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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第6章 アイリーンの街の危機
27. シズク、猛特訓
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「《魔の鉤爪》! 《魔爪》! 《魔爪》! 《魔の鉤爪》!」
オークが〝ウルフのコロニー〟を占拠していることを知った翌日早朝、たくさんの上位冒険者たちが〝ウルフのコロニー〟のオーク除去へと出ていった。
街が襲われても平気なように、半数程度は残っているそうだけどそれでも私は心配。
そんな中、私ができることはただひとつ、とにかく〝ペットテイマー〟としてのスキルを鍛えることだった。
もう長いこと来ることがなかった〝ゴブリンの森〟でウルフを退治し、仲間のウルフを引き寄せる。
そして、それらを仲間の手を借りずに倒していくんだ。
何回も押し倒されたことはあるけれど、そういうときは落ち着いて手を動かせるときはダガーを首に突き刺してねじりきり、腕が使えないときは食らいつかれる前に《魔の鉤爪》や《魔爪》で頭をはね飛ばしてしまう。
戦利品の回収だけはキントキに任せているけれど、それ以外は全部ひとりでやっていた。
少しでもめまいを感じたらマジックポーションを飲んで強制的に魔力を回復し、続きを行う。
それを朝からずっと繰り返し……いまはどれくらい時間が経ったんだろう?
〝ゴブリンの森〟っていつも薄暗いし、明るさで時間がよくわからないんだよね。
ともかく、次の群れが襲いかかってくるのを待たないと……。
『シズク。そろそろ打ち止めじゃ』
「ミネル?」
『もう近くにウルフの群れはいないよ』
『大量の血の臭いを嗅ぎつけて逃げ出していったわさ』
『あたちの《気配察知》範囲内になにもいなくなったの』
「そう。じゃあ、場所を変えて……」
『じゃから、シズク、今日はもうここまでじゃ』
「ミネル! 私はもっと強くなりたいの!」
『気持ちはわかる。だが焦っても仕方がない。キントキ、今日の獲物は?』
『83匹だよ。もうすぐお昼なのにこれだけ倒しているんだもの、これ以上倒して持ち帰ってもお肉屋のおじさんや毛皮屋のお爺さんが困るんじゃない?』
「あ、まだお昼になってなかったんだ。それならまだ……」
『いい加減にするわさ!』
午後になっても続けられる。
そう言おうとしたら、モナカに顔をひっかかれた。
モナカの爪ってとがってて鋭いから結構いたい!?
『ミネルも言う通りこれ以上焦っても仕方がないわさ! 少し冷静になるわさ!』
『あちしもそう思うの。レザーアーマーに傷がついてないのはさすがだけど、何度も押し倒されて危ない目にあっているの。これ以上危ないことをするなら、あたちたちがウルフを倒しちゃうの。あ、あと、いまモナカにつけられた傷は治してあげないの』
シラタマが冷たい。
でも、そんなに焦っていたかな?
『とりあえず沢に行くぞ。それで自分の顔をよく見てみろ』
「え、うん」
私は〝ゴブリンの森〟を出て〝ウルフの林〟にある沢へやってきた。
途中、ウルフにも遭遇したけど、私のことを見ると襲ってこないで一目散に逃げ出すんだよね。
どうしたんだろう。
『ほれ、沢の水で自分の顔を見ろ』
「うん……うわ、返り血で真っ赤だ」
私の顔はウルフの返り血を浴びて真っ赤に染まっていた。
顔だけじゃなくて髪やスカーフまで赤くなっちゃってる。
スカーフ、赤く染まったままにならないよね……。
『とりあえず、返り血を洗い落とせ。お説教はそれからだ』
「え? この季節の沢の水ってとっても冷たい……」
『それも罰のうちだ』
「はい……」
私は冷たいのを我慢しながら顔や髪、スカーフについた返り血をすべて洗い流した。
スカーフも血で赤く染まらずに済んで本当によかったよ。
モナカにつけられた傷を洗うとき冷たさとヒリヒリするのとで二重に痛かったけど。
『さて、お説教じゃな。その前に沢の上に行くぞ。いまなら誰も見ていないし、ウルフどもも寄ってきていない。あそこなら、安全に説教ができる』
「お説教は確定なんだ……」
『当然』
「ですよね」
私は《静音飛行》でみんなを沢の上まで運んだあと、全員からがっつりお説教をされました。
それこそ、お昼頃から始まって日が傾く頃までずっと。
みんなに心配をかけたっていうことなんだろうけど、私も強くなりたいんだよね。
どうしたらいいんだろう?
