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3章

eleven

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「んん~····はぁ、あ、ばかぁ···あっ」

尚兄は俺の首筋にキスをして、いや、身体中にキスを落とした。

温かい体温は、不思議と俺を安心させる。

「んっ、朔····もう、俺らから離れない?」

「んっ····あっ、え?あ、まってぇ···」

質問をしながらも、腰の振りを早くする尚兄。

「ねぇ。どうなの?」

耳を舐められて、身体がゾクゾクとした。

(言って、いいよね。)

「ん、ぁっ····は、なれない···あっ、」

「ほんと?」

「うん、んぁっ」

「約束、だからね、」

また、俺が離れていくのが不安なのか、何度も同じことを聞いてくる。

(·····それほど、心配させたんだ。)

「あっ、····はぁっ、んん!···んぁ···」

「次、どっか行ったら許さないから···」

吐息混じりの声が俺の耳元で、囁かられた。

次に尚兄の、「愛してるよ」の声が耳元を通り、俺の中には尚兄の温かいものが注がれた。

*****

昼が過ぎ、太陽も沈み始めた。

その頃には全員揃っており、明日を安心して迎えることが出来そうな予感がした。

俺は、ベタベタな身体を洗う為お風呂へ入った。

その間に俺は、弦兄と尚兄へ怒りがふつふつと湧いてきた。

なぜなら、

「弦兄!尚兄!!」

ソファでゆっくりくつろいでいる2人の元へ駆け寄った。

2人は、何事!?という雰囲気で俺を迎えた。

「これ!やめてよね!?」

そう、俺の身体は、恐らく2人が付けたであろう、キスマークがこれでもかというほど散っていたのだ。

2人は今気づいたのか、へらへらと笑って謝ってきた。

もちろん、その光景を見ていた珀兄達には少し、いや、かなり怒られた。

何故かって?

「こら!朔、そんな格好で出歩くな!」
 
「そうだ!食べられるぞ。」

「キスマークについては何も言わないんだ!?」

俺が反抗の声を上げると、

「なんでだ?良いじゃねか、俺達のものって感じがして。」

「うん。それに、また付ければ良いからね~」

そんな感じで、楓兄と來がのほほんと言った。

(·······コイツら····)

「そうじゃなくて!体育の時とかどうすんの!?見られるかもでしょ!」

「あ?見せつけてやれ。」

「はぁ?そんな事出来るわけないでしょ!!」

そう、明日は学校なのだ。

久しぶりだから、少し不安。

俺が休んでいた期間は、怪我で病院へ入院していた事になっている。

「ほんっと、ばぁァァァか!」

俺は気持ちが高揚すると、いつもに増して語彙力が低下する。

そんな俺を見て、兄達は微笑ましそうに見ていた。

それからは、ヤケクソだと思い1番安全な葵兄の膝の上に座った。

まぁ、葵兄も俺の首筋に、そっとキスマークをつけたけど。

いつも通りの微笑ましい日常が帰ってきて安心しきった俺はそのまま寝てしまった。

だが、俺は覚えていなかった。

もうすぐ学校で偽パリコレが始まることに····。


*****

「偽パリコレ」の件については、2章のoneを見て頂けると有難いです。
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