兄弟がイケメンな件について。

どらやき

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3章

three

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「······ここ·····」

目が覚めてふと気づく。俺は眠っていたという事に。

恐らく泣き疲れたのだろう。

兄達以外で泣くのはこれが初めてでは無いだろうか。

俺は綺麗なベットに丁寧に布団までかけられて寝ていた。

少し重たくなった体を起こして、ベットから足を下ろす。

この家の作りはまだよく分かっていないからゆっくり歩いた。

戸を開け、廊下に出た。

廊下は明るく、先にある大きな窓ガラスを見ると満月の夜だった。

庭には沢山の木々が植えられており、緑豊かな場所になっている。

長い廊下を歩いて、1つ話し声の聞こえる部屋が目に付いた。

(····この声···若?)

俺が思うに、声の主は若と吾桑さんだと思った。

耳を傾け、恐る恐る戸に近づく。

「で?兄貴、朔はどうするんだ。」

若は辺りをはばかるように低く強い声を出した。

「それがな、あいつの兄貴達にバレちまったんだ。」

(···俺の兄貴?····珀兄達の事か?)

「········手が早いな。」 

「バレたからには仕方ない。あいつらが言うには"明後日"らしい。」

「明後日······か。」

「あぁ。·····なにか思う節は無いか?」 

「·····あ、チャーチェス·····」

(····明後日?···チャーチェス?)

聞き耳を立てている俺にはよく分からない話だった。

でも、これが俺に関しての話だということには気づけた。

「そうなんだよなぁ。チッ····めんどい事になりそうだ。」 

吾桑さんの話し声を最後に、恐らく2人の話は終わった。

俺はまた重くなった足で、家をうろついた。

(何がどうなっているんだ?) 

全く理解する事が出来なかった。

(·····まぁ、それもそのはず、か。)

この広くも狭い世界で俺はを捨てなければならないのだ。

(自由って·····残酷なんだな。)

ここで初めて自由が分かったような気がした。

とぼとぼ歩いていたら、いつの間にか知らない場所に来ていた。

家の中ではあるが、後ろを見ても前を見ても横を見ても、自分が何処からか来たのか検討もつかない程似つかわしかった。

「はぁ·········」

不甲斐ない自分に思わず溜息が出る。

頑張って戻ろう、と思い後ろを振り返る。

振り返ろうと、した。

だが実際はどうだろうか、戻りたいのだが1人の細身で燕尾服を着た老爺が立っているのだ。

誰でも驚くだろう。

気配を感じなかったのだから。

ふたりの間に長い沈黙が起きた。

当の朔は驚きのあまり声を発することを忘れて呆然と立ち尽くしていた。

だが、正気を取り戻したのか、老爺の顔を見て唾を呑んだ。

心拍数が跳ね上がる中、顔色ひとつ変えずに問う。

「······ど、どちら様ですか?」
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