幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ

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ポーション

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「……あ、やっぱりギルバート様です」

うちの村の門から見えた騎士の姿を見た瞬間、私は思わず声が漏れてしまいました。


「久しぶりだね……いや、まだ数か月ぶりか?」

「ええ、前回は耳か……じゃなかった、教会から帰る時でしたね」

危ない、耳かきと言うところでした。
あれは、もう秘密の中でも最重要機密です。
わたしたちが善意ある置き換え(勝手にそう呼んでます)をしたのも騎士団には内緒なのです。

そしてギルバート様の隣には、ひときわ威圧感のある人物が。

ベルナー・クラウス副団長である

「本日はようこそセデル村へ……」

背筋が勝手に伸びてしまいました。
ベルナー様は相変わらず、氷のような空気を発してるね。
さて、今回騎士団の皆さんが各地に派遣されているのは、例の“耳かき騒動”が原因なんだけど、もちろん、私は耳かきについてはなにも知らないふりをします。
知らないです。
ええ、本当に。
少なくとも、何かを交換したとは言っていません。はい。

しかし、この派遣はただの罰というわけではありません。
村や街に出る魔獣討伐も、ちゃんとしたお仕事なのです。

そして、ちょうど隣町にも騎士団が来ていたらしく——
その町にたまたま行っていた村の青年たちが、家に帰ってきて話を教えてくれました。

「なぁリナ、あの騎士様らは結構気さくだったぜ。村人の家の屋根直したり、井戸掃除手伝ったりしてた」
「騎士様って、思ったより働き者なんですね……!」
「まぁ、罰らしいけどな」

それから、話題は自然と例のポーションに。

「そういや、その騎士団が配給されたってポーション、セデル村のやつだったぞ」


「最近人気みたいで隣町の薬屋でも格安で売ってるって喜んでたぞ」

青年達によると、この遠征にあたって騎士様方に以前納品したセデル村のポーションが配給されたようだ。
例の流行病の時は、騎士団は優先的に聖環で治すことができたし、これまでの王都勤務ではポーションを使う事はあまりなかったらしいが、遠征ではポーションの出番が多くこれがよく効くと。
怪我にはもちろん、ちょっとしたホームシックや慣れない討伐による気鬱にも効くと。

「なんでもセデル村の村長さんというかヘンリー様が、カール侯爵様に感謝して格安で納めてるとか言われてるらしいぞ」

「…………」

感謝?

格安?

……うちの村、貧乏なんですけど?

感謝も格安も初耳ですけど……

隣町で売られているポーションは、セデル村で作られたものだ。
しかもセデル村から下ろした値段よりもかなり高い。
つまり激安でセデル村から買ったポーションが、隣の街では何倍の値段にもなって売られている。
その値段はうちがギルバート様に直接売っているのと同じくらいの値段で、御礼も兼ねてかなり高く買ってくれているのかと思っていたが、実は適正な価格だったらしい、いや、むしろ王都と比べたらまだまだ安いとのこと。
王都のポーションの値段がおそろしいことになってるけど、それはともかく、
うちから隣町での卸価格は安すぎではないだろうか?
隣町はカール侯爵のお膝元だ。
前エルミナ様に聞いた話からも、カール侯爵と言うのはあまり信用ならない人物のようだし。
ぜひ私の性格を良くする魔法を試してみたいものだ。



ポーションの話をギルバート様にいうとギルバート様も苦い顔をしていました。

ベルナー副団長が腕を組み、低い声で言います。

「村の富は村民のものだ。本来の価値以上に搾られてはならん」

うわ、めちゃくちゃ正しい……!

ギルバート様はこちらを見て、柔らかく微笑みました。

「リナさん。あなたのお父様……ヘンリー殿は、とても良い方です。ですが、良い人が損をしてよい理由はありません」

「……はい」

私はぎゅっと拳を握りました。


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