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黎明編 ザコタの過去の悪行(幼少期)

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 迫田 陽太は、幼少期にものすごく調子に乗っていた。
かなり大きな会社の社長令息。本妻との間に生まれ、ただ一人の後継ぎ息子として生を受け、幼稚園では、父親の部下の子供達を取り巻きとしてお山の大将気取りだった。むしろ、これを一緒にしたら猿山のお猿に失礼なほどである。と、中学三年生に成長した後の彼はこの頃の自らの行いを、思い出してそう想った。

幼稚園で、彼は、可愛い男の子。特にメガネっ子のタクトくんを見ると仲良くなりたいのにその方法がわからずに、その子が大切にしてるものが欲しくなったり、それを取り上げて隠すか、悪いと壊してしまったりと悪さばかりを繰り返していたのだ。

取り巻きたちも、それを止めないばかりか、先生の目を誤魔化すのに手をかして一緒に、その子を虐めようとしていたのだが、彼はそれを嫌がりこの子を虐めるのは俺だけだぞ!と馬鹿なことをやっていた。悪ガキの初恋にしてはありがちである。

 タクトくんは、意地悪ばかりの大嫌いなやつの名前なんか絶対に覚えてやらんし呼んでたまるもんか!とばかりに呼びかけられても完全に無視していて、レッサーパンダのぬいぐるみを抱えてにらみつけてくるか、ヨータ以外の男の子。ミツくんにばかり、懐いてべったりとしがみついてばかりいた。

ミツくんは、みっちゃんと他のこからは、呼ばれていて園の人気者の京言葉の男の子である。

「タクは、うちのいいひとや。きちゃないてぇださんといてや、おまえなんか、うちがあいてに、なったるまでもないわ、こんのザコスケがっ。一昨日こいやっ。だほぅ!」と見事な啖呵を幼いながらに切ってみせたのである。

ヨータは、ミツくんにものすごく嫉妬した。ひどい癇癪をしていたが、彼に反抗する他の直接は関係がない虐めてもいない子達が、名字の迫田をザコタと呼ぶようになり、誰も彼のことをヨータくんとは、呼んでくれなくなっていく。

ミツくんと、掴み合いになるまえに、クロトくんやカナちゃんやユキちゃんたちが園長先生を連れてきた。父親の耳に秘書を通して耳に入り、無理矢理、尊敬してる父に一緒に頭を下げさせられて、タクトくんにあやまるようにといわれた。それで、しぶしぶ、ごめんなさいしたのだ。
でも、ついぞ、タクトくんには、許してはもらえなかった。それも無理もないことである。


そんなある日、彼に戸籍上の兄の悠一郎(ゆういちろう)ができたのだ。
父親の親友が病で亡くなり身寄りのないその息子を引きとったのだ。年齢が10才も離れていたからか、彼は、陽太が意地の悪いことをしても笑って許してくれたが、それも、気に食わなかった。

その後、すぐに、陽太をとても可愛がってくれていた美しい実母の月埜(つきの)さんが、黒い子猫をかばって事故死する。大好きな母が死ぬ原因になったその子猫を捕まえて虐めてやろうとしたザコタ。

その子猫は、カナちゃんが引き取っていったから、手が出せなかった。

「ぜえったい、このこは、わたさないもん。えぐっ、ボクのねこさん、いじめちゃ、メェっなの!クロトくん、助けてぇ。ウェーン…。」

その泣いてるボクっこの女の子?のカナちゃんに子猫を引き渡すようになおも言ったら、カナちゃんの彼氏のクロトくんに「この子猫を守ってくれたお前のお母さんの死を無駄にする気か!」と一喝されて少しだけ目が覚めたのだが、まだ素直には、なれやしなかった。
おぼえてろとの捨てセリフは完全にザコタだった。


父の大地は、母とは恋愛結婚だったので陽太のことをますます甘やかしてしまう。


ザコタは、この時点は、まだ幼稚園児で5才だったから無理もなかったのかもしれない。

小学生になったばかりのザコタには、まだ取り巻きが2人居残っていた。他のこは、別の小学校に行ったことをこれ幸いにと離れて行ったのだった。

ザコタに付き従うこの2人は、ザコタの容姿は気にいっていたのだろうか?

ザコタは、顔のパーツは、母に似ていた。でも、底意地の悪さが隠せておらず、いかにもな、悪役令息だった。

ザコタは、あまりに幼い頃から、家族以外にはザコタと呼ばれていたために自分の名前が最初からそうであったかのように馴染んでしまっていたし、雑魚の言葉の意味も知らないので自分からザコタと名乗るほどだった。この2人にも、ザコタさんと呼ばれていて実は、馬鹿にされてさえいたが、気がつかずに威張りちらす、とんでもないやつ。

小学生にあがると、クロトくんが引っ越していて居なかった。カナちゃんはというと、園児の頃は女の子の格好だったのに今は、どうみても可愛い男の子だった。そこが、気になってしまって、どっちなのか確かめようとした。

半ズボンを脱がそうと押さえつけるという最低最悪な方法でだ。

3人ともが、駆けつけたブチギレのタクトくんにフルボッコに殴られた。

何も知らない先生からの追及は、ミツくんとカナちゃんがタクトくんをかばってくれた。

なぜか、それでザコタは、タクトくんにまたもや惚れなおしたのだ。

取り巻きも解散して、改心はしたのだけれど悪行がウワサで広まり今度は、ザコタたちが虐めにあったが。

なんにせよ、「俺の目の前で胸くそ悪いことをするな」と虐めを止めてくれようとしたのも彼だったのだから惚れてしまうのも無理もない…。

それからは、ずっとザコタは、日陰の存在だった。自業自得である。

そして中学生のころ、父が再婚して新しい母と連れ子の妹ができた。

この妹が、結花ちゃんが、ものすごく可愛いくて、この頃には、兄の悠一郎にも慣れてきていて、皆がすごく優しい人たちだったので、ザコタの性格は徐々に更正されていった。いつの間にやら、立派な健全にブラコンとシスコンになっていった。

そして、遠い高校をえらんでの高校生デビューの時期がやって来る少し前に、彼らの両親が帰らぬ人となった。

喪主は悠一郎がやってくれた。結花ちゃんは、まだ7才なのに…。施設に入れず悠一郎が2人を育ててくれた。

ザコタは、いつか陽太に戻れるように努力することにした。

高校に行かせてくれる恩を還さねばならないし妹があのザコタの妹と陰口をいわれたくない

彼を名前を呼んでくれるのは、もう彼らだけになっていた。

















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