『……まあ、説教は以上じゃ。次、〝ペットテイマー〟が強くなるための方法じゃな』
「え? ミネル、知ってたの!?」
『伝聞ならばな。ひとつはお主が午前中やっていたように、ひたすらスキルを使い続けること。もうひとつは強敵にスキルを使い挑んで勝つことだそうだ』
「強敵……ゴブリンとか?」
『お主にとってゴブリンは強敵扱いだろうが、実際には格下じゃ。強敵と言えるのはオーククラスよりも上じゃろう』
オークよりも上。
昨日、《魔の鉤爪》一撃で倒せなかった相手よりも格上じゃないと強くなれない。
やっぱり〝ペットテイマー〟って楽じゃなかった。
『とにかく、安全に鍛えたいなら毎日少しずつウルフを狩れ。いまのお主ではオークはまだ早い』
「それって……私がまだ弱いから?」
『魔力が足りていない。《魔の鉤爪》も魔力の強さに応じて威力が上がる。オークを一握りで潰せなかったということは、魔力がまだ低いということなんじゃろう』
魔力か……。
ステップワンダーって生まれつき魔力の低い種族だからなぁ。
魔法系の『天職』どころか、スキルを授かることだって稀なのに。
『わちの《魔爪》も魔力依存の切れ味のはずだわさ。シズクは街に納めるだけのウルフを狩ったら魔力の修行をするべきだわさ』
『あたちもそう思う。《気配察知》や《ミラクルキック》だって魔力が上がれば効果が増すの。魔力は鍛えるべきなの』
『だってさ、シズク。僕の貸せるスキルだと《土魔法》が魔力依存だけど、そっちも鍛えた方がいいよね。シズクには戦闘経験も大切だけど、魔力を先に鍛えなくちゃだめだよ』
「みんな。わかった、明日からは魔力を鍛えることにする」
『それがよい。む、朝出ていった冒険者どもが帰ってきたようじゃぞ』
「大変! 迎えに出ないと!」
私は急いで薬草を採取して沢から飛び降り、帰ってきた冒険者の皆さんと合流した。
でも、大怪我を負っている人たちもいて……一体どうなっているの!?
オークが〝ウルフのコロニー〟を占拠していることを知った翌日早朝、たくさんの上位冒険者たちが〝ウルフのコロニー〟のオーク除去へと出ていった。
街が襲われても平気なように、半数程度は残っているそうだけどそれでも私は心配。
そんな中、私ができることはただひとつ、とにかく〝ペットテイマー〟としてのスキルを鍛えることだった。
もう長いこと来ることがなかった〝ゴブリンの森〟でウルフを退治し、仲間のウルフを引き寄せる。
そして、それらを仲間の手を借りずに倒していくんだ。
何回も押し倒されたことはあるけれど、そういうときは落ち着いて手を動かせるときはダガーを首に突き刺してねじりきり、腕が使えないときは食らいつかれる前に《魔の鉤爪》や《魔爪》で頭をはね飛ばしてしまう。
戦利品の回収だけはキントキに任せているけれど、それ以外は全部ひとりでやっていた。
少しでもめまいを感じたらマジックポーションを飲んで強制的に魔力を回復し、続きを行う。
それを朝からずっと繰り返し……いまはどれくらい時間が経ったんだろう?
〝ゴブリンの森〟っていつも薄暗いし、明るさで時間がよくわからないんだよね。
ともかく、次の群れが襲いかかってくるのを待たないと……。
『シズク。そろそろ打ち止めじゃ』
「ミネル?」
『もう近くにウルフの群れはいないよ』
『大量の血の臭いを嗅ぎつけて逃げ出していったわさ』
『あたちの《気配察知》範囲内になにもいなくなったの』
「そう。じゃあ、場所を変えて……」
『じゃから、シズク、今日はもうここまでじゃ』
「ミネル! 私はもっと強くなりたいの!」
『気持ちはわかる。だが焦っても仕方がない。キントキ、今日の獲物は?』
『83匹だよ。もうすぐお昼なのにこれだけ倒しているんだもの、これ以上倒して持ち帰ってもお肉屋のおじさんや毛皮屋のお爺さんが困るんじゃない?』
「あ、まだお昼になってなかったんだ。それならまだ……」
『いい加減にするわさ!』
午後になっても続けられる。
そう言おうとしたら、モナカに顔をひっかかれた。
モナカの爪ってとがってて鋭いから結構いたい!?
