ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

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第1部 鍛冶の炎、目覚める 第3章 王都リードアローでの暮らし

12. ロマネと装備生産

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 剣ができたあと、ロマネさんは楽しそうに魔銀鉱の山を切りつけ続けていた。
 おおよそ1時間くらい切り続けたあと、ようやく切り続けるのをやめてあたしとリンガさんのところに戻ってきたよ。

「待たせたな。性能チェックも終わった」

「あ、あれって性能チェックだったんですか」

 ロマネさんが戻ってきて開口一番に言ってきたのは、この1時間が性能チェックのためだったということ。
 てっきり楽しくてやっていたのだとばかり思ってた。

「ああ、そうだ。長時間使い続けてもダメにならないかのテストだった。まさか1時間近く魔銀鉱を切り続けても刃こぼれひとつしないとは驚きだがな」

「実際にはしていたかもしれませんよ。命晶核の効果で修復されていただけで」

「それならばそれで構わないさ。1時間使い続けても問題ない、それが重要なのだから」

 ああ、そっか。
 刃こぼれしても勝手に直っているなら同じことなんだ。
 考え方が違うなぁ。

「さて、報酬だが……その前に追加のお願いを聞いてもらえないか?」

「追加のお願い、ですか?」

「鎧や盾も作り直したい。金に糸目はつけないのでやってもらえないか?」

 えーっと、防具か。
 試したことがないけど多分できるよね。
 エンチャントの中には防具用ってわかるものもたくさんあったし。

「わかりました。ただ、防具は作ったことがないので最初は失敗するかもしれません」

「その程度気にしない。これだけの剣が作れるのなら防具だって素晴らしい性能の物ができるさ!」

 あ、やっぱりロマネさんはちょっとハイになってる。
 大丈夫かなぁ。

「さて、まずは盾を作ろう。お勧めのエンチャントはどんなものがある?」

「お勧め……まずは魔力を流すと盾の表面だけじゃなく、全身をすっぽり覆うように結界が展開されるエンチャントでしょうか。結構大変なエンチャントですけど、使い勝手はいい気がします」

「なるほど、ドラゴンブレスも真正面から受け止められそうだ」

「あとは、衝撃反射でしょうか。盾に当たった衝撃をまとめて相手に反射します。自分は衝撃を受けずに相手だけが弾かれるエンチャントです」

「それもいいな! ゴーレムの攻撃さえ受け止められそうだ!」

「あとはありきたりな防御力強化とか耐久力強化です。硬く頑丈な盾の方がいいですよね?」

「それは当然だな。あと、軽い方が望ましい。軽量化のエンチャントはないか?」

 軽量化、軽量化……あった!

「軽量化もあります。あと、重量無効というのもありますけれど……どうしましょう?」

「重量無効か……試しにかけてみてくれ」

「わかりました。盾のデザインを考えておいてください。あたしは準備を始めます」

「デザインか、大事だな。任せてくれ」

 さて、デザインは任せてあたしは準備に入ろう。
 素材は……やっぱり聖銀鉱がいいのか。
 重量もそれなりにあって頑丈なのは魔銀鉱より聖銀鉱のようだ。
 いろいろ使えて便利だね、聖銀鉱。
 あと、命晶核も忘れずに組み込んでおこう。

「よし、イメージができたぞ」

 あ、ロマネさんの準備もできたみたい。
 じゃあ、早速始めよう。

「では。行程は同じです。始めましょう」

「ああ。ワクワクしてきた!」

 ロマネさんも乗り気だね。
 さて、実際に盾を作り始めてから気がついたんだけど、腕に固定するためのベルト素材がない。
 これも金属で伸び縮みするベルトができるようだし、これでまかなおう。
 それじゃあ、一気に作って……できた!

「完成したか!?」

「はい、できました。これで大丈夫ですか?」

「ああ! 刻印も色もイメージ通りだ! あとは性能だな!」

「性能……どうやってチェックします?」

「……ああ、それもそうだな。ちなみに、私が作ってもらった剣でこの盾に斬りかかるとどうなる?」

 ロマネさんの剣でその盾に斬りかかるとか……。

「ちょっとわかりません。衝撃反射がついているので剣がはじき飛ばされることは確かですが、盾に傷がついたり切り裂かれたりするかどうかまでは」

「む。それもそうか。リンガ、お前の剣ならばどうだ?」

 ロマネさんはいままで黙って様子を見ていたリンガさんに声をかけた。
 リンガさんの剣ってロマネさんの剣よりも大分劣るんだよね。
 間違いなく切ることはできないだろう。

「うーん。私の剣じゃあんたの剣には届かないからね。剣を弾かれて終わりだよ」

「そうか。いや、それだけでも体感しておこう。リンガ、よろしく頼む」

「はいよ」

 あたしから少し離れた場所でリンガさんとロマネさんが向かい合った。
 ロマネさんは盾の裏に金属製のベルトがあることを見てさらに興奮していたけど大丈夫かな?
 ちょっと心配なことも出てきたけど、お互い向かい合ってリンガさんがロマネさんに斬りかかった。
 結果は予想通りリンガさんの剣が盾に当たったところではじき飛ばされて終わり。
 盾の方には一切傷がつかなかった。
 リンガさんは剣を拾いに行って戻ってきたあと、ロマネさんに話しかけていた。

「やっぱり予想通りの結果かい」

「そのようだ。しかし、重さをまるで感じない盾か。これは素晴らしいな! 自分の動きをまったく制限されずに立ち回れる!」

「はいはい。それで、料金はどうするんだい?」

「ああ、待て。鎧も頼みたい。頼みたいが……どうせなら鎧は妖精銀を使ってもらいたいからまた今度だな。アウラ、これが今回の謝礼だ。次は妖精銀の鎧を発注する。その時までにフェアリニウムゴーレムを分解しておいてほしい!」

「え、あ、はい」

「では、世話になった! さて、久しぶりに大物狩りへと出発だ!」

 ロマネさん、勢いよくルインハンターズギルドから出ていっちゃった。
 それで渡された謝礼金だけど、白金貨10枚だった。
 白金貨は金貨100枚分の価値だから、今回の仕事は金貨千枚の仕事っていうことになるね。
 これって安いんだろうか、高いんだろうか。

「あの、リンガさん。今回の依頼で白金貨10枚って安いんでしょうか、高いんでしょうか?」

「んー。適正価格、とあんたが思うんなら適正価格だよ。あんな武器、ほかに誰も作れやしないんだから」

「はあ」

 余り物の素材で白金貨10枚。
 金銭感覚がダメになりそう。
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