことが。
ゆっくり、一歩、一歩·····
そして、その距離僅か1メートル。
「朔······朔··································さく」
長い沈黙が続いて、俺から出た言葉は
「············若·········俺、·····守れたか····な······」
言葉を言い終える前に目の前がぼやけた。
「·····あぁ。」
若。俺ね、悲しいんだ。辛いんだ。
逃げてしまいたかった·····俺は俺が『黄金の血液』の持ち主って知って、まだ小さかったから理解は出来てなかったけど、
"良くないこと"って事は分かったんだよ。
珍しいから、という理由だけで特別扱い。
ねぇ、特別扱いって何?俺の人生は幸せなはずなのに····幸せなのに、
ほんの少し、ほんの数時間、学校とは違う·····
その僅かな時間、会えないだけで、近くにいないって分かっただけで、
胸がギュッて締め付けられた。
どうしても貴方と貴方達がいない生活はどこか物足りなかった。
俺を、救ってくれた人。
俺を、幸せにしてくれた人。
俺を、必要としてくれた人。
俺に家族を教えてくれた人。
これを伝えたら、貴方は貴方達はなんて反応する?
驚く?引く?それとも·······
いや、違うか。
きっと優しく抱き締めてくれる。
「それは、朔が決めることだ。」
その声に組長吾桑は一瞬怯えを見せた。
「全部聞いてたって訳か。」
「当たり前だろう。それより、朔に会わせろ。話はそれからだ。」
マイク越しから聞こえるその声に吾桑は一瞬躊躇ったが、意を固めた。
「はぁ····分かった。···だが、明後日だ。」
「明後日?」
この"明後日"というのには吾桑ならではの思いがある。
「あぁ。それが嫌なら会わせねぇ。」
睨みつけるその目は威厳を感じさせた。
数秒間があき、彼が答える。
「分かった。明後日だ。·····弦、下がれ。」
「····へーい。」
その言葉に吾桑は安堵の息を吐いた。
*****
朔side
俺は明と呼ばれる男性に、ある平屋の豪壮な家に連れてこられた。
「あ、あの···ここは?」
「ここっすか?ここは、大堂組の城っすね!」
「城·····」
俺はそのまま明さんに付いて、家の中に入る。
中は和の感じが漂う綺麗な家だった。
キュッキュッと歩く度に音がする。
フローリングをした後だろうか。
(こう見ると、普通の··········)
あれこれ考えていると広間と思われる所に連れてこられた。
「あの······ここ、は········」
広間に入ってある人物の姿を俺の目に映した。
(·············え、な、なんで)
明さんを見るともの柔らかい顔つきになって、俺を見て微笑んだ。
「朔」
そう呼ぶその声は俺の記憶を全て持っていく。
(あぁ········そっか、)
あなたに、貴方にもっと、
(もっと····俺を呼んで·····もっと、もっと)
この感情は"恋"ではない、きっと、家族のような"愛"だろう。
会えて嬉しいはず、嬉しいのに、緊張かはたまた怯えか···まるで足が床に固定されたように動かない。
すると、不意に背中をポンと叩かれた。
「····あ、きらさん······俺······」
「うん。」
震える足を押さえて、指先まで冷えた手をさすって········
今まであっただろうか。
こんなにも緊張をしたことが。
ゆっくり、一歩、一歩·····
そして、その距離僅か1メートル。
「朔······朔··································さく」
長い沈黙が続いて、俺から出た言葉は
「············若·········俺、·····守れたか····な······」
言葉を言い終える前に目の前がぼやけた。
「·····あぁ。」
若。俺ね、悲しいんだ。辛いんだ。
逃げてしまいたかった·····俺は俺が『黄金の血液』の持ち主って知って、まだ小さかったから理解は出来てなかったけど、
"良くないこと"って事は分かったんだよ。
珍しいから、という理由だけで特別扱い。
ねぇ、特別扱いって何?俺の人生は幸せなはずなのに····幸せなのに、
ほんの少し、ほんの数時間、学校とは違う·····
その僅かな時間、会えないだけで、近くにいないって分かっただけで、
胸がギュッて締め付けられた。
どうしても貴方と貴方達がいない生活はどこか物足りなかった。
俺を、救ってくれた人。
俺を、幸せにしてくれた人。
俺を、必要としてくれた人。
俺に家族を教えてくれた人。
これを伝えたら、貴方は貴方達はなんて反応する?
驚く?引く?それとも·······
いや、違うか。
きっと優しく抱き締めてくれる。
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