辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ

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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第十章 村の病を治療せよ

96. 病を流行らせる魔物

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 ローレンさんの発言を受け、会議室は少し慌ただしくなった。
 そうだよね、奇病ってだけでも恐ろしいのに、魔物が関係しているなら余計怖いもん。

「ローレン、その発言の裏付けになるような資料を持っているか?」

「はい。ノヴァ様の家に戻ればその手の魔物を記した書物を持って来ています。しばらく退出してもよろしいでしょうか?」

「構わん。急いで資料を持って来てくれ」

 ローレンさんは一礼すると部屋を出ていった。
 残されたみんなは頭を抱えている。
 そんなに恐ろしい魔物なのかな?

「あの、どうしてそんなに怖がっているんですか?」

「ああ、ノヴァにはまだわからんか。その手の魔物は食料や水を媒介に人や動物へと寄生する。寄生された相手は衰弱死するかその魔物の使い魔になるか。どちらにしてもいい事態ではない」

 なるほど。
 ギルドマスターさんの説明してくれた通りなら危険な相手かも。
 ん?
 でも、そうなると……。

「いままでの村って大丈夫だったんですか?」

「大丈夫、とは?」

「ああ、いえ。遺体を埋葬してあるのかなって」

「……しまった、そちらも手を回していない。すぐに浄化の炎を使える者に頼み、壊滅したふたつの村を浄化してもらわねば」

 やっぱり、そちらまでは手が回ってなかったみたい。
 汚染された遺体ってアンデッドになる可能性が高いから、浄化の炎で火葬するのが通例なんだよね。
 でも、今回はその手配も遅れていたと。
 結構まずい状況かも。

「ただいま戻りました。……なにかあったのですか?」

「おお、ローレン。いや、いま遺体の埋葬について話をしていたのだが……」

 ギルドマスターさんが状況を説明してくれた。
 それを聞くとローレンさんは非常に苦い顔をし始めたよ。

「まずいですね。まだ調べていないのでなんとも言えませんが、今回の件が魔物の仕業によるものだとすれば、おそらくは寄生支配型。宿主が死亡したあとに体を奪うタイプのはずです」

「やはりそうか。見解が外れていたとしても死者は正式に弔わねばならん。誰か、浄化の炎の使い手をすぐに壊滅した村へと派遣せよ!」

 ギルドマスターさんの命令を受けてギルド員さんたちが動き始めた。
 私も浄化の炎を使えるけど、手伝った方がいいかな?
 それともこっちを優先する?
 どっちだろう?

 私が迷っている間にも議論は再開された。
 ローレンさんが持って来た資料をもとに対象となりそうな魔物を選び出していく。

 キノコ系の魔物で感染すると自分もその魔物になってしまうものや、普段は空気に溶け込んでいる魔物で数を増やしたいときだけ生物と接触する魔物など種類は多くあった。
 その中でも最有力とされたのが水を通して寄生し、相手を乗っ取る植物系の魔物である。
 あとは、病そのものを振りまく魔物も候補としてあげられたけど、一番可能性が高そうなのはその植物系の魔物らしい。

「ふむ、植物系の魔物か。この魔物と戦うときの注意点は?」

「どんな細かい傷からでも相手に寄生されることでしょうか。初期段階であれば浄化の水をかけてやればすぐに治ります」

「わかった。他の魔物だった場合は?」

「他の場合もさして変わりません。有効な攻撃方法が変わる程度です。とにかく、浄化のための水を多めに持っていかなければなりません」

「なるほど。だが、浄化の水はこの街では手には入らん。神官がいないため、浄化の道具はすべて輸入品なのだ」

 そうだったんだ。
 でも、浄化の水なら私でも作れる!

「はい! 浄化の水は私が用意します!」

「出来るのか、ノヴァ?」

「はい。普通のやり方とは違うんでしょうけど、浄化の効果を持った水を用意することは出来ます。どれくらい作ればいいでしょう?」

「そうだな。魔物退治のための部隊は明日の朝出発させる。それまでに大樽四つ分ほどあると助かる」

「わかりました。大樽四つですね」

「ああ。頼むぞ、ノヴァ」

「はい!」

 よーし、帰ったら早速浄化の水を作らなくっちゃ!
 とはいっても、あれって水に魔力を通して変質させるだけなんだよね。
 大樽四つっていう話だったけど、六つくらい用意しておこうかな。
 頑張るぞ!
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