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電話

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新来光明に代表として電話をかけるのは俺に決まった。

洋介君や母だと冷静に聞けないかもしれないからだ。

「プルルル……プルルル……」

呼び出し音が流れる。
それに合わせて俺の鼓動も高鳴った。

「プルルル……はい。新来光明事務所です」

出た……!
俺は単刀直入に聞いた。

「神崎実咲という人が来ていませんか?」

「神崎実咲さんですか?ーーええ。来ていますよ」

アッサリとしたものだった。

実咲が居る。

それだけで十分だった。

「ずっと家に帰ってきてなくて……電話変わって貰えませんか?」

「少々お待ちください」

すると保留のメロディーが流れ出した。
俺は電話を待ってる間、指でOKのサインをして2人に知らせた。

「まぁ……!」
「良かった」

母と洋介君は顔を見合わせて喜んでいる。

そしてその時は来た。

「はい。実咲です」

「実咲か?!俺だ!兄貴の大和だ」

「分かってる」

妙に実咲が落ち着いていることに俺は不思議に思った。

「実咲帰ってこいよ。母さんも洋介君も心配してるんだぞ」

「ーーそれは出来ない」

「はぁ?!」

「まだやる事が残ってるから」

「やる事って?」

「お兄ちゃんには分からない事」

「何だよ。言えよ」

「言えない。まだ」

「何だよ。子供2人ほったらかして」

子供と言った瞬間実咲の声が変わった。

「子供達のためなの。お兄ちゃんには分からないわ!じゃあ切るーープツン!ツーツー」

「おい待てまだ話が!」

「ツーツー」

電話は切れてしまった。

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