ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~

あきさけ

文字の大きさ
5 / 100
第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第2章 アイリーンの街で冒険者になりたいな

5. メルカトリオ錬金術師店での一夜

しおりを挟む
「……困った、宿、どこも取れなかった」

 はいどーも、宿なき子のシズクです……。

 ミネルとキントキを連れて普通の宿に泊まろうとすると「動物はお断り」といって追い出され、高いのを覚悟でテイマー専用の宿に向かうと「君はテイマーじゃないだろう?」といって追い出されてきました。
 日もどんどん沈んでいき、もうすぐ日没。
 このままじゃ、街中なのに野宿になっちゃう……。
 どうしよう……。

「あら? シズクちゃん? どうしたの、こんなところで」

「……メイナさん?」

「ええ。薬草の買い取りが終わったのに、私のお店前まで来るなんて珍しいわね?」

 あ、ここ、メルカトリオ錬金術師店……。
 知らない間にこんなところまで歩いてたんだ。

「……ひょっとして、訳あり?」

「……はい。いつもの宿から追い出されて、街中の一般宿からはすべてお断りされてきました」

「ああ、ミネルとキントキ」

「はい。動物と一緒だと泊められないと言われて……」

「テイマー向けの宿は?」

「テイマーじゃないだろうって言われて……」

「そんな小動物をテイムして歩くなんて普通いないわよね」

「はい……」

『酷いよね! 僕たちだってテイムされているのに!』

『人から見れば普通の動物と大差ないのじゃろう』

「キントキとミネルもなにか言ってるけれど……私じゃわからないかな?」

「そうですよね。私にはわかるんですけど」

「とりあえず、私のお店に入りなさい。そして、しばらくの間、泊まっていきなさい」

「えぇっ!? メルカトリオ錬金術師店にですか!?」

「そうよ。先代オーナーは子供もたくさんいたらしいから部屋は余っているの。部屋のお掃除だけしてもらえれば、すぐにでも使えるから泊まっていきなさいな」

「でも……そんなに甘えていいんですか?」

「ステップワンダー同士、気にしないの。私はお店の片付けもあるから少し遅れるけど奥で待ってて」

「あ、私も手伝います!」

「じゃあ、表の看板だけ片付けてもらえるかな? 私は店内のお片付けをするから」

「はい!」

 よかった、野宿にならなくてすんだ!
 でも、メルカトリオ錬金術師店ってそんなに広いのかな?
 お邪魔だったら今日だけ泊めてもらって、明日からはちゃんとした宿屋を探そう。

 そう思ってたんだけど……。

「ここがメルカトリオ錬金術師店の居住スペース……」

「ね? 広いでしょう?」

「驚きました。お店のスペースよりも広いですね」

「うん。私ひとりじゃ困っちゃうくらいの広さなの。だから、よければこの街にいる間だけでもしばらく泊まっていって?」

「じゃあ、お言葉に甘えます。でも、宿代とかは払いますね」

「そんなこと、気にしなくてもいいのに……」

「だめです。そこはけじめをつけないと」

「わかった。お夕食はもう済んでる?」

「はい。街の食堂で食べてきました」

「じゃあ、お夕食は必要ないね。お部屋に案内するから、先にお掃除をお願い」

「はい!」

 メイナさんに案内してもらったメルカトリオ錬金術師店の住居スペースだけど、本当に広かったなぁ。
 メイナさんが使っている部屋以外にも寝室が4つもあって、ひとつは先代オーナーさんの寝室でいまはメイナさんの寝室になっているらしい。

 私は一番狭い寝室を選ぼうとしたんだけど……メイナさんたっての希望によりメイナさんが昔使っていたというメイナさんの隣の寝室へ泊まることになったよ。
 正確には残りの寝室には家財道具がもう置いていないそうなんだ。
 私、床でも寝られるんだけどなぁ。

 ともかく、お掃除をしてお部屋を使える状態にしているとメイナさんもやってきて手伝ってくれた。
 ひとりじゃ大変だろうからって。
 メイナさんって本当に優しい。

「……そう、あなたの『天職』って小動物と契約する能力だったのね」

 メイナさんに私の『天職』、〝ペットテイマー〟について少しだけ話をすることにしました。
 ミネルの許可が出ている範囲だけでも話していいって。

「そうらしいです。他にもいろいろできますが、それは他人に喋るなってミネルが」

「賢いのね。その鳥さんは」

「シロフクロウっていうらしいですよ」

「そうなんだ。ミネル、私の方に来る?」

「……行かないそうです。自分の爪は鋭いから普通の人の肌に止まっちゃうと怪我をさせるって」

「あなたは頑丈なレザーアーマーを身につけているものね。でも、寝るときはどうするの?」

「……部屋の外の木に止まって寝るそうです。ただ、本来は夜行性ですし私との契約で数日なら眠らなくても平気になったらしいですが」

「でも、眠らなくちゃだめよ、ミネル。いざというときのためにね?」

「ホッホッホッホー」

「わかったって言ってます」

「それならよかった。ところでこっちの小さい犬の……キントキちゃんは私と積極的に遊んでいるけど平気?」

「……私以外の人で優しそうな人を見るのが初めてなんだそうです。だから遊んでほしいって」

「そっか。なにをして遊ぶ?」

「ワン!」

「本当は追いかけっこがいいけど部屋の中でできないから、なにか柔らかくてかじりついても問題ないものを投げてくれれば取ってくるそうですよ」

「軟らかくてかじりついても問題ないもの……これかな?」

 メイナさんが取り出してきたのは布を球状にした……軟らかそうなボール。
 一体なんなんだろう?

「昔、手慰み代わりに作った綿を詰めたボールなの。これなら軽いし問題ないでしょう?」

「キャンキャン!」

「早く投げてほしいそうです」

「行くわよ、えい!」

 メイナさんが投げたボールをキントキが追っかけていき、それを拾ってメイナさんのところに持ち帰ってきた。
 これ、もっと投げてって催促だよね。

「もっと投げてほしいの? もうちょっとだけだよ? もうすぐ寝る時間だからね」

「キャウン……」

「明日も遊んであげるから。行くわよ、えい!」

「ワンワン!」

 そのあとも寝る間際までメイナさんとキントキの遊びは続き、メイナさんが自分の部屋に戻るときはキントキも大満足していたようだったなぁ。
 綿のボールも私がもらっちゃったし、明日からは私が遊んであげないと。

 ともかくこの日はこれで就寝。
 ミネルは宣言通り窓から外に出て木の枝に止まって眠るようだし、キントキは私のベッドの下で眠ることにしたみたい。
 明日もいい一日でありますように。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...