私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ

文字の大きさ
1 / 9

風呂敷発見

しおりを挟む

ここはアルテナ子爵家。
私、リリィ・アルテナは15歳。年齢だけで言えば可愛い盛りで、お姫様のように愛されてもおかしくないはずだ。だけど現実はそう甘くない。

「リリィ! 何をボサッとしているのよ!」
ドンッ、と姉のサラが椅子を蹴飛ばす。おっと、これは怒りのモードだな。私の短い人生経験で得た統計によれば、サラ姉様がこのモードに入ると、10分以内に何かしらの雑用が押し付けられる。

「す、すぐに動きます!」
私は慌てて立ち上がり、サラ姉様のお気に入りのドレスを取りに階段を駆け上がった。心の中では文句を垂れ流しながらも、顔では満面の笑みを浮かべている。演技力には自信があるのだ。



そんな日々が続くある朝のことだった。
目が覚めると、頭がズキズキ痛む。何これ、風邪? それとも昨日姉様に押し付けられた階段掃除がハードすぎた?

痛みと共に、妙な感覚が頭に流れ込んできた。なんだろう、この光景。オフィス? パソコン?

えっ、えっ、待って。これは私の記憶? いや、私、まだ15歳だし、こんなもの知らないはず……。

「……これ、私、前世持ち?」

うん、そうみたいだ。どうやら私は元の世界では、バリバリ働いていたキャリアウーマンだったらしい。名前は確か「青山玲奈」、30歳。独身で自由気ままに生きてた……いや、全然自由じゃないじゃん! 残業続きでブラック企業にいた記憶がリアルすぎる!

「二度目の人生、こんな家で終わらせられるかーっ!」



それからというもの、私は「自由になる方法」を模索し始めた。奴隷のように使われる毎日に嫌気が差していたのだ。
ある日、暇を見つけて屋敷の倉庫を漁ることにした。昔の私の経験上、こういう場所には何かしら面白いものが眠っている。

「お、これいい感じ!」
埃をかぶった古い箱を開けると、中には鮮やかな布が入っていた。色とりどりで柔らかい手触り。「これ、何に使うんだろう?」

その布を広げると、突然ふわっと光が溢れた。

「ひゃあっ!」
慌てて手を離したけど、布は宙に浮いたまま。やばい、魔法のアイテムじゃんこれ!

すると、布から音が響いた。

「風呂敷の使用者として認定しました。どうぞご自由にお使いください。」

風呂敷? なんだそれ。とりあえず説明を求めてみると、この布は時間を巻き戻す力があるらしい。え、もしかして例のあいつのホニャララ風呂敷?めっちゃ欲しかったやつ!無敵じゃない?



最初に試してみたのは、こっそりつまみ食いしたクッキーの箱だ。昨日の夜、姉様が全部平らげて空になってたやつ。

風呂敷を被せて、「時間を戻して」とつぶやくと……。

「えっ、本当に戻った!」

箱の中には新品のクッキーが詰まってる! 思わず歓喜の声を上げた私だけど、その時の脳内セリフはこれだった。

「これ、絶対お金稼げるやつだ!」



この風呂敷、やり直しが効くと分かればこっちのものだ。私はさっそくサラ姉様への「小さな復讐」を開始することにした。

まずはドレス。姉様の高級ドレスをこっそり汚す、姉様が騒ぎ出したらこっそり新品にもどす。姉様は怒り狂うけど、汚れがないのでかえってまわりに変な目で見られる。

次は母。彼女の趣味である刺繍の完成品を風呂敷で巻き戻して未完成に戻す。地道に積み重ねた作業が台無しになる様子を見て、思わず口元が緩んでしまった。



風呂敷を使いこなすうち、私は気づいた。この道具さえあれば、家を出て自由になれるのではないか?