『ミネルも言う通りこれ以上焦っても仕方がないわさ! 少し冷静になるわさ!』
『あちしもそう思うの。レザーアーマーに傷がついてないのはさすがだけど、何度も押し倒されて危ない目にあっているの。これ以上危ないことをするなら、あたちたちがウルフを倒しちゃうの。あ、あと、いまモナカにつけられた傷は治してあげないの』
シラタマが冷たい。
でも、そんなに焦っていたかな?
『とりあえず沢に行くぞ。それで自分の顔をよく見てみろ』
「え、うん」
私は〝ゴブリンの森〟を出て〝ウルフの林〟にある沢へやってきた。
途中、ウルフにも遭遇したけど、私のことを見ると襲ってこないで一目散に逃げ出すんだよね。
どうしたんだろう。
『ほれ、沢の水で自分の顔を見ろ』
「うん……うわ、返り血で真っ赤だ」
私の顔はウルフの返り血を浴びて真っ赤に染まっていた。
顔だけじゃなくて髪やスカーフまで赤くなっちゃってる。
スカーフ、赤く染まったままにならないよね……。
『とりあえず、返り血を洗い落とせ。お説教はそれからだ』
「え? この季節の沢の水ってとっても冷たい……」
『それも罰のうちだ』
「はい……」
私は冷たいのを我慢しながら顔や髪、スカーフについた返り血をすべて洗い流した。
スカーフも血で赤く染まらずに済んで本当によかったよ。
モナカにつけられた傷を洗うとき冷たさとヒリヒリするのとで二重に痛かったけど。
『さて、お説教じゃな。その前に沢の上に行くぞ。いまなら誰も見ていないし、ウルフどもも寄ってきていない。あそこなら、安全に説教ができる』
「お説教は確定なんだ……」
『当然』
「ですよね」
私は《静音飛行》でみんなを沢の上まで運んだあと、全員からがっつりお説教をされました。
それこそ、お昼頃から始まって日が傾く頃までずっと。
みんなに心配をかけたっていうことなんだろうけど、私も強くなりたいんだよね。
どうしたらいいんだろう?
『……まあ、説教は以上じゃ。次、〝ペットテイマー〟が強くなるための方法じゃな』
「え? ミネル、知ってたの!?」
『伝聞ならばな。ひとつはお主が午前中やっていたように、ひたすらスキルを使い続けること。もうひとつは強敵にスキルを使い挑んで勝つことだそうだ』
「強敵……ゴブリンとか?」
『お主にとってゴブリンは強敵扱いだろうが、実際には格下じゃ。強敵と言えるのはオーククラスよりも上じゃろう』
オークよりも上。
昨日、《魔の鉤爪》一撃で倒せなかった相手よりも格上じゃないと強くなれない。
やっぱり〝ペットテイマー〟って楽じゃなかった。
『とにかく、安全に鍛えたいなら毎日少しずつウルフを狩れ。いまのお主ではオークはまだ早い』
「それって……私がまだ弱いから?」
『魔力が足りていない。《魔の鉤爪》も魔力の強さに応じて威力が上がる。オークを一握りで潰せなかったということは、魔力がまだ低いということなんじゃろう』
魔力か……。
ステップワンダーって生まれつき魔力の低い種族だからなぁ。
魔法系の『天職』どころか、スキルを授かることだって稀なのに。
『わちの《魔爪》も魔力依存の切れ味のはずだわさ。シズクは街に納めるだけのウルフを狩ったら魔力の修行をするべきだわさ』
『あたちもそう思う。《気配察知》や《ミラクルキック》だって魔力が上がれば効果が増すの。魔力は鍛えるべきなの』
『だってさ、シズク。僕の貸せるスキルだと《土魔法》が魔力依存だけど、そっちも鍛えた方がいいよね。シズクには戦闘経験も大切だけど、魔力を先に鍛えなくちゃだめだよ』
「みんな。わかった、明日からは魔力を鍛えることにする」
『それがよい。む、朝出ていった冒険者どもが帰ってきたようじゃぞ』
「大変! 迎えに出ないと!」
私は急いで薬草を採取して沢から飛び降り、帰ってきた冒険者の皆さんと合流した。
でも、大怪我を負っている人たちもいて……一体どうなっているの!?
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