ただし問題が一つ。私には「自由になった後」の計画がまだない。せっかくの風呂敷を無駄にしないためにも、周到に準備を整える必要がある。



ある日、市場に行く用事を任された私は、風呂敷の力で魚屋の値段交渉を完璧にやり直した。「時間巻き戻し」によって、魚屋のおじさんから「商才がある」と褒められる始末。

「お嬢ちゃん、よかったらうちで働かないか?」

15歳児に何を言ってるんだおじさん。でも、この誘いは悪くない。人脈を増やすのは自由への第一歩だ。



そんな私の活動を嗅ぎつけたのか、サラ姉様が突然、「リリィ、最近妙に調子に乗ってるわね」と詰め寄ってきた。しまった、バレたか?

いや、ここで焦ってはいけない。風呂敷がある限り、私は無敵だ。姉様の追及に対しては「風呂敷で過去を巻き戻して言い逃れ」のコンボで対抗。姉様はますます苛立ち、最後には泣きながら母に訴えていたけど、母が「姉として器が小さい」と一蹴して終了。



「この家、やっぱり私の居場所じゃないな。」

風呂敷を片手に、私は屋敷を抜け出す計画を立て始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

ボク地方領主。将来の夢ニート!

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
とある事情から名ばかり辺境伯として辺境の地へ飛ばされた家柄のラドウィンは仕事をしたくない。 昼間に起きて、本を読み、飯を食って寝る。そんな暮らしの為だけに生きるラドウィンの元に皇帝からの使者がやって来た。 「大規模な反乱の鎮圧に出ろ」その命令を受けたラドウィンの、何としても命令をサボる戦いが始まる。

彼女が微笑むそのときには

橋本彩里(Ayari)
ファンタジー
ミラは物語のヒロインの聖女となるはずだったのだが、なぜか魔の森に捨てられ隣国では物語通り聖女が誕生していた。 十五歳の時にそのことを思い出したが、転生前はベッドの上の住人であったこともあり、無事生き延びているからいいじゃないと、健康体と自由であることを何よりも喜んだ。 それから一年後の十六歳になった満月の夜。 魔力のために冬の湖に一人で浸かっていたところ、死ぬなとルーカスに勘違いされ叱られる。 だが、ルーカスの目的はがめつい魔女と噂のあるミラを魔の森からギルドに連れ出すことだった。 謂れのない誤解を解き、ルーカス自身の傷や、彼の衰弱していた同伴者を自慢のポーションで治癒するのだが…… 四大元素の魔法と本来あるはずだった聖魔法を使えない、のちに最弱で最強と言われるミラの物語がここから始まる。 長編候補作品

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

妹が嫁げば終わり、、、なんてことはありませんでした。

頭フェアリータイプ
ファンタジー
物語が終わってハッピーエンド、なんてことはない。その後も人生は続いていく。 結婚エピソード追加しました。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

雨の少女

朝山みどり
ファンタジー
アンナ・レイナードは、雨を操るレイナード家の一人娘。母キャサリンは代々その力を継ぐ「特命伯爵」であり、豊穣を司る王家と並び国を支える家柄だ。外交官の父ブライトは家を留守にしがちだが、手紙や贈り物を欠かさず、アンナは両親と穏やかな日々を送っていた。ある日、母は「明日から雨を降らせる」と言い、アンナと一緒に街へ買い物に出かける。温かな手を引かれて歩くひととき、本と飴を選ぶ楽しさ、それはアンナにとってかけがえのない記憶だった。 やがて雨が降り始め、国は潤ったが、異常気象の兆しが見え始める。キャサリンは雨を止めようと努力するが、うまくいかず、王家やサニダ家に助けを求めても返事はない。やがて体を壊し、キャサリンはアンナに虹色のペンダントを託して息を引き取った。アンナは悲しみを胸に、自らの力で雨を止め、空に虹をかけた。 葬儀の後、父はすぐ王宮へ戻り、アンナの生活は一変する。ある日、継母ミラベルとその娘マリアンが屋敷に現れ、「この家を任された」と告げる。手紙には父の字でそう記されていた。以来、アンナの大切な物や部屋までも奪われ、小屋で一人暮らすことになる。父からの手紙はミラベルとマリアンにのみ届き、アンナ宛てには一通も来ない。ペンダントを握って耐える日々が続いた。 「なろう」にも投稿しております。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

処理中です...